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『熱波』
- 2024/02/07(Wed) -
今野敏 『熱波』(角川文庫)、読了。

沖縄を舞台にした作品。

主人公は自治省から沖縄県庁に出向になった若手官僚。
出迎える沖縄県庁側は、国際都市形成構想の推進室。
革新派の知事のもと、政治や行政とは異なるサービス業出身の補佐官が中心となり
沖縄が台湾などのアジア諸国と独自の経済圏を築こうとしており、
彼らは「コスモポリスを目指す」と言いながら、その陰に沖縄独立論も見え隠れし・・・・・。

今野作品は、警察小説を中心に読んできましたが、どちらかというと日本の行政組織の
歪みみたいなところを突いた作品が多い印象でした。
しかし、本作は、沖縄独立という、センシティブな政治問題を真正面から扱っており、
ちょっと毛色の違う作品です。

正直、終盤の手前までは、あんまり面白さを感じられませんでした。
まず、主人公の若手官僚君があまりに世間知らずなお坊ちゃんなこと。
沖縄問題に詳しくないのは、まあ、担当じゃなかったんだから仕方ないにしても、

補佐官が副業で営んでいる飲み屋を出たところで、中華系の人間に襲われ、車に押し込まれようとした
出来事について、自分が狙われた事件だと考えず、人違いかな?で済ませてしまうのは
あまりにも暢気すぎて異常な印象を持ちました。
少なくとも、出向を命じた上司には報告すべき事案では?

こんな感じで、主人公の身の回りで起きる不可思議な事象について、
ほとんど主人公自身は深い興味を持たずに流してしまいます。
なんで???

そして、事件性のある出来事以外にも、沖縄県庁の職員たちが言葉の端々に見せる
「沖縄独立」や「中央政府への不満」については、タイムリーに上司に報告すべきことでは?
と思わずにはいられません。
沖縄県庁側の動きを、ある意味スパイしてくるようにという趣旨の出向であることは
本人も理解しているわけですから。

本作の刊行年は1996年なので、今みたいに、どこに居てもメールで連絡が取れるような時代ではなかった
ということは理解していますが、それにしても、電話一本すら上司に報告を入れないのは不可解です。

そんな主人公が、終盤に発生する台湾マフィア同士の抗争事件に巻き込まれ、
沖縄県庁に緊急の対策室が設けられて、そこのメンバーに組み込まれるところから
急に官僚として、人間として成長をしはじめ、どんどん役に立つ人材になっていきます。

そりゃまあ、環境が人を作る、立場が人を育てるという側面があることは私も同意しますが、
それにしても都合よく成長しすぎじゃないかと思ってしまいました。
主人公だけでなく、同僚の沖縄生まれの無感情無感動職員まで
急に生き生きとマフィア対策のアイデアを出し始めてるし(苦笑)。

というわけで、登場人物たちには最後まで気持ちが乗っていかない作品ではあったのですが、
沖縄を巡る政治問題、特に、中央と沖縄、米軍と沖縄、中華系と沖縄、という対立構造を
台湾マフィアの抗争事件という派手な枠組みの中で、一気に際立たせて論じていく展開が
非常に面白かったです。

現在の沖縄を巡る状況においては、ネット保守の人たちは、沖縄県知事の言動を批判し、
その大陸への親密ぶりを懸念する人が多いですが、本作では、台湾マフィアの沖縄進出を扱っており、
沖縄を巡る海外勢力の中心が、台湾民間人から中国共産党へ移ったということなのかなぁ?と
沖縄情勢にはあんまり詳しくない私としては、どの程度フィクションなのかが測りかねました。

そして、屋良知事が、腹が座りまくりのヒーローみたいな存在で、
沖縄どころか日本全国探してもこんな逸材居ないだろうというような男前な人物ですが、
正直、それぐらいのスーパーヒーローが出てこない限り、沖縄の捻じれた政治状況は
打破できないんだろうなというような、諦念にも似た感情が湧いてきました。

