『Twelve Y.O.』
- 2010/11/15(Mon) -
福井晴敏 『Twelve Y.O.』(講談社文庫)、読了。

国益を巡る問題で揺れ続けている日本ですが、
そんな時局にぴったりな(?)福井作品に挑戦。

ところが、あまり作品に乗れないまま、結末を迎えてしまいました・・・。
『川の深さは』のときは圧倒的な迫力をもって迫ってきた文章が、
本作においては、冗長に感じてしまいました。

「国」、「国益」、「国を守る」ということについては
くどいぐらいに熱い文章が続くのですが、
それに反して、人間を描く文章があまりに簡潔で、
そのギャップのために、登場人物たちの存在が霞んでしまっている気がします。

目的のためには犠牲を顧みない東馬、そして、その最強の武器である理沙。
しかし、平との再会や坂部夫婦との生活の過程で影響を受けることになります。

安易な言い方では、「隠していた、または隠されていた人間らしさを取り戻した」
ということになるんでしょうけれど、それではあまりに平和ボケな物語です。

この2人のキャラクターは、目的のみを追った冷静さと冷酷さが魅力のはず。
その観点からすれば、中途半端な人間らしさは、そのキャラの綻びでしかないのです。
その綻びの端緒については、納得できるだけの描写を求めてしまいます。
「結局、彼も彼女も、人間だったのね」では、拍子抜けです。

ということで、小説としてのバランスが気になってしまい、
作品自体をあまり楽しめませんでした。


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『亡国のイージス』
- 2009/10/22(Thu) -
福井晴敏 『亡国のイージス』(講談社文庫)、読了。

映画化されたものを先に見ていたので、
上巻の展開はだいたい頭に入っていて、すらすらと読めました。

一方、下巻のほうは、映画でかなり端折られていた「国家とは何か」
「国を守るとはどういうことが」「日本の国家観とは」という問いかけに対する、
登場人物それぞれの立場での回答がなされていて、納得できる物語展開でした。

「論点のすり替えだ!」と怒ってしまった映画版から3年を経て、
やっと答えを得ることができました。

しかし、本作で描かれた日本の職業自衛官と北朝鮮の兵士との対比で、
これが日本人の限界か・・・・・と思わされたのは、衝撃として重いですね。

片や祖国の再興を目指してテロを行おうとした兵士集団、
片や個人の怨念を晴らそうと集まった烏合の衆。

日本人の視野の狭さ、個人的な経験やしがらみから抜け出せない弱さ、
そして、いざという瞬間に迷いを呼び込む意志の弱さ、
こういう国民の集まりの中で生きるのは、
流されるだけで頭からっぽの怠惰な日々なのでしょうか、。
それとも、日本以外には世界の他のどこでも得ることができない、
実は本当に平和な生活なのでしょうか。

とにかく、大きな問題提起を熱く投げかけてくる大作のため、
ここ3日ほど仕事を早く切り上げて、夜4~5時間没頭して読みました。
久しぶりに、「読書に没頭した」と言える時間で充実してました。

一つ疑問だったのが、この物語を大きく動かす行動の一つ一つが
すべて個人の思いによる行動であるということです。

現場の中心である先任伍長も、指揮する幹部たちも、物語のキーとなる行動は、
組織で動く合理性よりも、個人の思いを重視した結果の行動判断でした。

軍隊という、最も組織として洗練され、また訓練された組織において、
組織よりも個人の思いが尊重されるということが、
こんなに簡単に何度も起こりうるのか?というところは疑問でした。

それとも、兵隊・軍隊ではなく、職業自衛官の集まりでならば、
たやすく個人の感情が通ってしまうものなのでしょうか?


亡国のイージス 上 講談社文庫
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stars傑作中の傑作
stars後半は面白いけれども…
stars圧倒的なスケールにびっくり
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stars主役も敵も、正義も悪も無い
stars正直、胸が熱くなりました。
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『川の深さは』
- 2008/01/20(Sun) -
福井晴敏 『川の深さは』(講談社文庫)、読了。

ずーっと読んでみたかった福井作品。
でも、大作が多いので、挑戦するのに腰が引けてました。
やっと読んだのはデビュー作であり問題作とされる本作です。

地下鉄サリン事件を彷彿とさせる宗教団体によるテロ事件をきっかけに、
これだけのストーリーを組める才能に驚愕。

各分野のプロフェッショナルであり、誰よりも自分を律する力を持っている保や涼子が
桃山やテイワと接した瞬間、その堅固な使命に動揺を来してしまうところは
都合がいい展開かな?と思わないところが無いわけではないですが、
しかし、しかし、文章の迫力と重みで力づくで納得させられてしまいます。

途中、本作のテーマに関しての著者の熱が溢れ出ていて
小説としてみたときに、作者自身の思いを語るのに言葉を費やし過ぎかな?とも
感じましたが、福井作品がどういうものかを知るには役立ちました。

国防とは何なのか、国益とは何なのか、
世の中にばらまかれている情報とは何なのか、
いろいろ考えさせる作品でした。

他の福井作品も読めば満足を得られるのは間違いないのですが、
何分、気力・体力ともに要しそうなので、
体調と相談しながら読んでいこうと思います(笑)。


川の深さは (講談社文庫)
川の深さは (講談社文庫)福井 晴敏

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