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『歴史からの発想』
- 2023/06/06(Tue) -
堺屋太一 『歴史からの発想』(日経ビジネス人文庫)、読了。

堺屋太一氏の歴史解釈は面白いので好きです。

なので本作も期待値が上がってしまったのですが、
既読感のある文章が多くて、あんまり刺さってきませんでした。
『巨いなる企て』とか読んじゃったので、その面白さに触れてしまうと
エッセンスだけ抜き取っても薄い印象を受けてしまうのかもしれませんね。

後半に入っていた『「切れ者」の人間学』の章がずば抜けて面白いと感じました。
「辣腕政治家」として岸信介総理大臣のエピソードから始まり、
国家組織体制とトップの関係を、現在のものと豊臣政権など歴史上のものとを比較し
どこが革命的だったのか、どこが日本人的なのかということを端的に分析していて
興味深く読めました。

官僚組織の中にいた人ならではの視点だなと思います。
このテーマで、しっかりした著作を読んでみたいものですね。




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『巨いなる企て』
- 2021/12/03(Fri) -
堺屋太一 『巨いなる企て 上下』(毎日新聞社)、読了。

名古屋・静岡出張があったので、宿泊先で夜に一気に読もうと思って
上下巻ものに手を付けたのに、思いのほか出張先で忙しく、全然読む時間が取れないまま
戻ってきても時間不足で、読了に時間かかっちゃいました。

さて、秀吉没から関ケ原の戦い開戦までの間の、
豊臣の忠臣たちと天下を奪いたい家康との争いを、石田三成を主人公に立てて描いた作品です。

中学校の日本史の教科書では、秀吉没後に関ケ原の戦いがあり
一気に家康が天下を取り、幕府を開いたかのように書かれますが、
実際には、この2年間に忠臣側と家康側とで公私にわたって激しい権力闘争が行われていた様子が
本作でじっくりと描かれています。

この闘争そのものも面白いのですが、私は特に、組織論の対比を興味深く読みました。

忠臣側は、秀吉亡き後の豊臣家を支えるための官僚機構が中心で、
政治権力を握る五大老と、行政機構を担う五奉行が、全国の大名たちを統括するという仕組み。
ある意味、三権分立に近いような民主主義的な組織であり、
かなり時代を先取りしていると思うのですが、なんせ合議制なのでスピードが遅いんですよねー。

一方の徳川家康は、自身が五大老の筆頭という位置に居ながら、
徳川家の当主として専制君主的な独裁権力を行使できる立場にあり、
250万石という強大な領土の力を盾に、即断即決の指示命令を出していきます。

民主主義的組織と、独裁的組織は、優秀な人物がトップに立つならば、
圧倒的に独裁的組織の方が強いですよね。それを本作で実感しました。

民主主義的組織は、個人の暴走を防ぐという点では、優秀な統制機構だと思います。
実際に、秀吉没後に徳川が実権を握るまでに数年かかっているわけですし、
最後は関ケ原の戦いという強行突破をしなければ権力は奪えなかったわけですから。
その関ケ原の戦いにしても、大義名分を用意しなければ実施できないというのが
民主主義的組織のメリットかなと。
でも、防御力はあっても、攻撃力は弱いですよね。

民主主義組織は、基本的に合議制だったり代表者が居ても周囲の者が意見を言ったり
反論したりできる討議システムだったりが決定プロセスになると思うのですが、
その議論の場に関わる全ての人が優秀で、適切な判断ができるという状況は
ほぼ空想の世界にしか起きえないように思います。
必ず感情的な人が居たり、議論についていけずに誤った判断をする人が居たり、
弱腰や日和見で決断できない人が居たり、ベストな判断から後退する要素が多すぎます。

それに対して、独裁的組織は、トップが優秀なら圧倒的な実績が残るし、
トップがバカなら即没落するという、わかりやすい能力主義ですよね。
バカの方向性によっては、自身が没落するだけでなく、世の中社会に大きな害悪をもたらす場合もあるので
底抜けのマイナスが想定されるという点で、民主主義的組織には劣りますが、
上手くいった場合の突き抜け方は、やっぱり素晴らしい成果を世の中にもたらしますよね。

今、自分自身が関わっている組織において、
数年前に財政的にも信頼的にも潰れかけたものを再建するという仕事をしているのですが、
潰れかけたのは執行部とそれに近しい従業員個人が独善的な運営をした結果だったので、
その後、執行部が入れ替わり、私が現場の指揮を執るようになった際に、
関係者へのアピール目的もあり、かなり民主主義的な運営に変えて末端職員からも意見を出せるように
組織作りを行ってきました。
おかげで大きく黒字を出せる組織になり、関係者からも一定の信頼を取り戻せたと思うのですが、
半面、権限を持っている立場の人が即断即決で決めた後にも、現場から意見や反論が出るようになり
スピード感が失われてしまいました。

