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『テッカ場』
- 2019/12/12(Thu) -
北尾トロ 『テッカ場』(講談社文庫)、読了。

久々にトロ氏による現場体験レポ。
今回は、「理性が影を潜め、欲望がほとばしる場所」への潜入レポ。
といっても、誰でも出入りできる会場ばかりだから、潜入ではなく単なる帯同か。

基本的に、オークション会場やセール会場の話ばかりで、
マニアが札束握りしめて欲しいものを奪い合う光景が主でした。
ちょっと取材対象が狭いというか、似ている環境ばかりでした。

ただ、その分、行われているオークションの質の違いは理解できました。
業者がビジネスとして「安く買って高く売る」という行為をしている会場は比較的冷静で、
反対に、一般人のマニアが自分の欲しいものを金に糸目をつけずに買っている会場は
たしかに理性が吹っ飛んでます。
そして、そんなマニア向けのオークションでも、とにかく個対個の熾烈な争いが繰り広げられる
場もあれば、同じ趣味の人たちの集まりとして、若い人や初心者に向けて優しい眼差しを送る
会場もあったりして、その趣味とするものの性格も反映されていて面白かったです。

登場してきたオークション対象の物品の中では、「切手」というのは私も昔集めてました。
ただ、切手をお金を出して買おうと思ったことは一度もなく、
手紙好きの祖父の元に届いた手紙の封筒から1枚1枚切り取ったり、
親戚の人が「これ珍しい切手じゃない?」と持ってきてくれたものをもらったりしていました。
私の中では、「自分の周囲に届いた切手」というところに結構価値があり、
これこそ自力で(家族・親族の力ですが・苦笑)収集した私ならではの切手帳だと思ってました。
お金で買うという発想が無かったです。

一度、家族で海外旅行に行ったときに、たまたま古切手売場の前を通りかかり、
父が「切手集めてるんやから旅行の記念に買ったるぞ」と言ってくれ、
そのときは嬉しくて一生懸命選びましたが、正直、家に帰ってからの扱いは雑でした。
切手帳には入れず、ベッドの端に袋のまま貼っておいた程度で。
お金で買い始めたら、カネさえあれば際限なく収集できるし、
その結果は、みんな同じような内容(希少で高価な切手ばかりが並んだ切手帳)に
なるんじゃないかと思ってました。

こんな私なので、オークション会場の様子には興味津々で読みましたが、
「これがどうしても欲しい!」と大金を払う姿には共感できませんでした。

あと、唯一と言ってもいい、カネの絡まない会場が「ネットアイドル撮影会」。
入場料代わりにアイドルのDVDを購入し、5分ほどの雑なトークセッションを聞いてから
本題の写真撮影会に入るのですが、参加者は1人30秒の時間の中で
アイドルの写真を撮りまくれるという会です。
こういう場があるのは知ってましたが、私、てっきり、アイドルファンの人が
応援しているアイドルの写真を撮りに行っているのだと思ってました。
少なくとも、顔と名前は知っているアイドルの会に行くのだろうと。
しかし、トロさんのレポによると、どうも誰だか知らずに写真を撮りに来ている人も多いようで、
つまりアイドルは単なる水着を着た被写体。いかにエロい写真を撮るかだけが
来場者の目的のようです。
いやぁ、これは想像を絶する恐ろしい世界でした。トロ氏も精神・体力ともに削られたようです。
世の中、まだまだ知らない世界があるんだなと痛感しました。




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『にゃんくるないさー』
- 2018/05/12(Sat) -
北尾トロ 『にゃんくるないさー』(文春文庫)、読了。

久々のトロエッセイ。

ところが、いつものアグレッシブなテーマ設定ではなく、
ネコとの日常を描いた、非常に穏やかな本でした。

愛猫家と呼ばれる人ほどにはネコにベタベタではなく、
あくまで野良猫で家の庭に入ってきたもののうち
面倒なく関わり合えそうなネコだけを選んでいるので、
結構、視線は冷静です。

