『Rのつく月には気をつけよう』
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- 2017/10/13(Fri) -
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石持浅海 『Rのつく月には気をつけよう』(祥伝社文庫)、読了。
石持作品の理屈っぽさ全開! 楽しい飲み会の席で、ここまで理屈で責められると 揚げ足取りされているような気分になるのでは?と思わずにはいられません(苦笑)。 大学時代からの親友3人。 社会人になってもコンスタントに集まり、おつまみとお酒を持ち寄り、 1人ゲストを招いて飲み会を開く。 その席でゲストのちょっとした一言から、思いもよらなかった真相が見えてくる・・・・。 安楽椅子探偵の変わり種という感じでしょうか。 話の内容だけで、もっと言ってしまえば気になる一言だけで、 本人も気づいていなかった真相を当ててしまう推理力は凄いの一言ですが、 そんなこと、ほじくり返さなくてもいいじゃない・・・・という話も多く、 やっぱり理屈っぽさが目についてしまいました。 お話ごとに、ちょっと変わったおつまみとお酒の話が出てくるのですが おつまみ情報は面白かったです。 銀杏がおねしょに効くとか喘息に効くとか知らなかったです。 チーズフォンデュも、そういう作り方なのかぁと初めて詳しく知りました。 自宅飲みの小ネタ収集には良い本かもしれません。
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『顔のない敵』
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- 2016/05/07(Sat) -
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石持浅海 『顔のない敵』(光文社文庫)、読了。
対人地雷を取り扱う世界が舞台で起きた殺人事件についての連作短編集。 冷静に考えると、このNGOの周りで殺人起き過ぎだろ!ということになりますが ま、そこはご愛敬。 本作では、地雷というのは、単なる小道具として出てくるのではなく、 「一度埋めたら半永久的に殺傷能力を発揮する」 「誰が埋めた地雷の被害に遭ったのか分からない、味方の地雷かもしれない」 「地雷は殺すことが目的ではなく、大怪我を負わせることが目的、怪我人搬送で兵力を使わせる」 「地雷を製造する会社が、地雷を除去する技術を提供し、二重に儲ける」 これらの戦争における狡猾な戦略を下敷きに、 目の前で起こる殺人事件にも、この戦略や思想を反映させていきます。 これにより、物語の世界観が非常に深いものになっていると思います。 端的に表現すると「社会派サスペンス」ということなのでしょうが、 それ以上に、「対人地雷とは何か」ということを日本の読者に理解させるという 大きな役割を担っているように感じました。 相変わらず登場人物は理屈っぽいですし、 殺人の動機もリアリティに欠けるところがあると思いますが、 本作に関しては、「対人地雷」にまつわる理解が深められたので 興味深く読むことができました。 なのに、最後に収録された著者の処女作は、対人地雷の話と無関係。 せっかくの連作短編集としての世界観が、最後に損なわれてしまいます。 ここに収録した理由は、「ここで入れておかないと日の目を見なさそうだから」という 非常に自分勝手な理由。 読後感を既存してまで処女作品を収録するのは、著者の思い上がりではないかと感じました。
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『君がいなくても平気』
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- 2015/08/29(Sat) -
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石持浅海 『君がいなくても平気』(光文社文庫)、読了。
やはり石持作品は理屈っぽい!(苦笑) でも、本作がそれなりに楽しめたのは、 恋人の殺人容疑を知ってしまった彼氏が主人公、 しかも、ラブラブではなく、とりあえず付き合っているという惰性感満載なカップル。 この微妙な人間関係が、なかなか面白い味付けになっています。 自分の恋人が犯人だと知っていながら、同僚の犯人探しに付き合う主人公。 あーでもない、こーでもないと言いながら、恋人を守るふりして自分の保身に走ります。 しかし、主人公の周りの人間たちは、意外とクールな大人振りを発揮し、 主人公の思うようには反応してくれません。 このあたりの駆け引き(というか主人公の独り相撲ですが)が、 頭でっかちな作風とマッチして面白かったです。 恋人が主人公と思わせておいて、実はどんでん返しがあるのではないかという期待もあったのですが なるほど、そういう展開で来るのかぁ。 ちょっと変化球でしたが、いつもの直球でくどい石持作品より こういう作品の方が好きかもしれません。