この知事や補佐官みたいに、「沖縄の発展のためなら何でも利用する」という強い気持ちが、
本当に沖縄の発展を目指して実行に移されたら、本作の大団円のような展開になりうるのかなと。
しかし現実には、「沖縄のため」と口にしながら、「自分のため」「支援者の業界のため」「某国のため」
みたいな、本音の目的との乖離があるから、結局、沖縄の人たちが置き去りにされていくのかなと。
そのあたりの、残酷な現実は、この作品の終盤での登場人物たちの描写と、
現実の沖縄を巡る問題で報道される事々を比較することで、残念な思いが沸き上がってきます。

個人的に最も興味を抱いたシーンが、台湾マフィア同士の抗争に過ぎなかった事件が、
港湾労働者の暴力的な蜂起に発展していったプロセス。
台湾マフィアの抗争と、港湾労働者が自分自身置かれている環境と、
合理的にその因果関係を説明することは本人にもできなかったであろうに、
なんとなくの雰囲気で、「このやろー!」と怒りが爆発してしまい、
その怒りの気持ちが周囲に居る同じ境遇の人たちに瞬間的に伝播してしまう
この恐ろしさが理解できる描写でした。
あ、時々ニュースになる「なんで、こんな非合理的な騒動がこの規模で起きるの?」という事件も
きっとこんな感じで発生したんだろうなと思えてしまいます。

小説作品としてはイマイチな感じでしたが、
沖縄を巡る社会問題を分かりやすく表現した作品としては、非常に興味深いものでした。




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『TOKAGE 特殊遊撃捜査隊』
- 2023/12/04(Mon) -
今野敏 『TOKAGE 特殊遊撃捜査隊』(朝日文庫)、読了。

テロや誘拐などの特殊な事件を専門に担当する警視庁特殊捜査隊の中にある
「トカゲ」と呼ばれるバイク部隊。
機動力を活かして、被疑者の追跡や現場の状況把握を役割としている彼らが
主人公なのかと思ったら、そこまで中心でもなく、主要登場人物という位置づけでした。

とある銀行の行員が3名まとめて誘拐され、身代金10億円を要求されるという事件が発生。
警視庁特殊捜査隊を中心に捜査本部が組まれ、
銀行本部には警視庁特殊捜査隊の主任らが前線部隊として派遣され、
捜査本部には本庁や所轄の捜査員に交じってトカゲ部隊が配置され、
全国紙社会部の遊軍記者が独自の調査を展開する・・・・・この3つの軸で
物語が進行していきます。

そもそも大の大人で思慮分別もあるであろう銀行員が3名も一度に誘拐され、
誘拐時点での目撃情報ゼロ、家族知人からの捜索届もゼロ、
10億円の身代金要求ではじめて誘拐事件が発覚するという入り口の展開に、
ちょっと違和感を覚えてしまいました。
そんなことありうる???と。

私自身、銀行ではないですが、銀行に近しい金融機関に勤めていたので、
銀行文化には親しいつもりですが、「職員が出勤してこない」という事態には、
まず「金を持って逃げた」「顧客とトラブルを起こして失踪した」という業務上の失態を想定し
かなり危機感をもってすぐに対処するイメージです。
それが、出勤してきていないのに犯人一味からの電話が来て初めて会社として動き出す
というのは何だか違和感。

というわけで、出だしでちょっと躓いた感はありますが、
捜査が始まってからの展開はテンポがよく、一気読みでした。

警察に誘拐事件を通報してから、銀行本部に警察が乗り込んできて
銀行の危機管理担当ラインの課長や常務と特殊捜査隊が向き合う形になりますが、
銀行側は形式的な協力だけで、銀行内部のことに警察から首を突っ込まれたくないという
本音がスケスケで、これは現実社世界でもありそうだなーと(苦笑)。

まぁ、銀行員の誘拐事件なんて現実世界では起こらないと思いますが、
例えば総会屋事件が起きたときに、大事になってしまったら銀行も警察に通報するでしょうが、
全ての事実をオープンにして捜査に協力するなんていう事態は想像できません。
たぶん、ヤバいところは隠しながら、面倒な総会屋の排除さえしてくれればと
警察を利用する感じになると思います。

