『アルゼンチンババア』
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- 2017/10/20(Fri) -
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よしもとばなな 『アルゼンチンババア』(幻冬舎文庫)、読了。
映画公開時に映画館まで観に行きました。 小汚い魔女のようなオバチャンを演じる鈴木京香が見たい、その一心で(笑)。 小汚い鈴木京香と小汚い役所広司がタンゴを踊っているシーンの記憶しかないのですが、 面白かったというフワッとした印象はありました。 その原作です。 こんなに短い作品だったのか・・・・・と、 まずはシンプルさに驚きましたが、 ムダを削ぎ落した中にも独特の世界観があり、 原作も面白かったです。 そして、読んでいくにつれて、映画のシーンをいろいろ思い出しました。 主人公の少女が初めてアルゼンチンビルに入ったとき。 いとこの男の子を連れてビルに入ったとき。 夏草の生い茂る庭からビルを見上げている風景とか。 どういう暮らしをすることが幸せなのか、 自分の幸せとは?家族の幸せとは?ということを 考えさせられる作品です。 職人気質な父、彫刻家になりたかったのに墓石屋になった父、 妻を亡くして落ち込む父、アルゼンチンババアと同棲を始めた父、 どれも女の子の立場からは扱いにくく、面倒くさい存在なのに、 この子は、無闇に遠ざけず、かといってお節介に介入することもなく、 絶妙な距離感で父親と向き合っています。 さらに、昔ひと悶着あったいとこの男子とも 水に流したのか、お互いに成長して気にならなくなったのか、 これまた上手い距離感で会話をしていきます。 このあたりの、人間関係構築力の高さというか、 無理をしない突き放し感が、羨ましい能力だなぁと感じてしまいました。 あと、この作品を読んでいる間じゅう、 魔女のような鈴木京香が、私の頭の中で活き活きと動いていました。 女優さんの存在感ってすごい!
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『マリカのソファー』
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- 2015/08/13(Thu) -
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吉本ばなな 『マリカのソファー』(幻冬舎文庫)、読了。
「世界の旅①」というサブタイトルが目に止まったので、 旅行エッセイだと思って買ってきたら、小説+取材旅行記という構成でした。 その小説は、バリの明るさよりも重さの方に目を向けたかのような 多重人格障害の女のとの交流のお話で、結構ヘビーな内容です。 個人的には、ちょっと苦手な空気を漂わせてくる作品です。 こういう情緒不安定な感じは、どうにも受け入れにくくて・・・・。 バリ島の独特な多神教の世界観と、 少女の多重人格障害という世界観が重なると、なんとも重たい感じになります。 作品の舞台となったバリ島の描写は、この作品に独特の風味をつけていると思いますが、 小説よりも取材エッセイで描かれたバリ島の方が、明るい感じがして、私は好きでした。 小学生の頃、家族旅行でバリ島に行きましたが、 石造りの寺院の質感に圧倒されつつ、午後はホテルのプールで遊び、 夜は美味しい料理をお腹いっぱい食べるという、楽しい思い出の地です。 ケチャ・ダンスは、子供心に恐怖というか畏怖を感じてしまい、ちょっと怖い思い出です。 二十年以上も前の夏休みにタイムスリップできたという意味では、 夏の読書に合っていたのかもしれません。 あと、原マスミさんによる挿絵が非常に印象的でした。
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『デッドエンドの思い出』
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- 2010/05/04(Tue) -
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吉本ばなな 『デッドエンドの思い出』(文春文庫)、読了。
ふわっとした感じの短編がならぶ作品集。 ゆるやかに周囲と折り合いをつけているような女性たちが登場しています。 彼女たちの対振る舞いに共感できるところが多く、 興味深く読みました。 表題作は、ちょっと高梨君に魅力を感じられなかったせいか イマイチのめり込めなかったのですが、 「おかあさーん!」とかは、設定も突飛で面白かったです。 ただ、ばなな作品の独特の文章リズムが、やっぱり苦手です。 時々読むのにつっかえてしまって、ちょっと戻ってしまいます。 最初に読んだばなな作品で感じた苦手意識が克服できません。 そこは、いつも残念に感じるんですよねー。
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『とかげ』
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- 2008/05/06(Tue) -
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吉本ばなな 『とかげ』(新潮文庫)、読了。
「時間と癒し」「運命と宿命」をテーマにした短篇集。 おかげで、結構、観念的な感じが強く、 自分としては読み辛いところもありました。 現実と観念が入り混じっていて、 継ぎ目がよくわからないような感覚です。 作品としては、「キムチの夢」が 読者の側にも「癒し」になっていて、気持ち良く読めました。
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『N・P』
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- 2007/12/06(Thu) -
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吉本ばなな 『N・P』(角川文庫)、読了。
ばななさん、お初です。 前半、なんだかとても読み難さを感じてしまいました。 一文一文は明快だし、リズムもあるし、なんでだろ?と思っていたのですが、 一文一文の距離感(行間というのでしょうか?)が 自分の感覚よりも離れているような感じだと思い到りました。 この一文の次にこれが来るの?と戸惑ってしまうというか・・・・。 次に来そうな文章や描写や登場人物を、なんとなく想像しながら読んでいると その予想からちょっとズレたところから次の文章がやってくるような・・・・・。 そして、そのズレというのは、 登場人物たちの年齢関係をよく頭に入れないまま読み進めてしまっていた点にも 原因がありました。 庄司が40代で、風見は庄司と付き合っていた当時高校生で、でもって翠は?? というわけで、場面が頭の中に描き切れずに、 次の展開を迎えては、前のページをめくりまくるという、 なんとも忙しない読書でした。 キャラクター達は、非常にユニークで、 面白い行動を重ねていたのに、 なんだか落ち着いて読めずに残念でした。 また、いつか読みなおします。
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