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『心臓と左手』
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- 2014/06/25(Wed) -
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石持浅海 『心臓と左手』(光文社文庫)、読了。
初めて読んだ石持作品に探偵役で登場した座間味くん。 その彼を安楽椅子探偵のポジションで活用した短編集です。 石持作品でちょっと苦手な面は、 登場人物たちの理屈っぽさにあるのですが、 短編集だと、それほど負担に感じずに読めますね。 特に、安楽椅子探偵モノだと登場人物も場面設定も限られてくるので、 非常に読みやすかったです。 座間味くんというキャラクターにも合っている気がしました。 また、座間味くんに謎を持ってくる大迫氏は警察の人間なのですが、 各短編の中で、「真犯人を逮捕」「過去の事件の再捜査を開始」といった 現実的な価値判断を下させずに、「真相はこうですよ、でも、もう過去の話じゃないですか」 といった曖昧な終わり方で各章を締めてしまうのも、 この作品には合っているように感じました。 座間味くんというのは、ちょっと斜に構えた視点で世間を見ているところがあり、 結構、割り切ったものの考えをするキャラクターとして描かれています。 座間味くん視点で、時事問題を扱ったエッセイを書いてみるのも 面白いかも・・・・と思ってしまいました。 非常に、キャラクター、構成、展開がしっくりとはまっている佳作だと思います。 最後に収録された「再会」という短編は、 『月の扉』の後日談という位置づけのお話ですが、 私的には、これは要らなかったかなと。 短編集としてのバランスを最後に崩してしまっているような印象を受けました。
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『セリヌンティウスの舟』
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- 2014/02/08(Sat) -
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石持浅海 『セリヌンティウスの舟』(光文社文庫)、読了。
読み終えての最初の感想。 うーん、こんな理屈っぽいダイバー仲間は要らないな(爆)。 石持作品らしい理屈っぽさ全開。それは私の苦手とするところなのですが(苦笑)。 石垣島で荒れた海上を2時間漂流するという事故に遭遇した6人組。 その時の経験から深い絆で結ばれ、信頼できるダイビング仲間となっていたが、 ある日、6人で部屋飲みをした日の夜、雑魚寝をする中で1人が自殺した・・・・・。 もうね、「みんながいる部屋で自殺しよう」と思いつく時点で ダイビング仲間としては、「超迷惑なヤツ」ですよ! 独り善がりな世界観に巻き込むんじゃない!と。 ところが、このお仲間たちは、彼女の遺志とでも言わんばかりに 自殺の真相を議論し始めるんですよね。 石持作品でいつも気になるのは、こういうところ。 「死」とか「生命」とかを、議論の「材料」にしてしまうところ。 感情を置き去りにして、みんな「理路整然と考えること」に熱中しちゃうんですよね。 これで友人なのか???と、いつも疑問を抱いてしまいます。 本作では、途中で1人が「こんな議論は無駄じゃないか」という意見を出しますが、 それも随分後になってから。なぜ最初にそう感じる人が出ないのか非常に疑問。 あと、本作に関していえば、 これだけの事故に遭いながら、事故の日の夜には「また皆で潜りに来よう!」と あっけらかんと決めている神経も、ダイバーとして理解できません。 さすがにここまでの遭難事故に遭ったことはないですが、 先日、グループの1人を海中で見失って、 他のボートに拾ってもらってたことが後で分かったときには、 自分たちは安全な側に居たとはいえ、ゾッとしましたよ。 そして陸に上がってから即座に反省会。ガイドが全員の行動を確認。 ロストしちゃった人が、まだ初心者レベルだったので、 特にバディと、アシスタントができるプロレベルのメンバーには、 いつ、どこで、どのようなポジション取りをして、どこまでその子を見ていたのか、 どこで見失ったのか、そりゃ一生懸命反省会をやりましたよ。みんな萎れながら。 もうひとつ。 石垣島まで来たら、海が荒れてても、勿体無いからダイビングする! これも半信半疑。 ダイバー側には、そう思う人が居るのは事実。特に始めたばかりの人は。 でも、現地のショップや船長の判断は、結構シビアです。 伊豆大島や八丈島で、「この海じゃぁ無理そうだな」と思いつつも、 念のため「潜れませんかねぇ?」と聞くと、「ダメ!」「無理!」の一言で終わりです。 その明快な言葉をもらって、こっちも納得。だって、目の前で海が荒れてるんですもの。 台風が来ていることが分かると、こちらが島に行く前から 「海が荒れて湾内しか潜れないかもしれませんけど、島に来ますか?」と ご丁寧にも確認の電話が来たりします。それでキャンセルしたこともあります。 ま、私は沖縄では潜ったことないので、過当競争の沖縄なら、 本作のような展開もありうるのかもしれませんが・・・。 てなわけで、不満があれこれ溜まる作品でした。
