『タイニーストーリーズ』
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- 2020/11/12(Thu) -
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山田詠美 『タイニーストーリーズ』(文春文庫)、読了。
タイトル通りの短編小説集なのですが、 結構、振れ幅の大きい内容でした。 著者らしい、GIたちとの恋愛を描いた作品もあれば、 電柱が主人公の作品もあり、後者については、「へぇ・・・こんな作品も書くのか」と 今更ながらに驚いた次第です。 ただ、ぐいぐい読ませてくれる作品もあれば、 「あれ、これで終わり?」というような作品もあり、 私的には玉石混交という印象の本でした。 個人的には、「予習復讐」の終わり方が、 あ、人間の悪意ってこんな風に解消されることもあるのか・・・・・と興味深く読みました。 あとは、GIとの物語の中で、 「映画に関して言えば、人殺しは最高のエンターテイメント」というセリフが、 先日の古市センセの本の内容を想起させ、やっぱりそうなのか・・・・と感慨。 ![]() |
『マグネット』
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- 2017/11/09(Thu) -
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山田詠美 『マグネット』(幻冬舎文庫)、読了。
久々のAmy作品。 100円で見つけたので買ってみました。 が、私の好みには合いませんでした。 性的な描写が演出として使われる分には大丈夫なのですが、 それが作品の本題になってしまうと、どうも私は距離を置いてしまいます。 そこに哲学的な大義を見出している人間って、 実際にはどのぐらいいるのだろうか?と思ってしまいます。 そういうことに溺れるとか、我を忘れるとか、逃げ込むとか いろんなシチュエーションはあるのでしょうけれど、 そういう心理になってしまう人に、 私自身があまり興味がないということなのかもしれません。 Amy作品は、目線が少年少女のものの方が 私にはしっくりくるようです。 最後の一遍だけ風合いが異なりましたが、 骨は、人を諦めさせる なかなかに重たい意味のある言葉でした。
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『快楽の動詞』
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- 2014/12/14(Sun) -
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山田詠美 『快楽の動詞』(文春文庫)、読了。
小説のつもりで読み始めたら、 最初の表題作「快楽の動詞」は、かなり批評文に近いテイストで、 ちょっと慌ててしまいました。 その後、読み進めるにつれて、 段々とフィクションの要素は高まっていくのですが、 小説と呼べる印象ともまた違っていて・・・・。 日本語の表現技術や、それを使いこなす日本人についての考察がなされているのですが、 その着眼点は非常に興味深いものでした。 「否定形の肯定」とか、「逆説がお好み」とか。 しかし、一つの作品としてみたときに、 批評文でもエッセイでも小説でもない形式をとった戦術が 上手くはまっているかというと、どうにも中途半端な印象です。 なんだか、読みにくいというか、世界観に入りにくいというか・・・・。 上から目線で日本語表現について意見を言っているような感じを受けるのが 良くないのかもしれません。 ま、私が、清水義範などの名人芸に慣れてしまっているせいかもしれませんが。
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『姫君』
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- 2010/12/19(Sun) -
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山田詠美 『姫君』(文春文庫)、読了。
気がつけば1か月ぶりの小説です。 ドロッとした愛のお話。結構しんどかったです(苦笑)。 主人公が自分と相手と世間を冷静にみている作品は好きなのですが、 この本に収められた作品は、冷静さよりも悪意のほうが先に立ってしまっているようで そこが、ちょっと苦手でした。 あぁ、そんなふうに、踏み躙ろうとするわけね。 なんて残酷な・・・って感じで。 でも、登場人物たちがやっぱり魅力的なので、読めてしまうのです。 最後の「シャンプー」が一番好きでした。 とても希望があるような感じで。 この本の最後にふさわしい締め方だと思います。
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『ラビット病』
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- 2010/02/02(Tue) -
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山田詠美 『ラビット病』(新潮文庫)、読了。
甘~い恋のお話。 こんなにもふわっとした日常を送るゆりちゃん&ロバちゃんを、 小説として存在感のあるものに形作れるのは、凄いですね。 ややもすると、タガの外れたお姉ちゃんと米兵の 締まりのない日常がダラダラ描かれているようで、 通して読むと、2人とも成長してるんですよね。 特に、ロバちゃんが、どんどん包容力を身につけていく様が 頼りがいがあって、素敵でした。 こんなに幸せそうにしていて、 最後、悲しい結末だったらどうしようかとちょっと不安だったのですが、 とても実のある終わり方で、そこも素敵でした。
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『風味絶佳』
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- 2009/12/29(Tue) -
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山田詠美 『風味絶佳』(文春文庫)、読了。
気がつけば、Amy作品から1年半も離れてしまっていました。 何の意図もなかったのですが。 で、復帰作は『風味絶佳』。 この本は、結構前から探していて、やっと100円で見つけられたのでした。 が、ちょっと期待が大きすぎたのでしょうか? 収録作6作品で、自分に合うもの、合わないものの振れ幅が大きかったです。 「アトリエ」や「春眠」に出てくる女の子は、苦手でした。 一線を大きくまたは小さく超えちゃっているところに、 読んでいて、痛い感じがしてしまいます。 一方、表題作の「風味絶佳」は面白かったです。 グランマが素敵です。 そして乃里子の人生の選び方にも、なんだか感嘆してしまいました。 普通なら、ああいうのを選んでしまうことには反対なのですが。 あと、「夕餉」が思いのほか面白かったです。 ここに登場する女性も、普通の感覚からはちょっとずれているのですが、 ずれていることを当人がちゃんと自覚しているので、 安心して読めるんですよね。 突き抜けて面白いとまではいかなかったのですが、 久々にAmyも良いですね。
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『晩年の子供』
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- 2008/04/20(Sun) -
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山田詠美 『晩年の子供』(講談社文庫)、読了。
山田詠美の描く少年少女が持つ世界観に 共感してしまうことが多々あります。 自分もそんな子供だった気がするなぁと。 友達とは普通に楽しんで遊んでいるふりをする。 その理由を 「仲間外れにされるのは面倒臭いからです」 と言ってしまう子供。 仲間外れが嫌だからでも怖いからでもなく、後が面倒だから。 自分も、そういう捻くれた子どもでした。 でも、大人の目から見ると、 「面倒だから」という理由が、一番リアリティがあるようにも思えてきます。 子供らしくない子供だったんだろうと、自分では思います。 そんな子供たちがたくさん登場する山田詠美の作品は、 自分の子供時代を振り返っているようで、 読んでいてなんだか懐かしい気持ちになります。
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