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『ビート』
- 2010/10/24(Sun) -
今野敏 『ビート』(新潮文庫)、読了。

樋口シリーズの3作目。

本作も、話の軸は警察官の父親と反抗的な息子という親子の話。
樋口シリーズは、警察ものというより、家族ものとして楽しんだ方が
良いのかもしれませんね。

事件そのものは、そもそもの「捜査情報を息子が漏らす」というくだりが
ちょっと雑な印象を受けました。
そんなに簡単に情報を入手できてしまって良いものかということ。
そして、捜査情報を漏らすという犯罪行為を、
「大学柔道部の先輩に命じられたから」という理由で実行してしまうのは、
あまりリアリティを感じませんでした。

ま、実業の世界では、学閥という考え方が幅を利かせているという状況があるので、
同じように体育会の上下関係が影響を及ぼすということがあるのも、
あり得るかなと頭では思います。
ただ、本作では、「体育会とはそういうものだ」という説明で押し切っているので
説得力に欠ける印象を受けました。
もうちょっと、いろんな角度から書き込んで欲しかったなと思います。

父親の警察官も、思考力が足りないところが残念。
息子を疑い始めてからは、まともな頭でなくなっていて混乱するのはわかりますが、
自分を脅していた富岡が殺された時点で、「これでもう安心」と晴れやかになって
しまうのはどうかと思いました。
富岡の部屋から何か証拠が出てきたらどうするつもりだったのでしょうか?
知能犯を相手にしている警視庁の人間にしては、頭のデキがイマイチな感じ。

不良を装う息子や若者文化のダンスを良く見せようとして、
頑固な父親や体育会という文化が、不当に貶められるような描き方に
なってしまっているのではないかという気がします。
弱いものに肩入れし過ぎという感じでしょうか。

終盤、その父親が、自分の息子に向き合おうと一生懸命になっていく姿は
読んでいて、じーんとくるものでした。
家族小説としては、良く描けている作品だと思います。


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ビート―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)今野 敏

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『朱夏』
- 2010/06/24(Thu) -
今野敏 『朱夏』(新潮文庫)、読了。

樋口シリーズの第2弾。

今回は、妻が誘拐されるという、
かなり個人的な事件に遭遇し、相棒の氏家とともに、
たった2人で捜査を開始します。

なので、警察小説というほど、警察組織について出てくるわけではなく、
「樋口顕」という警察官個人の物語といった色彩が強いです。

40代の男として、妻や娘といった家族をどう捉えているか、
仕事と家族というものを、どのような位置づけでとらえているのか、
信頼できる同僚というのは、どういう人なのか、
それぞれについて主人公が、事件をきっかけに深く深く考えるという
そういうお話でした。

大きな事件を解決するスリルというものを期待すると、
ちょっと期待はずれなのかもしれませんが、
これはこれで、じっくり読める面白い家族小説でした。

今野作品は、日本語が非常に読みやすく、
また展開も納得できるので、ハズレがないですね。


朱夏―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)
朱夏―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)今野 敏

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『リオ』
- 2010/04/16(Fri) -
今野敏 『リオ』(新潮文庫)、読了。

またもや一気読みでした。
とにかく次の展開が気になって仕方がないです。

謎解きの要素は控えめで、
どちらかというと、真相のほうから出てきてくれるようなところがあり、
主人公が事件を解決するという印象よりも、
事件解決に取り組む主人公そのものを描くという、
やはり警察小説というべき作品かなと思いました。

その主人公・樋口のキャラクター設定が
警察ものにしては珍しい、組織内での協調を大事にする慎重派で、
しかも周囲の目が気になって仕方がないという小心者。
このキャラクターは新鮮でした。