自分としては、決裁権限規定をを前面に出して、もうちょっと権限者による即断即決を取り入れたいのですが
ここ数カ月、小さいことから即断即決を増やしてみたものの、現場からの反論が止まらず、失敗気味。
半官半民の組織なので、まぁ、民間出身の私にできる改革はここまでかなぁと思い、
組織改革そのものよりも、経営支援の契約終了の方向で執行部とお話をスタートさせました。

そんな現状があるので、家康の即断即決に見事に従ってくれる家臣団を見て、
羨ましいなーと思ってしまいました。
今の自分は、三成の立場で、組織のルールに従っていろいろ提案したり根回ししたりしてますが、
思うような展開にならず手詰まりになるケースが多く、本作の三成の立場に共感しっぱなし。
一旦家康との対決を諦めて佐和山に引きこもるところも、
組織から撤退しようと考えている自分の状況に合うので、そうするしか仕方がないよねーと
自分の判断の後押しにさえなってしまいました(苦笑)。

まあ、とにかく、組織の中に身を置く人は、学ぶべきところが多い作品だと思います。
そして、徳川幕府があれだけ長い間安定して続いたことにも納得できる作品です。
今の日本の繁栄があるのは、明治維新の凄さもあるけど、徳川幕府の安定感が
日本の経済を成長させたという点も大きいと思います。




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『豊臣秀長』
- 2020/12/28(Mon) -
堺屋太一 『豊臣秀長』(PHP)、読了。

我らが藤堂高虎公の生涯を紐解くと、キーマンとして出てくる豊臣秀長の名前。
しかし、秀吉の弟としてしか描かれないことが多く、
どんな人物なのか良くわからなかったです。

たまたま近所のおっちゃんが本作をくれたので、高虎公の主君はどんな人物だったのか
という興味で読んでみました。

兄である秀吉が、農民をしていた秀長を召し抱えにくるシーンから始まっていますが、
嘘も方便で演出過剰な兄と、その嘘を薄々分かりながらも乗ってあげる弟という構図に始まり、
最初から二人の人間関係、信頼関係は明確な状態から始まります。

教科書にしても、歴史文学にしても、行動が華々しく目立ち、
キャラクターも経っている秀吉にばかり目が行くのは当然ですが、
こういう社交で出世していく男の後ろには、銃後を守る妻がいるわけでありまして、
秀長は妻の役割、つまり秀吉が華々しく活躍する後ろで領土経営の安定化や
家臣の統率の安定化に努めています。

この人がすごいなと思うのは、自分はそういう役割だと割り切っているところ。
兄のように目立ちたいとか、自分も武功を上げたいとか、カネを稼ぎたいとか、
そういう不埒な思いは捨てて、ただひたすらに兄のために尽くす姿がすごいなと思います。
腹が括れているというか、覚悟ができているというか。

そして、その安定した精神の上に、大局的な情勢の読みとか、
経済的な側面での国の経営とか、人間関係の細やかな配慮とか、
さまざまなことに意識を向かわせて最善を尽くしています。

武功だけを求めるのではなく、いかに国を治めるかという点で努力をした
藤堂高虎公が仕えた人物として納得できる功績の持ち主でした。
教科書にしても、歴史小説にしても、秀長の扱いが小さいのは残念ですね。
せめて、ビジネス本の世界では、もっと取り上げられてもよい人物だと思います。
いわゆる番頭役としては、ピカイチの実績はないでしょうか。

一方で、高虎公との関係でみると、本作は物足りないです。
秀長を主人公としつつも、あくまで描いているのは秀吉の天下取りまでの道のりであり、
さらには、信長の天下布武の構想がメインだと思います。

物語も、清須会議あたりで終わってしまっており、
秀長の生涯最後のシーンが描かれることなく閉じられてしまいます。
これでは、形式的な主人公であり、真の主人公は秀吉または信長のような印象です。

あくまで秀長の目を通して秀長よりも上の世界にいる人々の動向を描いた物語であり、
秀長とその家臣との関係はほとんど描かれません。
そこは残念。
あの藤堂高虎が、秀長を慕った理由というところをもっと詳しく読みたかったです。

断片的に登場する高虎については、
数術の知識が豊富な武将という描かれ方をしており、だから後に築城の名手となったのかと納得。
秀長が高虎に会計知識を学ばせたというようなくだりもあり、
だからこそ、もっと高虎と秀長の関係を知りたかったなという思いが高まりました。

戦い方を知っているだけではなく、国の治め方、部下の使い方、人脈の作り方を知っていることが
戦国の世から天下統一へと動いていく時代の中で重要な能力だったということが良くわかり、
時代の一つ先を行く能力を身につけ、それを伸ばし、最大限に活用することの意味を
しっかりと伝えてくれる面白い作品でした。





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『先見後顧』
- 2019/11/29(Fri) -
堺屋太一 『先見後顧』(毎日新聞社)、読了。