でも、ネコNGな借家にネコを入れちゃったり、
公園で日がな一日ネコを眺めていられるというのは、
やっぱりネコ病患者さんですね(笑)。

庭にやってきたネコに残り物を投げてやり交流を図るものの、
来なくなればなったで、「最近来なくなったねー」でサッパリしているので、
特にネコに思い入れのない私としては、
抵抗感の少ないネコエッセイでした。

最後の方は、家でネコを飼い始めている(しかも2匹!)ので、
もう立派なネコ病患者さんですが、
ネコとの間の不思議な距離感が面白いエッセイでした。


にゃんくるないさー (文春文庫)にゃんくるないさー (文春文庫)
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『裁判長!死刑に決めてもいいすか』
- 2015/04/23(Thu) -
北尾トロ 『裁判長!死刑に決めてもいいすか』(朝日文庫)、読了。

いつもの裁判傍聴シリーズかと思い、お気楽な気持ちで手に取ったら、
裁判員制度が始まる直前に、傍聴マニアの立場から、制度を考えてみようという
なかなか硬派な内容で、思わず襟を正して読んでしまいました。
ま、ウィットに富んだツッコミは健在なのですが。

裁判員制度が始まる前後は、メディアもいろいろ取り上げていたこともあり、
「もし自分が選らばれたら・・・・」なんて考えていましたが、
その後、自分はもちろん、周囲でも裁判員になったとか、候補になったとかいう人は居らず、
急激に関心は下がってしまいました。
ホントは周囲で経験者がいるのだけれど、本人が話してないだけなのかしら?

自分がなったら・・・・で考えていたときは、
裁判の内容が理解できるかしら、正しい判断ができるかしら、
自分の意見を他の裁判員に対して主張できるかしら・・・・・てなポイントだったのですが、
本作を読んでみて、著者は別の観点から裁判事案を捉えていました。

今回の判決で厳罰化のバーを下げることになると、それが前例となり今後の事案に影響する、
80歳の被告に懲役10年を課すべきなのか、
反省の弁、謝罪の言葉が無い被告を死刑にすべきか、無期懲役で反省を促す時間を与えるべきか、
このような、社会への影響などを勘案して、非常に幅広い見地から裁判を考えています。

しかも、幅広く考えた上で、判決を自分で下す際の判断ポイントは
非常にシンプルな形で絞り込んで、ほぼ1点に集中して裁判に臨んでいます。

うーん、これは並みの人間ではできない情報整理力と判断力です。

傍聴マニアという経験による部分も大きいのかとも思いますが、
それ以上に、著者の人間力といいますか、思考力により、
このような優れた整理ができているのではないかと思います。

もし、裁判員6人の中に、このような論点整理ができる人が1人も居なかったら・・・・・
被告も検察も弁護士も裁判官も、不運と嘆くしか無いのでしょうか・・・・。

そんな著者でさえ、自身が初めて模擬裁判を裁判員役として経験してみて
新たに気づいたところもあるようですし、人が人を裁く、そのために協議をするというのは
本当に難しいことなんだなと再認識しました。

良い本でした。


裁判長! 死刑に決めてもいいすか (朝日文庫)裁判長! 死刑に決めてもいいすか (朝日文庫)
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『キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか』
- 2010/06/26(Sat) -
北尾トロ 『キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか』(幻冬舎文庫)、読了。