そういう銀行特有の隠蔽体質と捜査のぶつかり合いは面白かったです。
ただ、担当常務が頭が悪すぎて、「そんな露骨な態度とったらマイナスだろう・・・・」と
引いてしまうところもありました。まぁ、守りの経営統合をせざるを得なかった銀行の役員なんて
こんなレベルなのかもしれませんけど。

そして、新聞の社会部遊軍記者の取材のテクニックも、お仕事小説的な面白さがありました。
大阪社会部の若手記者の使えなさは相当なものでしたが、
それに対する有能遊軍記者の心の声は面白かったです。

事件の真相は、まぁ、読み始めて最初に感じた違和感から想像した犯人像と近しいものでしたが
正直、仮に警察の捜査をうまく攪乱できたとしても、最終的に身代金10億円を得るのは
仕組み上、無理なんじゃないの?と思えてしまいます。

銀行の送金システムは、システム部門の中枢にいる専門スタッフとか、権限の高い地位にいる幹部とかを
仮に犯人側の味方につけられたとしても、一人でできるオペレーションには限界があると思います。
10億円なんて大金を送金するには、少なくとも処理者1名に加えて、別の権限が上の決裁者の操作がないと
処理が完結しないんじゃないかと思います。
小口の送金なら一人でも処理できるかもしれませんが・・・・。

銀行のシステムは堅牢だと本作の中でも触れられていますが、その堅牢さって、
外部からの侵入以上に、内部犯行の方に重点を置いているはずです。
あと、善意の職員の誤操作とか。
10万円の送金のつもりが10億円を送金してしまった・・・・ということがないように、
システム的な制約がかかってると思うので、ちょっと犯行計画に難があるかなぁと思ってしまいました。

まぁでも、みずほ証券のジェイコム株大量誤発注事件とか実際に起きたから、
システムの堅牢さは、金融期間によってはザルなところもあるのかなぁ。




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『マル暴甘糟』
- 2023/07/03(Mon) -
今野敏 『マル暴甘糟』(実業之日本社)、読了。

阿岐本組シリーズに登場する、マル暴担当刑事の甘糟巡査部長が主人公のスピンオフ作品。

夜勤当番中に発生した駐車場での殴打殺人事件の被害者が暴力団組員だったということで
現場に駆り出され、そのまま捜査本部に招集されることに。

捜査本部を仕切る警視庁捜査一課の面々は、半グレの仕業とみて捜査を進めますが、
甘糟とその上司の郡原巡査部長は、暴力団間のトラブルではないかと疑い
独自に暴力団たちを張り込み始めます。

一般的な警察小説だと、主人公たちは捜査本部に隠れて勝手に動いたりして
リアリティないなぁ・・・・・と思うことが多いのですが、本作では、きちんと捜査本部の管理官に
「マル暴担当だからこそ追える情報を追います」と郡原がちゃんと断りを入れて、
管理官の了承の元で行動に移しているので、こういうところが読んでて納得感が高いんですよね。

主人公の甘糟は、暴力団事務所に様子見に行っても、威圧するのではなく
「お茶なんか出さないでよね」「捜査情報なんて教えられないよ」「なめないでよね」という
気の弱そうな言い回しで、でも断るところは頑なに断るという、
暴力団からすると扱いにくそうな刑事像で、最後までキャラがぶれないので
そこも安心して読める材料になっています。

そして、本作で一番面白いと感じたのは、マル暴刑事の目から見たヤクザの手口の数々。
相手が口をなかなか割らない時は、あえて沈黙して相手の次の言葉を待ったり、
矢継ぎ早に質問する途中で急に別の角度の話を振って口を滑らせるようにもっていったり、
こういうテクニックを解説してくれるので興味深いです。

事件の真相は、暴力団・任侠団体という、裏社会ではあっても裏社会なりのルールの下で
警察ともある種の関係を保ちつつ存在している反社組織と、そこには属さない
本当の意味での反社会的というか脱社会的な組織の半グレ集団との
文化の違いのようなものを見せてくれるものでした。

