『家守』
| ||
- 2015/08/15(Sat) -
| ||
歌野晶午 『家守』(角川文庫)、読了。
家にまつわる短編サスペンスが5つ。 家って、住んでいる人の生活感が蓄積していくので、 ときに怖さや気持ち悪さを感じることがありますよね。 他人に見せていない一面を、家は全て見ていたりして・・・・・。 というわけで、不気味な雰囲気が漂うお話が集まっています。 冒頭の「人形師の家で」なんて、タイトルからして気味が悪いですが、 これは場面構成があっちこっちに飛ぶので読みにくかったです。 著者の、捻りを効かせ過ぎるきらいのある演出は、 ちょっと私は苦手かもしれません。 表題作の「家守」は、トリックが大掛かり過ぎて、ちょっと現実離れしている印象です。 でも、やる気のない先輩警察官と捜査がしたい後輩とのやりとりは面白かったです。 「埴生の宿」が一番面白かったかな。 惚けた老人の話相手をしたら日当5万円を出すというアルバイト。 後半で人が死んでしまうのですが、その真相究明よりも、 惚け老人の相手をさせるというアルバイトの真相の方が読んでいて気になりました。 「鄙」は、こちらもトリックがちょっと大掛かりすぎというか、雑というか、 一か八かに委ね過ぎというか。 「転居先不明」のような作品を読むと、 世田谷一家殺害事件というものが日本社会に与えた衝撃というのは 非常に大きかったのだなと思ってしまいます。 本作で起きる事件は、決して世田谷の事件とは別物だとすぐに分かるのですが、 住宅街で一家が惨殺されたという設定を聞くだけで、 世田谷の事件を想起してしまいます。 ま、そんなこんなで、時間つぶし程度の短編集だった感じです。
![]() |
||
『白い家の殺人』
| ||
- 2013/10/13(Sun) -
| ||
歌野晶午 『白い家の殺人』(講談社文庫)、読了。
久々の本格モノでしたが、疲れました・・・・。 信濃譲二シリーズ第2弾とのことでしたが、 本作は、あまり楽しめませんでした。 あまりにも、謎解きのために殺人事件が起きているような印象で、 殺人に至る動機や、トリックの必然性、もしくは現実味が、 どれも納得的ではありませんでした。 その分、ストーリーやキャラクター設定が面白ければ、 別の楽しみ方もできるのですが、本作は、そちらも弱いように感じました。 前作は面白かっただけに、これは残念。 最後についている解説で、本格モノの衰亡の流れのようなものが掴めて、 勉強になりました。
![]() |
||
『さらわれたい女』
| ||
- 2011/10/02(Sun) -
| ||
歌野晶午 『さらわれたい女』(講談社文庫)、読了。
一気に読んでしまいました。 狂言誘拐の片棒を担がされた便利屋が、 思わぬ事件の展開にどんどん嵌められていく・・・・。 二転三転が鮮やかで、次の展開、そして真相を知りたくなり、 読む手を止められませんでした。 真相を追いかける推理小説的な要素は弱かったのですが、 展開で面白がらせるエンターテイメント性は十分だったと思います。 最初の誘拐事件の展開からして、上手いと思わせる仕掛けで、 ぐいぐい引っ張られて読み進めました。 ちょっと主人公のキャラが軽めなのも、 楽な気持ちで読める要素になっていたと思います。 軽そうな割に、博学だったり、機転が利いたりというのは、 ちょっと違和感を感じたところもありますが(苦笑)。 佳作だと思います。
![]() |
||
『長い家の殺人』
| ||||
- 2010/10/12(Tue) -
| ||||
歌野晶午 『長い家の殺人』(講談社文庫)、読了。
今日も有休をとっていたので、「ゆっくり推理小説でも読みますか・・・」と 本作を選んだのですが、一気読みしてしまう面白さ。 ゆっくりではなく、ガッツリ読書となってしまいました。 トリックは、正直なところ、 昔、たまたま点けたテレビで何かのドラマのトリック解決シーンをやってて、 そこで同じようなトリックをやっていたのを見たことがあります。 なので、真梨子の日記の内容で、トリックは分かってしまいました。 が、物語の構成が結構面白かったので、 トリックがわかってしまっても、然程ガッカリはしませんでした。 むしろ、動機が知りたくて、どんどん読み進めていきました。 ドラマのときは、トリック解明までの前段を見ていなかったこともあって、 「こんな突飛なトリック、有り得なーい」と引いてしまったのですが、 本作では、それほど違和感を感じずに読めてしまいました。 事件現場の環境の特異さと、大学生バンドの合宿という ちょっと非日常な香りのする設定だったからでしょうか。 これまでに読んだ歌野作品では、一番面白かったです。
![]() |
||||
『世界の終り、あるいは始まり』
| ||||
- 2009/12/12(Sat) -
| ||||
歌野晶午 『世界の終り。あるいは始まり』(角川文庫)、読了。
前回、『葉桜~』を読んだ時はまんまと騙されてしまいましたが、 本作は叙述トリックとは異なる仕掛けでした。 ”Ⅰ”のパートは、ぐんぐん真相に迫っていく感触があって面白かったのですが、 ”Ⅰ”を読み終わった時点で、「あぁ、真相には辿れないのかもしれない」と感じた瞬間に、 少し醒めてしまった感があります。 ”Ⅱ”以降は、少しリアリティも欠けていて、 正直なところ、中だるみな気がしました。 貫井さんの作品にもこの手のものがありましたが、 読後のすっきり感がないのは、私はやはり不満に感じてしまいます。 しかし、雄介という少年の少しませたところや、 背伸びして厭味を言うところなんかは良いキャラだと思いましたし、 そのような息子を前にした父親の逡巡といったものも良く描けてました。 大人のダメなところやジコチューなところを晒していて、読みごたえありました。
![]() |
||||
『葉桜の季節に君を想うということ』
| ||||
- 2008/09/01(Mon) -
| ||||
歌野晶午 『葉桜の季節に君を想うということ』(文春文庫)、読了。
「このミス」は、私には当たり外れが大きくて、 あんまり参考にならないということを、今回やっと得心しました。 たぶん、投票形式のため、ジャンルの裾野が広がり過ぎてしまうのが良くないのでしょう。 本作は、主人公をはじめとする登場人物たちの軽~い感じが 薄っぺらい印象に繋がって、最後まで物語に入れませんでした。 根の軽い人間が一生懸命頭を働かせて事件を解決する様と、 重みのある人間が軽さを装いながら事件に向かう様とは、 やはり全く異質の行為だと、本作で実感しました。 叙述トリックについては、確かにまんまと騙されてしまいましたが、 なんだか、それだけの作品だったような。
![]() |
||||
| メイン |
|