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『星をつける女』
- 2021/12/18(Sat) -
原宏一 『星をつける女』(角川文庫)、読了。

『床下仙人』を読んで、そのタイトルの奇抜さと内容から「マイルドな筒井康隆」という印象を
持ちましたが、最後に読んだ『ヤッさん』では、急に料理の世界の話になったため、
「あれ?作風転換?」と思いながら、それ以降、読んでいませんでした。

久々にブックオフで見つけたのは、『星をつける女』。
またまた作風変わったのか!?と思ったのですが、
主人公はレストランの格付けを行う覆面調査員ということで、
『ヤッさん』の流れの作品でした。

大手格付け会社を退職し、個人で独立。
機関投資家の要請を受けて、投資予定先のレストランや飲食チェーン店の
料理やサービス、さらには経営者の考え方なども厳しく評価し、星をつけていきます。

格付けの対象となるからには、登場してくる料理人たちは、みな、料理にこだわりをもち、
お客様に渾身の料理を食べてほしいと願っている人たち・・・・・かと思いきや、
初っ端の話は、いきなり食材偽装問題でした。
フレンチの店舗を3つ、4つと増やしていくうちに、
料理そのものよりも、利益を出すことが優先されてしまった料理人の話。

事業が拡大していく過程で、どこかで、料理人から経営者に変わる一線があるんでしょうね。
それは、もう、仕方がないことかと思います。
逆に、どんなに店が増えても経営者としての視点を持てないと、
その後の話に登場するラーメンチェーン店の創業者みたいな展開になっちゃいますしね。
経営者になることができない人は、無理に事業拡大しちゃダメなんでしょうね。

飲食業界の実態を垣間見ることができ、興味深く読めました。

一方で、この「星をつける女」自身は、フリーランスで活動し、
フレンチのディナーを覆面調査するときなど必要な時だけ
友人の劇団座長に同行してもらい夫婦を演じるなどしています。
ところが、話が進むにつれて、調査の結果、レストランの経営の実態を知った従業員が
辞めたりするような展開になり、フリーになった彼らにも調査の手伝いを
依頼するようにいなっていきます。
正直、こんなに他人を雇いまくって利益出るのかしら?と疑問に思うくらい。
自分の事業には楽天家だなと(苦笑)。

「未来への投資だ」と言ってしまえば、なんでもOKになってしまうかのような。
ま、みんな、そんなものなのかもね。




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『ヤッさん』
- 2015/04/18(Sat) -
原宏一 『ヤッさん』(双葉文庫)、読了。

料理コンサルタント的な立場で
有名店の調理場を出入りするホームレスのヤッさん・・・・・・。

うーん、話は面白いのですが、設定に無理があるかなぁ。

築地市場の人々の人情話とか、
韓国料理屋のオモニとの昔話とか、
蕎麦屋での修行話とか、
料理人の世界の裏側が覗けるのは興味深かったのですが、
なにぶん、ヤッさんの存在にリアリティを感じられないというか・・・・・。

唐突に登場してきて、しかもその存在が当たり前の前提になっているというか、
読者が「なるほど、こういう存在もありえるのかぁ」と納得する間もなく
物語が展開していってしまうので、なんだかヤッさんの存在に疑問を覚えたままになってしまいます。

ちょっと焦りすぎな印象を受けました。


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『姥捨てバス』
- 2010/03/22(Mon) -
原宏一 『姥捨てバス』(角川文庫)、読了。

老人問題をシニカルに扱った本作は、
「姥捨て」という激烈な表現と、それを笑い飛ばす元気なおばあちゃんたち、
でも、その心の底には不安を抱えていて・・・・という
虚構の中にリアリティを感じさせるものがありました。

それに加えて、旅行業界の免許制度を暴いてみたり、
副次的な要素も面白かったです。

主人公がウジウジ系だったので、
イマイチ乗り切れないところがありましたが、
相棒は旅行業界どっぷりのイケイケ君で、
そのバイタリティあふれる行動は、面白かったです。

思いのほか、真面目に語る件もあったりして、
予想よりも重い印象のお話でした。
特に、最後がね。

ちょっと、しんみりしちゃいました。


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『天下り酒場』
- 2009/12/09(Wed) -
原宏一 『天下り酒場』(祥伝社文庫)、読了。

『床下仙人』に比べると、
ちょっとパンチが弱いかなぁ・・・・という印象です。

設定は面白いのですが、
オチが読めてしまう作品が多かったです。

ま、でも、気楽に読めて面白かったです。


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『床下仙人』
- 2009/08/07(Fri) -
原宏一 『床下仙人』(祥伝社文庫)、読了。

作品のことも著者のこともよく知らないまま読み始めたのですが、
これは面白かったです。

マイルドな筒井康隆という印象を受けました。

何よりも、物語の設定が斬新です。
床下に男が住みついているなんて・・・・・。

その不思議な状況を、あんまり違和感をもたないままに
「こんな世界もあるのかな・・・」と読ませてしまうのは
この作家さんの力かなと思います。

他の作品も是非読んでみたいですね。


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