手術直後ということで、この週末は家でゆっくりしようと思い、
WOWOW&読書三昧となりそうです。
それも、あんまり硬いものは避けてね。

読書は、まずは北尾トロさんから。
あまりにバカバカしいタイトルに惹かれて買ってしまいました。

「やってみたいけど、ちょっと勇気がいること」に、敢えて挑戦しようとした
コトの顛末を一冊にまとめた本。
ま、タイトルが、わかりやすい例でしょうね。

この、勇気をもって一歩踏み出すまでの逡巡の様子が面白いんです。
どうでも良いことに、ここまで気を使って、考え抜くか?というバカバカしさ。

私も小心者なので、そのドキドキ感はよくわかります。

ただ、前に読んだ作品でも感じたのですが、
北尾トロさんって、ちょっとテーマを拡大解釈する傾向がありますよね。

今回も、「勇気」に値する行動もあれば、単なる「稚気」にすぎない行動もあり、
ま、がんばっている様子は分かるのですが、
共感できるものとできないものがありました。

電車の中で初対面の人に声をかけて飲みに誘うなんて、
今の世の中では犯罪に近いんじゃないですか(苦笑)。


キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか (幻冬舎文庫)
キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか (幻冬舎文庫)北尾 トロ

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starsとりあえず、お疲れ様ですと言いたい。
stars著者の勇気が伝わってきた
stars誰もが思っていてできなかったこと・・・
starsストレスがたまったら、息抜きに最高の本
starsためになる本ではないが

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危ないお仕事! (新潮文庫)
危ないお仕事! (新潮文庫)北尾 トロ

おすすめ平均
starsそこそこ楽しめる
starsたまに、むしょうに読みたくなるシリーズ
stars世の中には変わった仕事があるんですね。
stars他の仕事はしていません。プロの汁男優です。
stars怪しいけれど危なくない

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『怪しいお仕事!』
- 2009/08/31(Mon) -
北尾トロ 『怪しいお仕事!』(新潮文庫)、読了。

怪しいお仕事がザクザク出てくるのですが、
それよりも読みどころは、北尾トロ氏の命がけの取材と
厳しい状況でも取材対象の観察を怠らない眼差し。

これだけクダラナイことに体張れるのは、ある意味、凄いです。

そして、怪しいお仕事に手を染める人々は、
オイシクお金を稼ぎたい!というよりは、
その世界そのものが好きな人がホンモノなんだなって分りました。

鍵屋のお兄さんの職業哲学、なんだか尊敬すらしちゃいます。

必殺掲示人の方も頭脳明晰な感じがして、
パソコン通信の世界を自分なりに分析し、再構築してるんですよね。

そして、そんなホンモノの人の列に、
北尾トロも並べても良いような気がします。
なんせ、自分で3行広告出しちゃうんですから。


怪しいお仕事! (新潮文庫)
怪しいお仕事! (新潮文庫)
おすすめ平均
starsいろいろな裏家業の仕事を紹介
stars男性向き
stars著者の探求心が詰まったルポルタージュ
stars裏モノの世界
stars『寝室覗き屋』。すでにお仕事とはいえないが、これが一番笑える。

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『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』
- 2008/10/23(Thu) -
北尾トロ 『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』(文春文庫)、読了。

一時期、話題になっていた「裁判傍聴マニア」。
ブームの火つけ役とも言える本著を興味本位で読んでみました。

裁判は面白い。

確かに面白いいけれど、自分は見には行けないなー、
というのが感想です。

そもそも感情を剥き出しにすることを野蛮だと思って嫌悪してしまうのですが、
裁判と言えば欲望と欲望のぶつかり合い。

「戦略」と称して本心と違うことをペラペラ口にしたり
もしくは黙りこんだり。

「こんな世界に直面したら狂っちゃうよー」というぐらい
ドロドロした世界のようです。

こうやって、第三者が客観的に書いてくれることで楽しめる世界。
というわけで、結局、本作は非常に面白かったです。


裁判長!ここは懲役4年でどうすか (文春文庫)
裁判長!ここは懲役4年でどうすか (文春文庫)北尾 トロ

おすすめ平均
stars裁判にちょっと興味を持ちました。
starsこれまで読んだ中で最低
stars傍聴は国民の権利
stars著者の人間的魅力で読まされる
stars面白かった・・・

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