普通なら、型破りな刑事に憧れを抱いて読むのが一般的でしょうけれど、
この作品では、小心な主人公に共感しながら読めてしまうのです。

そして、ところどころに出てくる世代論が興味深かったです。
全共闘世代、団塊世代に対して徹底的な批判の目を持っている主人公のため、
かなり徹底的にこれらの世代をこき下ろす書きぶりです。
ただ、この世代に該当する登場人物たちが、何ともだらしのない人々ばかり。
ちょっと一方的に批判しすぎじゃないかな?と、
学生運動モノに興味を持ってしまう私としては、反発心も。
また、語られる内容が、同じことの繰り返しのようにも思え、
世代論に関しては、少し冗長な印象を持ちました。

あと、本庁と署轄の刑事の対立というものもあまり発生せず、
むしろ恐ろしく滑らかな感じで協力体制が回っていきます。
警察ものの王道パターンとは一線を画したと言えるのでしょうけれど、
「こいつとこいつがぶつかるシーンがあるんだろうな」と予想しながら
読んでいた身としては、接触爆発がたいして起こらず、ちょっと拍子抜け。

さらには、やたらと主人公が家族のことを振り返るシーンが出てくるので、
「もしや、この家族が事件と関わるようになっていくのかしら?」と
これまた憶測を立てていたら、そちらも拍子抜け。

まぁ、この点については、
劇的すぎる犯罪小説や予算ばかり豪華で内容はチープなハリウッド映画に毒されて、
そんな展開しか考えられなくなっている自分が、残念頭なのかもしれませんね。

というわけで、設定や展開は非常に面白かったです。
が、欲を言えば、ちょっと突き抜ける要素がもう一つ何か欲しかったかな・・・
というところでしょうか。
あぁ、でも、それだと作品全体のバランスが悪くなるかも・・・。
難しいところですね。

面白い作品を描く作家さんなので、
読み手としては、無責任にいろいろと期待をしてしまうのです。
そのあたりは、続編に期待ですね。


リオ―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)
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stars樋口さんの人柄が良い・なんとなくせつない読後感
stars警察小説好きには評価が難しい
stars説明がくどい。だけど、シリーズ化されている作品も読んでみたいと思った。
stars良質なエンターテインメント。樋口顕シリーズ一作目。
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『隠蔽捜査』
- 2010/03/13(Sat) -
今野敏 『隠蔽捜査』(新潮文庫)、読了。

あまりの面白さに一気読み。
文章も読みやすくて、非常に自分と相性が良い印象を受けました。

都内で起きた連続殺人事件をきっかけに物語が始まりますが、
主人公は、犯人を追い求める捜査官たちではなく、警察庁の総務課長。
連続殺人事件の捜査の進展に伴い発生してくる
数々のリスク事項を先読みし、管理するのがその職務です。

警察機構に生きる人々を描いた企業小説という感じでしょうか。
この設定の着眼点が面白いうえ、
主人公に、官僚としての純粋すぎる責任感と正論を振りかざす変人を据え、
その周囲には、小学校の同級生で、腐れ縁の警視庁・刑事部長や
上司部下には、いかにも官僚然としたエリートたちを配置。
キャスティングがお見事です。

警察という組織を舞台にした物語を一般的に知らしめたのは
『踊る大捜査線』なのかもしれませんが、
所轄署の苦悩とは別の、警察官僚機構の苦悩や、
その苦悩に直面した時の官僚たちの思考回路というものがわかり、
非常に興味深かったです。

一方で、警察機構内の話だけではなく、自分の身内に起きた不祥事も絡めています。
この不祥事が起きた時は、「ちょっと話を詰め込みすぎじゃないの?」と
感じてしまいましたが、それが連続殺人事件を巡る話と上手くリンクしていき、
非常に納得感のある結末に仕上がっていました。

惜しむらくは、連続殺人事件の動機を、
もうちょっと深掘りして書いて欲しかったかな・・・・というところ。
サイドストーリーかもしれませんが、驚愕の事件であったことには
変わりはないのですから。

それでも、全体としては大満足の一冊でした。
シリーズ化もされているようですし、楽しみな作家さんをまた一人知ってしまいました。


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