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『訪問者』
- 2022/07/16(Sat) -
恩田陸 『訪問者』(祥伝社文庫)、読了。

特に期待もせず、ただ積読の山の中から手にした一冊だったのですが、
なんだか冒頭からぐーっと引き込まれて、没頭できた作品でした。

とある山奥の豪邸を訪れた雑誌記者とカメラマン。
取材の目的は、この豪邸にかつて住んでいた女主人が支援をしていた
映画監督が事故死したため、その関係やエピソードを女主人の兄弟たちや家政婦に
インタビューするというもの。
仕事をリタイアし、この豪邸で暇な時間を過ごしていた兄弟たちは
嬉々として取材を受けるが、映画監督の事故死や、女主人の事故死の話になり
次第に疑心暗鬼になっていく・・・・・。

雑誌記者とカメラマンがこの豪邸にやってきて、老兄弟と向き合うシーンから始まるのですが、
なにやら胸に計画がありそうな記者たちの思惑と、こちらもなにか隠し持ってそうな老人たちの
笑顔で接しながらもお互い警戒しているような緊張感が、たまらなくワクワクします。
これから何が起きるんだろう、どんな騙し合いが展開されるんだろうという感じです。

そこに、不思議な感性を持った10歳の少女が絡んできて、
さらに、その母親もやってきて、さらに少女が窓の外に「大おばちゃま」が居ると言い出す。
大おばちゃまは、豪邸近くの湖で事故死しているはずなのに・・・・・
そんなホラーな要素と、豪雨という天候、さらには思わぬ訪問者も追加され、
否が応でも緊張感が高まっていきます。

こんな山奥の場所に、豪雨の夜に次から次に人が集まってくるという演出過多な展開は
普段だとあんまり好みではないのですが、とにかく登場人物たちの疑心暗鬼な中で
相手の正体を暴こうと会話の応酬をしていく様子が面白くて、
読む手を止められませんでした。

最後、コトの真相は、ちょっと詰め込みすぎじゃないかなと思ってしまいましたが、
まぁ、私の中ではあんまりそこは主題ではなかったので、
ま、とりあえず話がきちんと閉じられてよかったかな・・・・という程度でした。
最後の最後まで、緊張感のある会話劇で、面白かったです。




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『月の裏側』
- 2022/02/25(Fri) -
恩田陸 『月の裏側』(幻冬舎文庫)、読了。

九州の水郷都市・箭納倉。
そこの出身で、大学教授の職をリタイアした後に戻ってきた協一郎は、
この町で直近1年間に起きた3件の老女失踪事件に興味を持ち、
かつての教え子で、現在はレコード会社でプロデューサーをしている多聞を呼び寄せ、
真相解明に挑みます。

この多聞という人物、どこかで読んだ気がするなぁ・・・・・と思ってたら、
『不連続の世界』という作品で会ってました
『月の裏側』 → 『不連続の世界』の順で読むべきだったようでした(苦笑)。

さてさて、失踪事件ですが、協一郎と多聞に加え、
協一郎の娘と地元新聞記者の4人でチームを組むことに。

・ 水郷の堀に面した家で失踪事件が起きている
・ 失踪から1週間ほどで戻ってくるが、その1週間の記憶がない
・ 協一郎の飼い猫が、精巧な粘土細工のような人間の指や耳を咥えて帰ってくる
・ 多聞が協一郎の家に帰ってきたら、まるで家の中が濡れているように一瞬見えた

いろんな断片情報から謎解きがスタートしますが、
最初に気になったのは、失踪した人が記憶を無くして戻ってきたら、
周囲の人はそれほど深く突っ込まずに受け入れて日常を取り戻しているということです。
誰もその体験を不思議に思ってしつこく突っ込んだりしないのかしら?という疑問が。

現実社会には「UFOに連れ去られて戻ってきたけど、その間の記憶がない」とか言っている人は
確かに存在してますが、そういう人に深く突っ込まないのは、
周囲が「アブナイ人」と認識して距離を取ってるからかなと思ってました。

でも、本作に出てくる失踪者は、まともな言動の人だったり、反対に高齢で歩行などに支障があり
物理的に失踪することが困難な状況にあるのに、周囲の人があんまり疑問を大きくしていないことが
どうにも気になってしまいました。

その時点で、この箭納倉という町全体が、なんだか通常じゃない感覚を受けました。
そして、物語の中で、段々と失踪事件に繋がりそうな不気味な現象が一つ一つ
明らかになってくるのですが、それが全部箭納倉で起きていることなので、
堀の中にホラーなものが蠢いているというよりも、箭納倉という空間が丸ごと
ホラー的な存在なのではないだろうかと思いながら読み進めていました。