半グレの行動力というか、犯罪を描く頭脳を持ち上げ過ぎな気もしましたが、
任侠団体の立場というか面子というか、そういう文化を象徴的に見せるには
面白い物語だったなと思います。

裏表紙のあらすじに「阿岐本組の面々も登場!」となってましたが、
どこに出てきたの?と記憶なし(苦笑)。




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『任侠病院』
- 2023/04/13(Thu) -
今野敏 『任侠病院』(中公文庫)、読了。

任侠一家・阿岐本組による経営立て直しシリーズ。
第一弾を以前に読んでいたのですが、シリーズ化に伴い、今は『任侠書房』に改題してるようですね。

指定暴力団にはなっていない、昔ながらの地域に根付いたヤクザ稼業集団の阿岐本組。
そこに持ち込まれた話は、経営難に陥った中規模病院。
普通のヤクザなら、経営難という弱みに付け込んで最後の利益をむしり取ってから
売り飛ばしたり潰したりするんでしょうけれど、阿岐本組長は経営立て直しを目指します。
理由は、「地域に根差した病院が潰れたら地域の人が困るから」。
こんな地域思いの人、一般人にもなかなか居ませんよ。

なのに、阿岐本組の地元では、暴力団追放運動が巻き起こり、
事務所の前で住民が反対活動をし出す始末。
昔からの住民は、困りごとがあったら阿岐本組に相談するなど共生してきたのに、
マンションに引っ越してきたような新規住民は付き合いがないので
「暴力団」という見た目で排除をしようとする・・・・。

ま、正直、暴力団(暴力団的な人も含めて)に身近なところには居てほしくないという
気持ちは理解できます。一方で、任侠集団が地域と共存してきたという歴史も理解できます。
私の実家周辺でも、実家のある町が地元の大きなお祭りの会場になっていることから、
地場を仕切っているヤクザ稼業さんと両親(父親だけかな)は顔見知りで、
正月の初詣に行った先の神社の境内で露天の店を出していたら
挨拶してベビーカステラ買うぐらいのお付き合いがあります。
祭りの時に外部からやって来るテキヤさん達を、きちんとルールの下で営業するよう
地元のヤクザ稼業さん達が仕切っているから、商店主たちも安心して祭り会場として
場所を貸せるという関係だと思います。
だから、本作に登場してくる地元商店主たちと阿岐本組との関係はよく理解できます。

排除か共存か、どちらが良いかという問題ではないのですが、
その町における経緯というか歴史というか、そこは踏まえた方が良いのかなと思ってます。

・・・・・・・と、病院と全く関係のない感想ばかりになってますが、
正直、病院の経営改革の方は、ちょっと上手く行き過ぎというか、
医師も看護師も事務員も、まともどころか優秀で職責も強く持っている人が揃っていて
単に、ヤクザのフロント企業に食い物にされているという部分に問題が矮小化されていたので
この部分には、そこまで面白さを感じられませんでした。

阿岐本組幹部の日村が作中で行っている通り、
「病院経営は複雑で、素人が手を出して簡単に改善できるものではない」という事実が
ストーリーの粗削りさに現れてしまっているように感じました。

というわけで、暴力団追放運動と病院経営立て直しの2本のストーリーのバランスが
ちょっと悪いように感じましたが、阿岐本組の面々に心惹かれることには変わりないので、
引き続きこのシリーズは追いかけたいなと思います。
とりあえず、本作は第3弾のようなので、第2弾を早く見つけて読まないとダメですね。




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『果断 隠蔽捜査2』
- 2022/06/08(Wed) -
今野敏 『果断 隠蔽捜査2』(新潮文庫)、読了。

隠蔽捜査シリーズ、誤って第2巻を読み飛ばして、第3巻、第3.5巻を先に読んでしまったので
なんだか変な感じになってしまい、ストップしてしまってました。

ガッツリ長編サスペンスを読みたいなと思い、ようやく第2巻を手に取りました。

家庭内の不祥事で左遷され、本庁から所轄の署長に移動となった主人公の竜崎。
合理性の塊のような人物で、それまでの所轄内にあった不文律の仕来たりや作法を
ぶった切って日々の業務を進めていきます。

