『いろんな気持ちが本当の気持ち』
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- 2022/12/27(Tue) -
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長嶋有 『いろんな気持ちが本当の気持ち』(ちくま文庫)、読了。
「おー、長嶋有じゃないか!」と、なかなかブックオフではお目にかからないので即買い。 ブログの履歴を見たら、前に読んだのは9年も前のことで、 ブックオフでのレアキャラぶりを再認識。 ところが、早速読んでみたらエッセイでした(苦笑)。 小説作品は、人間関係の中での微妙な感情をうまく表現しているところが好きなのですが、 エッセイでは、結構、おちゃらけた感じが前面に出ているので、 印象が違ってびっくりしました。 どこか原田宗典チック。 でも、著者が好きなマンガ作品とか小説作品とか音楽作品を語っている文章を読むと、 それぞれの作品を楽しんだ人が、感覚的に感じている「楽しいと思った要素」を 明瞭な文章で形にしているように感じられて、さすが、微妙な感覚を文字化する達人! と感嘆しました。 長嶋有氏による文学作品紹介みたいな一冊があったら、 すごく共感しながら、もしくは「これは読みたい!」と悶絶しながら読めそうな気がします。 そういう誰かが作った作品を長嶋有氏目線で真正面から解説してくれるエッセイ、 出ないかなー。 ![]() |
『タンノイのエジンバラ』
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- 2013/04/27(Sat) -
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長嶋有 『タンノイのエジンバラ』(文春文庫)、読了。
芥川賞受賞後の第一作ということで、 パワーダウンしてないかな?と思いつつ読んだのですが、全くの杞憂でした。 むしろ、本作の方が面白いぐらいでした。 解説で「居心地の悪さ」というキーワードが出てきますが、 まさに、「居心地の悪さ」を主人公が冷静に受け止めているところが この作品の面白さかなと感じました。 居心地の悪さにブー垂れるわけでもなく、 私の人生とはこういうものだと受け入れ、でもちょっと変化に挑戦してみて、 新しい自分を手に入れる。 なんだか親近感を覚える主人公たちでした。
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『泣かない女はいない』
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- 2012/09/14(Fri) -
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長嶋有 『泣かない女はいない』(河出文庫)、読了。
店頭で見つけたとき、 「凄いタイトルだなぁ」と感心して、思わず買ってしまいました。 ただ、作品としては、併録されている「センスなし」の方が面白かったです。 どちらの作品も、淡々と日常を描いていて、 つかみどころのなさを感じてしまうのですが、 表題作は、つかめないまま終わってしまい、併録作は何かが刺さってきました。 何が違うのか、良く分かりません。 そんな不思議なところが、この作家さんの面白さかもしれません。 小説を書き上げるエネルギーというものを 全く感じさせないような作品の妙があります。
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『ジャージの二人』
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- 2010/11/06(Sat) -
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長嶋有 『ジャージの二人』(集英社文庫)、読了。
映画化されたという事実から、 もう少し展開の波があるのかなぁと勝手に想像してしまったようで、 小さな波の連続に乗り切れないまま読み終わってしまいました。 父と息子の会話の端々に垣間見えるユーモアセンスは絶妙で、 クスリとさせてくれるのですが、物語に気持ちが乗っていないので、 なんとも刹那的な印象なんです。 主人公は、自分の置かれている立場や、 このままではまずい状況を認識していながらも、 それ以上、思考を深めていかないんです。 内省的ではなく、思考停止に近いような、どこか逃げの姿勢が感じられます。 その姿勢を、私は良しとできなかったのでしょう。 行動するしないではなく、もう一歩踏み込んで考えてほしかったというところでしょうか。 過去に読んだ作品に比べて、作品との距離感を感じてしまいました。
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『パラレル』
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- 2010/08/16(Mon) -
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長嶋有 『パラレル』(文春文庫)、読了。
スラスラ読めるけど、決して軽いのではなく、 ところどころに「おやっ」と感じるフレーズが出てきたりして、面白い作品でした。 深刻ぶらずに人生を生きているけど、 そんな自分の軽さを自覚している「大人」な人々。 そういう人たちが出てくる小説が好きです。 地味な方の主人公とプレイボーイ津田の友人関係も、よくよく考えると不思議。 なぜ、この2人が意気投合してしまうのか。 キャラクターとしては陰陽両極端な気がしますが、 普段の会話や、出会い方、お互いの大変だった時期への関わり方などを読むと、 納得できてしまう人間関係なのです。 津田を中心とする女性関係や、 主人公の元奥さんの周りにある男性関係など、 いろんな軽い人たちが登場するのですが、 それぞれが人生に一家言持っているかのようなところに惹かれます。 時間軸がどんどん変化するので、 最初は戸惑いましたが、切り取り方のパターンが分ってからは、 「次はどんな展開が来るのだろう?」と、面白く読めました。 長嶋作品は、どんどん読んでいきたいですね。
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『猛スピードで母は』
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- 2009/06/17(Wed) -
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長嶋有 『猛スピードで母は』(文春文庫)、読了。
女性だと思ってました・・・・・解説を読むまで。 この文章を男性が描けるのは凄い才能だと思います。 ただ、自分の周囲には居てほしくない・・・ だって、心の中を丸裸にされそうで怖いんですもの。 併録されている「サイドカーに犬」も表題作も 小学生の子どもが主人公。 妙に大人びた冷静な子供たち。 大人びた冷静な子供というのは、 大人の世界の視線や思考回路を敏感に感じ取っていて醒めている子供と、 大人の世界をはじめ周囲への興味関心が足りなくて冷めている子供と 2種類あるような気がするのですが、 本作で登場してくるのは、どちらかというと後者。 母親が家出をしても深刻にならない様は、 ちょっと異様な気もします。 どちらかというと前者の子供が登場する作品が好きなので、 少し物足りない感じもしましたが、 良く描けている作品だと思います。
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