『にじんだ星をかぞえて』
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- 2016/02/21(Sun) -
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上原隆 『にじんだ星をかぞえて』(朝日文庫)、読了。
最近、深夜残業続きで、しんどい生活を送っています。 そんな中で読んだ上原隆は、そっと寄り添ってくれる温かさを感じられて、 少し心が軽くなりました。 著者の取材対象は、客観的に見ると悲しい生活や苦しい生活を送っている人々が多いのですが、 自ら取材対象となることに手を挙げた人の力強さと、 著者の寄り添いながらもどこか突き放したようなそっけない文章の組み合わせにより、 インタビューの中に、安心できる力強さを感じることが出来、 それが読後感の前向きさにつながってるように思います。 もし、これが、取材対象にベタベタによっかかって、 これでもかと悲しみと苦しみを書き立てて、共感を強要するような内容であったら、 とても、しんどくて読めないと思います。 上原隆のそっけない温かさが、今の自分にもちょうど良い感じで心地よかったです。
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『胸の中にて鳴る音あり』
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- 2015/01/07(Wed) -
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上原隆 『胸の中にて鳴る音あり』(文春文庫)、読了。
一般の人々の暮らしや、その中で人々は何を思い日々を過ごしているかを取材した21編。 このような取材の対象となる人は、 何かにぶつかっていたり、もがいていたり、ある種の諦めのようなものが感じられたり、 何とも斜陽な印象を受ける人たちが多いです。 そういう人たちを取材し、客観的に分析し、評価したものを読んでしまうと、 「なんて意志の弱い人たちなんだ・・・・」と、私は引いてしまうことが多いです。 超上から目線の物言いで申し訳ないですけど。 しかし、著者の本は、同じような境遇の人たちに取材をしながらも、 読んでいて嫌悪感を感じることが少ないです。 それは、きっと、著者が取材対象を分析の対象としてではなく、共感する対象として 見ようとしているからではないでしょうか。 寄り添おうとしているような姿勢を感じます。 本作に登場する人たちの中にも、甘い意識の人は多数居ると思います。 でも、世の中における自分の位置を何となく意識しているようなところがあると思います。 著者がインタビューを通して、そういうことを意識させているのかもしれませんが、 自分の弱さを自覚しているような印象を受けます。 それは、そこから抜け出すために必要なことに気づいているということになり、 読んでいて希望を感じることができます。 本作に登場した中の一人に、 目標を持つことが如何に大切かということを力説している人が居ました。 非常に説得力をもつ言葉だなと読んでいて感じました。 客観的に見ると、社会の中で上手くやっている人々、成功している側に入れている人々でも、 目標を持たずに、ただ流されるままに生きている人も多いのではないかと思います。 明日に向けての具体的な目標を持たずに、ただ今日の延長の明日があるだけの人々。 そして、その空しさに気づかない人々。 目標を持つこと、意志を持つことの大切さをこの本から学びました。
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『雨にぬれても』
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- 2012/02/19(Sun) -
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上原隆 『雨にぬれても』(幻冬舎アウトロー文庫)、読了。
幻冬舎のウェブマガジンに連載されたコラムをまとめたものです。 毎月、この内容のインタビューをやっていくというのは 相当大変だっただろうな・・・・と感じます。 分量が短いため、いつものドロッとした抉ってくるような印象は軽減されていますが、 その分、非常に読みやすくなってます。 困難に遭っても常に前向きな人もいれば、 自分の置かれた環境から逃げることばかりを考え、しかし何もしない人もいる。 自分の人生に意味づけをすることに、あまり関心が無い人もいる。 様々な人間を切り取って見せてくれます。 インタビューをしながら、 「こういう答えが聞きたいんじゃないんだな」と著者が考えているところが 挟まれているのが興味深かったです。 上原隆は、やっぱり良い!
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『喜びは悲しみのあとに』
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- 2010/04/03(Sat) -
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上原隆 『喜びは悲しみのあとに』(幻冬舎アウトロー文庫)、読了。
『友がみな我よりえらく見える日は』の続編です。 例えば不倫とか、離婚とか、 日常生活で躓いてしまった人のお話もあれば、 ちょっと変わった性癖の方のお話もあり、 バラエティーに富んだ内容でした。 躓き、後悔した日々を振り返る主人公たち。 その過程を追う著者と私たち読者。 重く苦しい道のりですが、 最後に明るい未来が見えてきた主人公がいたり、 明るい未来を信じて今を頑張っている主人公もいて、 前を向いて頑張ることを教えられたように思います。
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『雨の日と月曜日は』
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- 2009/02/07(Sat) -
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上原隆 『雨の日と月曜日は』(新潮文庫)、読了。
「私」について様々な切り口で語るエッセイ。 他人について赤裸々に描いた『友がみな我よりえらく見える日は』の 対極に置かれるような赤裸々な自分語り。 彼女の話や性的な話題まで書いてしまう。 本作の一遍で描かれた「模型『私』」。 このおもちゃ自体は創作なんでしょうけれど、 こんなふうに時間をかけて自分をプロットしていくと、 たぶん、小さく歪んだ自分というものが顕在化してきて どーにも嫌な気持ちになるんでしょうね。 自分を卑下するエッセイが時々挟まれるし、 あまり外に向かって目を向けた描写が少ないので トーンは全般的に暗めに感じますが、 夜に一人きりで読むには、なかなかおもしろい本でした。
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『友がみな我よりえらく見える日は』
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- 2007/03/08(Thu) -
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上原隆 『友がみな我よりえらく見える日は』(幻冬舎アウトロー文庫)、読了。
「読んで良かった!!」と思える作品。 作者は「日本のボブ・グリーン」と呼ばれているそうですが、 本作からはスタッズ・ターケルの『アメリカン・ドリーム』を連想しました。 市井の人の日常を切り取ったノンフィクション。 ただし、「普通の人」と呼ぶには少し抵抗を感じる登場人物たち。 「フツー」とされる状態からは、 片足程度踏み外している(いた)のかもしれません。 その状態に挫折感を味わう人、飄々と受け入れる人、 屈折する人、気づかない人・・・。 様々な生き方・考え方が出てきます。 インタビューもあれば、行動記録もあり、日記もある。 作者の存在を感じる章もあれば、全く意識できない章もある。 人は何を考え生きているのかを客観的に見せてくれる作品でした。 14章で終わってしまうことが残念です。 取材対象一人一人と向き合う作者の労力は大変なものと判りながら、 また、多産することで品質低下になる恐れが有るとも判りながら。 『アメリカン・ドリーム』で100人ものインタビューを読んだときも 「まだまだ読みたい」と思ったものです。 生活を営む人間の重みを感じます。
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