現場の副所長や課長はもちろん戸惑いますが、
管内で起きた立てこもり事件を契機に、署長の考え方を部下たちが実地で理解していき、
事件解決の際の不手際の責任を押し付けられそうになった所轄は
一丸となって真相究明に取り組みます。

事件発生からの起承転結が、短い日数の中で目まぐるしく展開していき、
息をつかせないストーリーテリングはさすがです。
このスピード感あふれる物語世界は、著者の筆力はもちろんですが、
もう一つは、日本の警察の組織力や捜査力といったものが
リアリティをもって存在しているからこそ描ける世界観なんだと思います。

組織の理屈に隷属しているように見える所轄の面々も
実際の事件に直面したら、組織における自分の役割をきちんと認識し
必死に成果を出そうと取り組む真面目さが垣間見えて、
やっぱり警察モノは面白いなぁと感じました。
人間の情熱が凝縮されている世界ですよね。

そして、本作で起きた立てこもり事件、事件そのものはそんなに派手な展開ではないですが、
事件をめぐる所轄と本庁の立ち位置の相違や、SITとSATの実績争いなど、
警察の組織論全開でのやり取りがじっくりと描かれて、面白いです。

事件の真相は、自分が思っていなかった方向に向かっていったので、
は~、そういうこともあるのか・・・・・と思う一方で、
現場の捜査員の着眼点も興味深く読みました。

やっぱり、このシリーズは面白いですね。
続きをブックオフで探さないと!




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『初陣 隠蔽捜査3.5』
- 2017/03/30(Thu) -
今野敏 『初陣 隠蔽捜査3.5』(新潮文庫)、読了。

隠密捜査シリーズの第2弾を早く読まなきゃ・・・・・と言いながら、
先に第3.5弾を読んでしまうわたくし。

第3.5弾という半端な数字が示す通り、
本作は、スピン・オフ短編集です。

シリーズ第1弾~第3弾では、キャリアの竜崎伸也が主人公で描かれる出来事を、
別のキャリア・伊丹俊太郎の目線で描いています。

竜崎は、本音と建前を使い分けない、全てが理屈の塊のような人物。
合理性でしか判断しない異端のキャリアです。
一方の伊丹は、警察官僚組織というものを十分に念頭において行動しますが、
現場主義を打ち出し、部下のところに下りてくる姿勢は、やはりキャリアとしては異色。
この2人の特徴的なキャリアの対比が、
この短編ではより際立った形で描かれており面白いです。

第3弾の『疑心』は、正直、警察小説としてはあまり面白くなかったのですが、
なんで、そんなストーリー展開になってしまったのかの理由が、
本作で分かるようになっているので、一応、頭では理解できました。
それで面白さが回復したというわけではありませんが・・・・・。

全体的に、キャリア官僚がどのような思考で物事を判断するのか、
基準なり判断軸なりがわかって面白かったですし、勉強になりました。

本作を独立した小説として見てしまうと物足りないところはありますが、
あくまでスピン・オフとして読むと満足できました。


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今野 敏

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『疑心 隠蔽捜査3』
- 2017/01/18(Wed) -
今野敏 『疑心 隠蔽捜査3』(新潮文庫)、読了。

久々に、隠蔽捜査シリーズの第3弾。
登場人物たちがどんなキャラだったか忘れてしまってましたが、
履歴を見たら、第2弾をまだ読んでませんでした(苦笑)。
冒頭のシーンでそれぞれのキャラや話の経緯がきちんと頭に入ってきて、
問題なく読めたのは、ありがたいです。

舞台は、合衆国大統領の訪日の警備。
そこに日本人が絡むテロ計画の一報が入り・・・・・・と
ワクワクする設定だったのですが、
さて物語が動き出したか!と思った途端に
堅物男の恋話に突入し、警備の指揮そっちのけで恋心を
あーだ、こーだと描写されるので、辟易。

