『氷雨心中』
- 2017/03/04(Sat) -
乃南アサ 『氷雨心中』(新潮文庫)、読了。

日本の伝統的な工芸品の職人世界を舞台にした短編集。
染物、杜氏、提灯など、その製造現場には馴染みのない世界が続き、
日本の工芸文化を覗き見るには面白い作品でした。

しかし、小説として見た場合、情感を描くことが優先されてしまっており、
プロットの輪郭が弱いように感じてしまいました。
物語がぼんやりしてしまっているというか、
「えっ、ここで終わり!?」みたいな感じを受けるものが多かったです。

その中で、表題作の「氷雨心中」は、
短い枚数の中で、50年前の封印された出来事が現在に甦り、
登場人物たちの「情」が一点においてスパークする感じで、
これは見事な世界観の作品だと思いました。

逆に、この作品と他の作品との温度差が
読み手としての私の中にありありと生まれてしまい、
後半は読み流し気味の読書となってしまいました。


氷雨心中 (新潮文庫)氷雨心中 (新潮文庫)
乃南 アサ

新潮社 2004-05-28
売り上げランキング : 101723

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  乃南アサ | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『今夜もベルが鳴る』
- 2013/01/28(Mon) -
乃南アサ 『今夜もベルが鳴る』(祥伝社文庫)、読了。

うーん、イマイチでした。

主人公の女性が、男友達に紹介してもらった男性に惹かれ、
その男性と電話をするうちに、恋になっていく。
しかし、なんとなく電話の応対がおかしいことに気が付いて・・・・。

ま、裏表紙の作品紹介を読むと、
サスペンス作品という位置づけになっているようなのですが、
事件が動き出すまでが長いよー。
正直、飽きちゃいました。

しかも、この主人公女性が、なんでこの男性に惹かれるのか、
全然共感できず・・・・。
決して、この男性が良くないと言っているのではなく、
なぜそこまで惹かれるのかの描写が、足りてない気がしました。

それは、サスペンス側の犯人が、なぜそこまでぞっこんになったのかについても、
あんまり踏み込んだ説明がなく、ふーん・・・という感じです。

で、物語に入り込めないまま、
最後にバタバタと事態が動いて、なんとか解決!
最後まで置いてきぼりの読書になりました。


今夜もベルが鳴る (ノン・ポシェット)今夜もベルが鳴る (ノン・ポシェット)
乃南 アサ

祥伝社 1990-08-10
売り上げランキング : 551730

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  乃南アサ | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『ボクの町』
- 2012/06/16(Sat) -
乃南アサ 『ボクの町』(新潮文庫)、読了。

見習いお巡りさんが、交番勤務で経験する出来事を描いた一冊。

交番勤務というのは、こんな感じなのか・・・・という
お仕事紹介的な目線で読むと、知らないところがたくさんあって、非常に興味深かったです。
勤務体系といい、仕事内容といい、交番を訪れる市民とのやりとりといい、
面白く読めました。

しかし、新人お巡りさんの成長期としてみると、
残念ながら、私は楽しめませんでした。

まず、先輩-後輩という関係がなってないんです。
ちょっと指導されたらすぐに不貞腐れ、
あまりものごとを深く考えずに、聞き流してしまいます。
熱心に日々の仕事に取り組む同期の姿に感化されることもなく、
先輩から何かを学び取ろうという熱意も無い。
新しい警察組織の人物像を目指したのかもしれませんが、
あまり上手くいっているようには思えませんでした。

また、一応なりとも警察学校を出た身で、
この言葉遣いは無いのではないかと思ってしまいました。
ここは、主人公のキャラクター云々というよりは、小説のリアリティの問題です。
組織で動くことを旨とする警察で、この教育は無いだろうと思うのです。

というわけで、満足半分、不満半分の読書となりました。



ボクの町 (新潮文庫)ボクの町 (新潮文庫)
乃南 アサ

新潮社 2001-11
売り上げランキング : 201516

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  乃南アサ | CM(2) | TB(0) | ▲ top
『団欒』
- 2012/03/30(Fri) -
乃南アサ 『団欒』(新潮文庫)、読了。

