FC2ブログ
『椰子・椰子』
- 2019/05/19(Sun) -
川上弘美 『椰子・椰子』(新潮文庫)、読了。

ブックオフの50円ワゴンにあったので、
内容は特に確認せず、「川上弘美が50円だー!」という、それだけで買ってきました。
そして、特に考えずに、「さっくっと読めそうなものを・・・・」と思って手に取ったのですが、
図らずも、川上弘美2連発となりました。

でも、正直なところ、途中まで、川上弘美2連発になっていることを気付いていませんでした。
それほど、作品のタッチが別物だったので。
『真鶴』が情念の世界なら、『椰子・椰子』は観念の世界。
いきなり冒頭に、モグラと一緒に写真を撮っちゃったりしてるのですが、
「あれ?動物界の擬人話法??」とか悩む暇もなく、
隣にはランドセルを背負ったもぐら(らしき)すらっとした生物のイラストが。
もう、ぶっ飛んでます。

モグラとの日常生活の話なのかと思いきや、
次の日には原っぱに怪物が住み着いたという話になり、
「ランドセルを背負ったモグラは怪物じゃないのか!?」と突っ込もうと思ったけど、
次から次へと異次元の話が出てきて、
しかも各エピソードが繋がってたり、ぶっ飛んでたりで、
なんとも捉えどころのない物語です。

でも、空気感がポップだから、
不快な感じや不穏な感じを覚えずに、読み進めていきことができます。

真鶴での不倫話とは、ぜーんぜん違う世界観で、
これが同じ作者から生まれてきたのか!とビックリ。

タイトルの「椰子・椰子」は、著者のお子様が幼かったときに
「おやすみなさい」がうまく言えずに「やし、やし」になっていたというエピソードから。
あぁ、夢の中の世界なのか・・・・と、ようやく納得。

あとがきに行くまで、「夢の中の話を描いている」ということすら思い至らなような
独特の世界観が出来上がってました。
私的には、『真鶴』より面白かったです。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  川上弘美 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『真鶴』
- 2019/05/18(Sat) -
川上弘美 『真鶴』(文春文庫)、読了。

真鶴半島というと、私の中では、ダイビングで通った場所です。
リゾートというよりは、講習の場所。
ちょっと地味なイメージがあるので、「真鶴」というタイトルからは、
「そんな場所が小説の舞台になるのか!」と驚きを覚えました。

そんな地味な場所なのに、小説はヒットしていた、という記憶から、
なんとなく私の中では、『真鶴』=川上弘美の代表作という公式が出来上がってました。

で、読んでみたのですが、情念の世界というか、怨念の世界というか、
なんとも濃厚な感情の世界が広がっていました。
正直言うと、私の苦手なジャンル・・・・。

でも、その描写の細やかさから、
「こんな繊細な感覚をもって生きている人おいるんだなぁ」と
なんだか勉強になりました。
私自身は、芯がガサツなので、ちょっとやそっとの周辺の変化は、
たとえ気づいても意図的に無視してしまう気がするんですよね。
でも、主人公は違う。

娘がそっけない態度を取った一瞬の表情を捉え、
それをフォローするような母の言動を捉え、
恋人=不倫相手の些細な振る舞いに神経をとがらせる。

私の感覚では、私の3倍ぐらいの濃さで、
日常生活を感じているのではないかと思われるほどの神経質さ。
そうなりたいわけじゃないけど、ここまで濃い描写を読んでしまうと、
自分自身、いろんなことを気付かずに捨ててしまっているような喪失感を覚えます。

ストーリー自体は、ガサツな私からすると
「はっきりせい!」と喝を入れたくなってしまうほどウジウジしている印象を持ってしまいますが、
女(霊?)が付いてきちゃう(憑いてきちゃう?)なら、
こんな風にウジウジ考えた末に、女(霊?)と対話しちゃったり出かけちゃったり
しちゃうんでしょうかね・・・・・・いや、やっぱり、それは壊れてるな。

世界観を堪能するまではいかなかったですが、
こんな世界もあるのね・・・・と思える程度には濃い作品でした。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  川上弘美 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『ニシノユキヒコの恋と冒険』
- 2019/05/03(Fri) -
川上弘美 『ニシノユキヒコの恋と冒険』(新潮文庫)、読了。

ニシノくん、幸彦、西野君、ユキヒコ、
ニシノユキヒコが関わった様々な女性との恋愛関係を、連作短編集の形で描いていきます。

全部を読み通せば、ニシノユキヒコという人物の女性遍歴、
そして人生そのものが見えてくるはずなのに、
不思議と筋が一本通っているような通っていないような不安定さ。
その不安定さが、逆に面白かったです。

一言でいえば、女たらしで、真面目に恋愛ができない男ということになるのでしょうけれど、
各話に登場してくるニシノくんなり、幸彦なり、西野君なり、ユキヒコなりは、
どことなく違う雰囲気をまとっていて、その少しブレた感じが
この男の本質的な部分を表しているような印象を受けました。
つまりは、自分を持たずに、他人に合わせて生きているような。