せっかくの大きな舞台装置も、
主人公の恋心の描写にばかり紙面を割いてしまい、
テロの阻止に向けた捜査の方はおざなりな対応。
事件解決も、どんでん返しなくあっさりと終わってしまい、
一体、これは何だったのか?と。

警察機構という世界における人間関係を描いた作品であり、
今回はそのテーマが50男の恋心だった・・・・・ということなのでしょうが、
それにしても、竜崎と伊丹の関係性において、
竜崎が、そんな個人的な悩みを伊丹に素直に話すのだろうか?という疑問が
沸々と湧いてきて、なんだか腑に落ちませんでした。

どうやら、シリーズ第3.5弾の『初陣』と繋がっているようですし、
そちらの方が捜査の現場を描いているようなタイトルになっているので、
警察モノとしての面白さは、そちらに期待することにしましょうか。

その前に、第2弾を読まないといけませんが(苦笑)。


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『とせい』
- 2016/12/07(Wed) -
今野敏 『とせい』(中公文庫)、読了。

ヤクザの親分が、急に出版社の社長業をやりたいと言い出した!

ヤクザものって、コメディ路線で面白い作品が時々ありますよね。
独特な文化があり、また上下関係が絶対などルールが明確で、
しかも一般人には少し壁がある世界ということで、
デフォルメするには良い材料なんでしょうね。

本作に登場するヤクザな人たちは、任侠道に生きる昔ながらのヤクザさん。
素人には迷惑をかけはいけないという心得と、
面子をつぶされたら黙っていないという心意気。
そこから始まるドタバタ劇は、ふふふと笑える微笑ましい感じ。

また、ヤクザな方たちが語る人勢哲学というか、ヤクザ道の至言も、
なかなか勉強になる含蓄のあるお言葉で、面白かったです。

いくつか同時並行で進んできた問題がどうやって解決されるか、
それは途中で分かってしまいましたが、
ま、期待通りの筋がきっちり描かれて、スッキリ読み終われるというのも
気持ちの良いものですね。


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『膠着』
- 2015/09/11(Fri) -
今野敏 『膠着』(中公文庫)、読了。

裏表紙に「ユーモア小説」と書かれていたので
気軽に読み始めたのですが、予想の上を行く軽さでした(笑)。

社長の御曹司派と専務派に分裂した老舗の糊会社。
TOBをかけられ、、起死回生のつもりの新商品開発で生まれたのは「全くくっつかない糊」。
その新商品の使い道を、山奥の工場の一室に集められたメンバーで検討する・・・・・。

間違って1桁多く糊を納品してしまった新人主人公に対して、
訂正に謝りに行かせるのではなく、1桁多いまま納品して売り捌かせようとする先輩営業マン。
この導入部分は面白かったのですが、本題の商品会議の中身が、小説全編を使って
長々とやっている割にはぐだぐだで、結論も、「それで終わり!?」的な内容。

社内派閥争いも、TOBも、そこから派生したスパイ疑惑も
どれも盛り上がりを見せないまま終息してしまい、
非常にこじんまりとまとまって(というか縮んで?)しまった感のある作品でした。

今野さん、あれこれ作品を書きすぎなのでは?と心配になってしまいました。


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『スクープ』
- 2014/04/20(Sun) -
今野敏 『スクープ』(集英社文庫)、読了。

長編かと思ったら短編集でした(苦笑)。
お気楽に読めて、面白かったです。

夜のTVニュースで社会部遊軍記者を務める主人公。
ちょっとルール違反な取材を飄々と進めて、スクープをものにする。
そして、警視庁の刑事部長とも太いパイプを持ち・・・・。

マスコミ記者を主人公としつつ、
マスコミ報道の在り方に自虐的なやり取りが多く、
この作品の持つ毒味にほくそ笑みながら読めます(笑)。

実際に、こんなにも大スクープの悪事が連発する国だったら嫌なのですが、
ま、そこはご愛嬌。
この本の中では、政・財・官、そして国民・報道いずれも腐っております(爆)。

シリーズ化しているようなので、続編も見つけたら読んでみようと思います。


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