狂気を狂気と思わず、それが日常であり常識だと勘違いしている人間を描かせたら
ピカ一の作家さんですね。

本作も、のっけから気持ちの悪い家族が登場します。

ちょっとデフォルメしたところはあるものの、
身の回りに、こういう気持ちの悪い集団(=家族)がいるということを
思い起こさせてくれる短編が並んでいます。

ただ、1つ1つの作品は面白く読めるのですが、
さすがに、これだけ立て続けに読むと食傷気味・・・・・。
というか、気分が悪くなります。

乃南さん、やり過ぎ(苦笑)。
ま、それも作家の力量なのでしょうけれど。


団欒 (新潮文庫)団欒 (新潮文庫)
乃南 アサ

新潮社 1998-07
売り上げランキング : 242677

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  乃南アサ | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『ピリオド』
- 2011/12/01(Thu) -
乃南アサ 『ピリオド』(双葉文庫)、読了。

乃南長編は、気づいたら2年ぶりでした。
文庫で550ページの大作。
面白かったです。

40代でバツイチ子供なしの女性が、
兄の病気、甥や姪の状況、不倫の後始末、実家の処分といった
日常生活の延長上にあるんだけれど、日常ではない事象に巻き込まれ、
それにより自分を見つめ直してみる・・・・・・・
あぁ、なんとも陳腐な要約しか出来ない自分が残念(苦笑)。

この主人公の、兄を見る視線、その嫁でかつての同級生への評価、
不倫相手の男への冷酷なまでに冷静な判断、
仕事仲間のちょっとした言動へのアンテナ、
その一つ一つの自分の行動や思考回路に対しても、
ときには自己嫌悪に陥るような醒めた目をもつところが、非常に惹かれます。

素敵な女性だという意味ではなく、そういう面を自分も持っているなぁという親近感に似た感覚。
もしくは、40代になったら、自分もこんな風になるのだろうかという怖いもの見たさ。

そういう意味では、主人公が、一人で住む部屋で時々寂しさに気が滅入ってしまうところや、
甥や姪が上京してきたときに、面倒だという思いが先にたちながらも、
心の奥では嬉しさを感じてしまうところなど、
その心境がなんとなく分かってしまう自分がいます。

この本を読み通して、そんな人生に、
前向きな結論も、後ろ向きな結論も持つには至らなかったのですが、
何らかの覚悟が必要だということは分かりました。

なかなかに重たい読後感。

読んでいる途中は、殺人事件やレイプ事件など、非日常的な要素に対して、
どれも有耶無耶のまま過ぎていくようなところがあり、
少しモヤモヤを感じていたところもあったのですが、
読み終わってみると、現実とはそんなものかもしれないと思いました。

他人がどうなったか、ということよりも、
自分がどうありたいのか、ということに気持ちが向いた読後感でした。


ピリオド (双葉文庫)ピリオド (双葉文庫)
乃南 アサ

双葉社 2002-05
売り上げランキング : 77121

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  乃南アサ | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『悪魔の羽根』
- 2011/04/12(Tue) -
乃南アサ 『悪魔の羽根』(新潮文庫)、読了。

あんまりピンとくる作品がないままに読み終わってしまった短編集でした。

どんでん返しの妙があまり感じられず、
そんなものか・・・・・で終わってしまう作品が多いように思えました。

主人公たちも、なんとなく一人相撲な感じというか、
それぞれが抱える悩みのようなものに、親しみを持って共感することが
できないままに終わってしまいました。

乃南短編集は、どうも、合うもの、合わないものがはっきり分かれてしまいます。

悪魔の羽根 (新潮文庫)悪魔の羽根 (新潮文庫)
乃南 アサ

新潮社 2004-10
売り上げランキング : 393028

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  乃南アサ | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『花盗人』
- 2010/04/29(Thu) -
乃南アサ 『花盗人』(新潮文庫)、読了。

久々の乃南作品でしたが、面白かったです。
女性が狂気の側に触れる瞬間を描いていて、見事です。

短編らしいどんでん返しもあったりして、
「なるほどねぇ」と思えるプロットでした。

どうにもこうにも、馬鹿な男があれこれ出てくるのですが、
その面倒を見てしまうという輪をかけて馬鹿な女が傍にいて、
読んでいる間は、ちょっとイライラ。
最後の最後で、すっきり・・・みたいな感じ。

人間、自分の感覚に嘘をついてまで
他人に付き従っちゃあ、いけないよね。


花盗人 (新潮文庫)
花盗人 (新潮文庫)
新潮社 1998-03
売り上げランキング : 561221

おすすめ平均 star
starあなたの隣に…
star読後感が・・・

Amazonで詳しく見る
by G-Tools



にほんブログ村 本ブログへ
この記事のURL |  乃南アサ | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『パラダイス・サーティー』
- 2009/04/04(Sat) -
乃南アサ 『パラダイス・サーティー』(幻冬舎文庫)、読了。