終盤で、こんな人間に育った理由が描かれていましたが、
私は、あんまり、そこはどうでも良い感じでした。
むしろ、変幻自在な人間が存在しているという不思議さの方が面白かったです。

川上作品にしては、あんまり居心地の悪さを感じなかったのは、
ニシノユキヒコの自分のなさが、軽い方にブレていたからでしょうね。
これが、内省的な方に落ち込んでいったら、非常に不気味な人間だったのではないかと思います。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  川上弘美 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『水声』
- 2018/10/19(Fri) -
川上弘美 『水声』(文春文庫)、読了。

なんとなくBookOffで手に取って、そのまま買ってきた本。
タイトルの「水声」。
「みずごえ」かと思いきや「すいせい」。
そして、造語かと思いきや、ちゃんと変換されました。
日本語、奥が深い・・・・・。

さて、物語は、私と弟が中心。
1969年に私は11歳。
今は、結構、良いお歳になっています。
なのに弟と実家で2人暮らし。
何となく不穏な感じが。

自分たちの子供の頃を振り返っていきますが、
母のキャラクターが秀逸。
素晴らしい母という意味ではなく、不気味な母という意味で。
1歳だった頃の自分の娘について振り返った時に
「柔らかで突けばすぐに死んじゃいそうだった」と本人に向けて描写する母。
悪意のない残酷さが不気味です。

そして、そんな母のもとで育った兄弟。
40代になり2人で実家に戻って一緒に暮らすようになり、
なぜか同じ寝室で布団を並べる2人。
夜中にふと目を覚まし、隣にで眠る弟を眺める姉、触れる姉。
不気味です。

そして、そんな不気味さの正体が、
この家族の真相として現れてくるとき、不気味さの理由が腑に落ちてしまう分、
さらにリアリティを増して気持ち悪さを感じてしまいます。

相変わらず、川上作品は居心地が悪い。
でも、それをきちんと描いて世界観をモノにしている著者は凄い。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  川上弘美 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『龍宮』
- 2017/11/10(Fri) -
川上弘美 『龍宮』(文春文庫)、読了。

「8つの幻想譚」という紹介文のとおり、
ふしぎなお話が詰まっています。

冒頭の一編は、人間になった蛸のお話。
この蛸親父の行動が不思議なのはもちろんのこと、
しゃべる日本語がいくつもの人格が継ぎ接ぎされているようで不気味。
そして、それに対する人間の男の主体性もあるのかないのか分からず
この2人の対話が、なんとも居心地悪い感じです。
この狙った居心地の悪さが、上手いなぁと思わせます。

そして、表題作の「龍宮」。
「龍宮」という語感からイメージする華やかさは全く感じられない
本当に不気味な婆さんと曾孫の物語。
言霊を扱うような祖母イト、背丈は曾孫の膝までしかない?
もう、どんな存在なのか想像が追い付かないのですが、
でも、どしりとした存在感を感じさせる描写。
書かれたままの姿で存在しているわけではないとしても、
何かしらの比喩やもしくは曾孫側の錯覚があるだけで、
こんな婆さんが居てしまうのではないかと思わせる存在感。
そこが気持ち悪いのです。
こういう存在を許してしまう余地が世の中にはあるのではないかという恐怖。

この短編集で感じた怖さは、
「作り話に見せかけて、こういう気持ちの悪い存在は、現実に居るのではないか」と
思わずにはいられないところ。

気持ち悪いけど心に踏み込んでくる、
そんな迫力のある作品でした。


龍宮 (文春文庫)龍宮 (文春文庫)
川上 弘美

文藝春秋 2005-09-02
売り上げランキング : 70892

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  川上弘美 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『溺レル』
- 2017/05/26(Fri) -
川上弘美 『溺レル』(文春文庫)、読了。

たぶん、川上弘美らしい短編集になるのでしょう。
でも、私には苦手なジャンルでした。

どの短編も、出てくる女性に主体性がないというか、
なぜ、こんな男性に、現実世界から連れ去られてしまうのか、
そこが私には理解できない・・・・・。

ま、理性では理解できない世界だからこそ、
「溺レル」なのでしょうけど。

その流されていく情景は、読んでて違和感はないんです。
でも、共感できないというか、
自分ならこうはならないという思いがあるというか。
まぁ、自分もいざというときに理性が保てるかは分からないですが(苦笑)。

解説で、男性評論家が
「一緒に逃げてくれそうな女と言えば、ずばり、つまらない女に限る」
と断言していて、これは、本作を通して読んでみて、
あぁ、そういうものなのかもしれないなと、すんなり納得してしまいました。


溺レる (文春文庫)溺レる (文春文庫)
川上 弘美

文藝春秋 2002-09
売り上げランキング : 93529

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  川上弘美 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『どこから行っても遠い町』
- 2017/02/12(Sun) -
川上弘美 『どこから行っても遠い町』(新潮文庫)、読了。