近所のおっちゃんがくれた本。
30年も前の本なのに、内容に古さを感じません。

もちろん、時事的な内容は時代を感じますが、
そこから導き出される社会の眺め方は、今の時代にも十分に通用します。

吉田茂も、池田勇人も、佐藤栄作も、在任期間中は不人気だったけど
辞めた後に評価が高くなったという指摘は、
安倍さんもそうなるのかな?と思えてしまうほど。

不人気の内容が、政策そのものへの不満ではなく
「桜を見る会」の運営とかのクレームですからねぇ・・・・。
こういうクダラナイ議論は数か月もすれば忘れられていき、
アベノミクスの実績とかだけが残っていくのでしょうね。
野党も、久兵衛とかどうでもいいこと言ってないで、
公職選挙法とか政治資金規正法とかの観点で本質的な部分を詰めたらいいのに、
ブーメランを懸念してるのでしょうかね。

そんなことはどうでもよくて。

時代を感じずに読めるというのは、普遍的な本質を書いているからでしょうね。
日本式の教育の仕組みについても、戦後の教育についてだけでなく、
江戸時代からの日本の教育の在り方を、「型にはめる」方法だとし、
型を作ることで誰もが教師になれるマニュアル化なのだと見抜いたことで
あぁ、だから江戸時代の教育水準が世界的にトップレベルだったのかとも納得でき、
先進国になった今は、逆に応用力の欠如が足かせになってるのかと分かりました。

一度、著者の手による日本の歴史の解説書を読んでみたいなと思いました。




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『日本を創った12人』
- 2010/12/31(Fri) -
堺屋太一 『日本を創った12人』(PHP新書)、読了。

この本は読み応えがありました。

現在の日本の形に大きな影響を与えたという12名について
何を行い、今に何を残したのかを論じます。
この視点が面白かったです。

例えば、聖徳太子の神仏習合思想が
今の日本人の宗教観や、先進文化の取り込み方を規定したということに
1400年の時を超えた説得力がありました。

他にも、日本人の精神世界に大きく影響を与えたとして、
光源氏まで登場してきますが、一つの民族が共有している考え方というのは
結局、「仕組み」の一種なんだなと認識しました。

何をどう考えるのかという思考の仕方も、
官僚制度や経済制度といった各種制度も、
日本人がどう行動するのかということを規定しており、
日本人に行動を促す「仕組み」なんだと。

そういう「仕組み」を創った人々こそが
日本を創った人々と言えるんだということで、納得できました。

また、それらを説く堺屋太一の文章が面白い!
ぐいぐい引き込まれていきます。

年末のバタバタの時期に、楽しませていただきました。


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『油断!』
- 2010/05/16(Sun) -
堺屋太一 『油断!』(文春文庫)、読了。

石油依存度の高い日本社会に対して、
中東戦争の影響がどの程度深刻に作用するかを描いた作品。

非常に興味深いテーマを扱っているのですが、
文章の進め方が、どうにもシミュレーションのレポートを読んでいるようで、
味気ない印象が拭えません。

小説としての拙さが気になってしまい、
作品にのめり込めませんでした。

ただ、中東戦争勃発から200日の間に、
日本人300万人が死に至るという予測は衝撃です。
戦争そのものに巻き込まれるのではなく、
戦地から遠い日本の地で、経済の混乱の犠牲になるという・・・。

こんな事態に陥らなくて済むように、
小説が書かれた当時の話ではなく、
まさに「今」すべきことは何なんでしょうかね。

そこが知りたいです。


油断! (日経ビジネス人文庫)
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『組織の盛衰』
- 2009/01/13(Tue) -
堺屋太一 『組織の盛衰』(PHP文庫)、通読。

真っ当な組織を論じた書であったため、
逆に、連休ボケの頭では読みこなせませんでした。

試験勉強の合間に読むには
読み物としての物語性を重視して本を選ぶべきでした。
選択失敗。
いずれ読みなおします。

劉邦について書かれたパートは
物語性が豊かで面白かったです。


組織の盛衰―何が企業の命運を決めるのか (PHP文庫)
組織の盛衰―何が企業の命運を決めるのか (PHP文庫)堺屋 太一

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stars優秀な人材を集めた組織が失敗するメカニズム
stars今まで読まなかったのがもったいなかった
stars組織には大切な役目がある
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stars司馬版項羽と劉邦は『人間臭さ』重視
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『日本とは何か』
- 2008/06/28(Sat) -
堺屋太一 『日本とは何か』(講談社文庫)、読了。

経済企画庁長官としてのイメージしかありませんでしたが、
元々は通産官僚なんですね。

さて、本作は、「日本論・日本人論」でございますが、
総花的な印象を受けてしまいました。

特に、経済の分野のお話については、
ご専門のせいか、なんだか教科書を読んでいるような感じで、
あんまり目新しい主張が無かったなぁと。

むしろ、日本人の宗教を語っている章が面白かったです。
聖徳太子を宗教の本質がわかっていない政治屋として評価しているところなどは
新鮮な視点でした。


日本とは何か (講談社文庫)
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