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『アイルランドの薔薇』
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- 2010/08/28(Sat) -
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石持浅海 『アイルランドの薔薇』(光文社文庫)、読了。
今まで読んだ石持作品の中で、一番面白かったです。 これまでクローズド・サークルものに対して、 どうしても、環境設定の不自然さが気になって仕方がなかったんです。 「嵐の山荘パターン」などが、ご都合主義に思えてしまうのです。 ただ、今回は、北アイルランド紛争という斬新なテーマを用意することで、 その不自然さを見事に克服し、 また、物語の背景に厚みを加えられているように思います。 武装組織が標的にされた事件なのに、 あっさりと外部犯行説の可能性が消されてしまったことは さすがにリアリティの無い展開だと思わずにはいられませんでしたが、 そこに目をつぶれば、良くできていたと思います。 アイルランド人の中で日本人が探偵役をやるという展開も、 普段、なかなか結びつきが無さそうな国同士の文化の接点が垣間見え、 異国文化の中での日本という視点も楽しめました。 文化という点でちょっと気になったのは、 アイルランド人のクラーク夫人が、お詫びの気持ちを伝えるために 「深々と頭を下げた」と描写されたシーン。 欧米人に、お辞儀の文化ってあるのかしら?と、ちょい疑問。 いずれにしろ、これが長編処女作とは、驚きです。
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『水の迷宮』
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- 2010/02/03(Wed) -
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石持浅海 『水の迷宮』(光文社文庫)、読了。
以前、『扉は閉ざされたまま』を読んだときにも感じたのですが、 どうも、この作家さんの描く「正義感」とか「情熱」とかが 歪んでいる気がしてならないんですよねー。 人の命と夢とを天秤にかけたとき、 私の天秤は人の命がガクンと沈むのですが、 この作家さんの作品では、夢のほうが重くなる、少なくとも天秤は揺れるんです。 この感覚が、どうも読んでてしっくりこないんです。 本作の結末の付け方もそうですが、そこまで至らなくても、 なぜ脅迫事件が発生した段階で水族館内にいるお客さんを避難させないのか。 例えば、館長個人がそう判断するのは、ありうると思いますよ。 個人の思いもあるだろうし、立場もあるだろうし。 ただ、あれだけの人数の人間がいて、 全員が「避難させる必要はない」と判断してしまうのは、現実的ではないと思います。 犯人から警察の関与はNGだとほのめかされていても、 お客を避難させることはNGではなかったのですから。 夢が大きすぎて視界不良を起こしている人間しか登場しないのでは、 ちょっと読んでいて疲れてしまいます。 あと、どうでもよいことですが、 イルカショーの餌にボラを丸ごと一匹というのは、大き過ぎやしませんかね? 野生では食べるんでしょうけれど、ショーで投げ与えるのには如何かと・・・・。
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『扉は閉ざされたまま』
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- 2008/12/04(Thu) -
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石持浅海 『扉は閉ざされたまま』(祥伝社文庫)、読了。
会話をベースとした犯人と探偵役の頭脳戦という設定が面白かったです。 また、動機の面も斬新で。 (それで友人を殺すのか?は別として) ただ、一点腑に落ちなかったのは、 なぜ「急病」という可能性が出てきた段階で 部屋に押し入ろうとしなかったのかということ。 いくら歴史のある高級な建物であったとしても、 人の生死がかかっているなら、 しかも、赤の他人ではなく大学時代をともにした仲間のことなのに。 この薄情さだけは納得できませんでした。 そして、探偵さんが最後に選ぼうとした結末も、薄情極まりない。 この最後の行動で、探偵さんの魅力がマイナスになっちゃいました。 筋は面白いけど、登場人物たちに共感できないという作品でした。
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