とある都心に近い町で繰り広げられる
1人1人の日々の生活を描いた短編集。
各章ごとの登場人物たちが緩やかに繋がっており、
小さな町での濃い人間関係を描写していきます。

最初の3つのお話ぐらいまでは、
この人はどんな人生を歩んでいるのだろうか?と興味津々で読んでいたのですが、
段々と興味が薄れていってしまいました・・・・・。
皆の生活が、狭い範囲でチマチマし過ぎているからでしょうか。

町の外の空気を吸ってみようとか、
今の生活を変えるための工夫をしようとか、
あんまり、そういう行動に出る人が居なかったので、
息苦しく感じてしまったのかもしれません。


どこから行っても遠い町 (新潮文庫)どこから行っても遠い町 (新潮文庫)
川上 弘美

新潮社 2011-08-28
売り上げランキング : 315434

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  川上弘美 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『ハヅキさんのこと』
- 2015/02/14(Sat) -
川上弘美 『ハヅキさんのこと』(講談社文庫)、読了。

掌編小説です。

バラエティに富んだ感じかな?とイメージしていたのですが、
冒頭、結構、どんより系のお話が続いて、しんどかったです。
人間の内面に落ちていくというか、
感情の逃げ場がない状況に追い込まれていくというか。

中盤以降、明るい話やファンタジー系の話も出てきて、
大分読みやすくなりました。

掌編小説というのは、短いのでサクッと読めそうに見えて、
実は、読む側の心理状態が色濃く反映されてしまうものなのかもしれませんね。


ハヅキさんのこと (講談社文庫)ハヅキさんのこと (講談社文庫)
川上 弘美

講談社 2009-11-13
売り上げランキング : 101879

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  川上弘美 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『古道具 中野商店』
- 2015/02/04(Wed) -
川上弘美 『古道具 中野商店』(新潮文庫)、読了。

面白い小説でした。

古道具屋に出入りする登場人物たちの
どこか世間とずれた立ち振る舞いの面白さもあるのですが、
それは、「古道具屋」という一風替わった舞台設定をした場合に、
ある程度予想できる範囲だと思います。
変な職業に就いている変な人たちというような。

しかし、この小説が面白いと感じたのは、
古道具屋という舞台にいながら、あんまり古道具屋という商売にスポットを当てているわけでは
ないということです。
もちろん、舞台としての古道具屋の描写は、その様子が立ち上がってくるぐらい
活き活きとしていているのですが、ストーリーが、それほど古道具屋家業べったりではなく、
本当に、舞台装置として使っていますというような控えめな感じなんです。

結局、描いているのは、友情だったり、恋愛だったり、不倫だったり、失踪だったり。
どこにでもあるような人間関係を、じっくりと描いています。
古道具屋の話を書こうと思ったときに、古道具屋ならではの話にするのではなく、
人間関係を書こうとするには、結構な割りきりが必要なのではないかなと想像しました。
その割り切り加減が、「なんで、古道具屋でこんなストーリーを紡げるんだろう」という
私の驚きに繋がったのだと思います。

気づけば4年ぶりの川上作品だったのですが、
こりゃ、いいなぁ。


古道具 中野商店 (新潮文庫)古道具 中野商店 (新潮文庫)
川上 弘美

新潮社 2008-02-28
売り上げランキング : 28085

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  川上弘美 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『物語が、始まる』
- 2010/06/24(Thu) -
川上弘美 『物語が、始まる』(中公文庫)、読了。

これは面白かったです!

人間の雛型と生活したり、
トカゲが100cmに成長したり、
婆が降ってくる穴の中をうろうろしたり、
とにかく設定が不思議な世界なのですが、
その世界の中で、一つ一つのお話が完結しているので、
あまり違和感を感じずに、これらの世界を楽しめてしまいます。

人間と人間の雛型の会話を通して、
何が自然で、何が自然ではないのか、
どうすることをお互いに求めているのか、
どこに転換点があるのかといった、人間たちの姿を描いています。

芥川賞受賞作の暗く不安定な感じの作品よりも、
こういう、明るくて、不思議だけれどもしっかりしている世界観のほうが好きです。


物語が、始まる (中公文庫)
物語が、始まる (中公文庫)川上 弘美

おすすめ平均
stars「淡々」てやつ。。
stars愛情は、育まれていくんだなあ
stars表題作、とても良い
stars切ないとはこういうことなのかと思いました。
stars雛型であること

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

蛇を踏む (文春文庫)
蛇を踏む (文春文庫)川上 弘美

おすすめ平均
stars現実の蛇は筋ばって固い
stars寝た後で値打ちが分かった
starsぬ~っとする。
stars独特の感性と確かな表現力
starsよくわかりませんでした

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ
この記事のURL |  川上弘美 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
| メイン | 次ページ