『ゆで卵』
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- 2011/04/16(Sat) -
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辺見庸 『ゆで卵』(角川文庫)、読了。
食べもの、食べることにまつわる短編が収められた一冊。 『もの食う人々』が根底に流れているのですが、 一方で、エロス要素も強烈で、私の苦手な分野でした(苦笑)。 食と性が非常に密接な関係にあり、 生物学的にも、文化的にも、面白いテーマだと思うのですが、 ガツンと正面から描かれると、やっぱり引いてしまうのですよ・・・。 表題作「ゆで卵」では、「におい」というものに執着した描写を展開します。 文章で「におい」を伝えることが、五感の中では最も難しいのではないかと感じます。 そこに挑戦する気概は買います。 その他の短編も、日常の切り取り方が面白いなと思うものもあり、 ちょっと遠ざけながらも、楽しんだような次第です。
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『単独発言』
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- 2010/12/18(Sat) -
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辺見庸 『単独発言』(角川文庫)、通読。
米国のイラク侵攻、小泉劇場、死刑制度などについて 著者の思いをぶつけた一冊。 ただ、私は、言葉に感情が乗っかり過ぎている文章は、ちょいと苦手。 文章が踊っているように思われて、冷静になって読めないんです。 サブタイトルに「私はブッシュの敵である」と言い切るように ブッシュ政権の対イラク政策に真正面から異を唱えていますが、 どうにも、その論陣が感情的な気がして、こちらは醒めてしまうんです。 ま、私に、問題認識の真剣さ・深刻さが足りないだけなのかもしれませんが。 政治などの「仕組み」について語る時は、 整斉と理論展開して欲しいなぁと感じてしまいます。
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『自動起床装置』
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- 2006/09/24(Sun) -
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辺見庸 『自動起床装置』(文春文庫)、読了。
通信社の仮眠室で「起こし屋」のアルバイトをしている主人公。 なんとも風変わりな仕事でありながら、 24時間稼動となた現代社会の一片を象徴する仕事です。 人間と仕事の関わり方とか 人的労働力の機械化とか 機械に職を追われる労働者とか 社会科学的視点から見ると面白い題材だったのですが、 ひとつの物語として眺めると、 最後の終わり方が、途中でブツッと切られた感じで、 ひとり取り残された感じがしてしまいました。
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『反逆する風景』
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- 2006/04/26(Wed) -
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辺見庸『反逆する風景』(講談社文庫)、読了。
『もの食う人びと』と陰陽をなす本作。 「文全体の趣旨の都合から(中略)特異と異形をなかったことにしてしまう」 これは、新聞だけが持つ都合の良さではなく、 我々一人一人が持っている「眼を瞑る」という逃げ道だと思う。 自分が想定している意味を壊しに、世界を壊しにかかってくる 風景や一瞬の出来事を、如何にして自分の中に取り込むか。 痛みを与えてくれる文章です。 表題作以外も、自分には無い視点を与えてくれました。 『もの食う人びと』とあわせて、 自分の居る立場の変化に合わせて、 何度でも読んでみるべき作品だと思います。
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