主人公の栗子のキャラクターが
頭の回転が速くて人間観察力に過ぎているがために行き遅れている
29歳崖っぷちOLなのかと思いきや、
思いの外「バカな女」でガッカリ。

一方、裏の主人公とも言える同性愛者の菜摘は
冷淡なまでの冷静な思考をする人物で、
こちらは納得できる部分も多く、読んでいて面白かったです。

なので、ガッカリ半分、共感半分の、複雑な気持ちで読み進めました。

途中から犯罪が絡んでくるストーリーになっていますが、
その展開よりも、それに立ち向かう菜摘の姿勢を軸に読みました。

菜摘が背負った心の傷というのは
相当な重みのあるものだと思うのですが、
エンディング、意外とすっきりとした表情を見せていて、
「どうやって克服できたんだ~そこを描いてくれー」と頼みたくなりました。
自分が人間関係の葛藤を克服する時の参考になるかな?と。

ところで、「オナベ」って言葉は一般的なんですかね?
もちろん言葉の存在は知ってましたが、
こんなにも会話にポンポン登場する言葉という認識ではなかったので。


パラダイス・サーティー〈上〉 (新潮文庫)
パラダイス・サーティー〈上〉 (新潮文庫)乃南 アサ

新潮社 2003-09
売り上げランキング : 252908

おすすめ平均 star
star何となく、懐かしくなれる。
starライトな感じ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

パラダイス・サーティー〈下〉 (新潮文庫)
パラダイス・サーティー〈下〉 (新潮文庫)乃南 アサ

新潮社 2003-09
売り上げランキング : 256662

おすすめ平均 star
starメリハリこそないが乃南らしい面白さ
star本当のパラダイスを求めて

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ
この記事のURL |  乃南アサ | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『夜離れ』
- 2009/02/25(Wed) -
乃南アサ 『夜離れ』(新潮文庫)、読了。

怖い怖い女たちの話。

とことん計算高く男を見ているのか、
狂気の世界まで逝っちゃってるかの両極端なお話ばかり6話。

女であるのが残念な気持ちになってしまいます(苦笑)。

どれも、「女の狂気」のパターンにハマってしまっている
物語展開のような印象もありましたが、
その分、安心して読めました。

でも、帯にあるような「痛快さ」を
この作品群から感じ取るのは無理でしょうに。


夜離(よが)れ (新潮文庫)
夜離(よが)れ (新潮文庫)乃南 アサ

新潮社 2005-03
売り上げランキング : 23164

おすすめ平均 star
star女の怖さのオムニバス
star女性は怖い・・・。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  乃南アサ | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『家族趣味』
- 2008/09/23(Tue) -
乃南アサ 『家族趣味』(新潮文庫)、読了。

うーん、イマイチ乗り切れなかったです。
冒頭の作品「魅惑の輝き」のオチがありきたりなものだったからでしょうか?

「彫刻する人」の結末も、あんまりスマートな感じじゃなかったし。
最後の数行でどんでん返しをさせるなら、
私はやっぱり阿刀田作品のセンスが好きですね。

「忘れ物」は、途中でカラクリがわかってしまったのが残念。
気付かなかったら最後まで楽しめたと思うのですが。
でも、会社の会議中に上司が発狂したら
とんでもないホラー体験だろうな・・・。

「デジ・ボウイ」が、一番好みでした。
やっぱ、少年ものに弱い私。
直樹だけじゃなく、変人扱いの彰文も登場人物として十分魅力的。
変人だけど彼なりの筋が通った考え方をしていますから。
でも、読後感が悪かった・・・・・。

「家族趣味」も、いろんな総括の仕方があるのでしょうが、
「自信満々の主人公が崩壊していく過程」と捉えてしまうと、
なんだか読後感がつらいです。

まぁ、乃南作品に爽やかな読後感なんて無いのかもしれませんが(苦笑)。
短篇集なだけに、ダークな感じを消化する時間がないままに
話が終わってしまうのが辛いのかもしれません。

どれもこれも、人間の狂気の部分を描いていて、
恐ろしかったです。


家族趣味 (新潮文庫)
家族趣味 (新潮文庫)乃南 アサ

おすすめ平均
stars『デジ・ボウイ』考
stars安易な考え、ご用心
starsおもしろくて一気に読みました
stars心の隙間

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ


この記事のURL |  乃南アサ | CM(0) | TB(0) | ▲ top
| メイン | 次ページ