そうすると、町の人が失踪事件に無関心なのも、
失踪事件以外に起きる不思議現象に居合わせてもパニックにならないのも
なんだか腑に落ちました。
読み方としては、ちょっと歪んでいるというか、著者の意図とは違うような気がしますが、
私にとっては、人間を飲み込んでいく町という設定の方がホラー感が強かったです。

ドキドキしながら一気読みでした。
登場人物たちの行動が、ところどころ「無防備だな」とか「不合理だな」と思うところがあっても
ホラーな町のせいだと思ってしまったら、全部、飲み込めました。
それ以上に、ホラーな存在が次にどんな行動に出てくるのかワクワクして読めたので
怖いけど楽しめる作品でした。

ところで、この箭納倉という都市は、柳川がモデルということですが、
柳川に実際に住んでいる方たちは、この作品を読んで、気持ち悪く思ったり、
はたまた我が町がこんな風に描かれて不愉快に思ったりしないのかしら?と
変なところが心配になりました。

遠野などは、昔から民話の町として知られているので
住民の方たちも、フィクションでホラー的に描かれても免疫が付いていそうですが、
柳川にも水郷に関するホラーな話はあるんでしょうかね。




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『私の家では何も起こらない』
- 2021/12/09(Thu) -
恩田陸 『私の家では何も起こらない』(角川文庫)、読了。

とある古い洋館に住む女性作家。
周囲からは「幽霊屋敷」と呼ばれる曰くつきの建物で、単に古い、ボロいという理由ではなく、
本当に幽霊が出るという様々な噂が飛び交うため、時々、幽霊マニアが話を聞きに立ち寄ります。
そんな洋館を巡る連作短編集。

最初の数話は、かなり幻想的な感じの描写が続くので、
現実味がどうにも手につかず、「私の苦手なジャンルだな・・・・」と
かなり引き気味に読んでいました。

ところが、中盤あたりから、段々と洋館の幽霊話の真相に近づいていくような感触があり、
しかも登場人物たちもその存在感に重みが増してきているような感じで
ぐいぐい引き寄せられました。

これで、表紙裏のあらすじに書かれている「驚愕のラスト」とは
一体どんな展開になるのだろう?と、終盤、かなりワクワクして読み進めたのですが、
え・・・・・・。

私としては、とても消化不良なラストでした。
そんな一般論化されても・・・・・という感じで。

うーん、私の読み方が悪いのかなぁ。




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『Q&A』
- 2021/01/17(Sun) -
恩田陸 『Q&A』(幻冬舎文庫)、読了。

昨日、ネットで注文していたマッサージチェアが届きました。
試運転のお供に本作を手に取ったのですが、
思いのほかマッサージが気持ちよく、立ち上がれません。
連続運転させている間に、一気読みです(苦笑)。
(マッサージチェアの連続使用って、体に悪いからダメですよね・・・・)

タイトル通りQ&A形式で、とある組織の人達が、大惨事となった事件の関係者に質問を行いう様子を
淡々と会話文のみで描写していきます。

この作品構造の時点で、「『藪の中』スタイルかも?」と、真相がわからないエンディングになる
可能性についてはある程度覚悟していました。
むしろ、論理破綻を起こさずに、様々な可能性を提示することができるのかというところに
興味がありました。

問題の大惨事とは、郊外のショッピングモールで、中にいた買い物客数千人がパニックになり
外に逃げようとする人々が押し合った結果、圧死や転落死など数十人が亡くなり、
100名以上が怪我をするという事態に。
しかし、パニックの原因になった最初のきっかけが何なのか、事故から数カ月たっても
未だに解明されないという不思議な状況です。

前半、Q&Aは、とある組織が関係者に質問するという体裁になっており、
事件の真相以外にも「この組織は何なんだろう?」というサブの謎もあって、
ワクワクしながら読む手を止められませんでした。

しかし、中盤から、この組織が登場しなくなり、「あれれ?何だったの?」と肩透かし。
後半は、ただの2人の会話として進んでいくので、ちょっと中だるみしましたが、
終盤になって、遺族中心に結成された宗教団体の話がメインになてくるにつれて、
「あ、前半の組織は公安的な組織で、成長しすぎた宗教団体の監視的調査をしてるのかも」と
思うようになりました。ま、あくまで私の想像ですけど。

組織の方の真相は、明確な答えがないにしても、私なりの想像ができたので
そこは満足できたのですが、事件の真相の方は、ちょっと不満でした。
ナイフの老夫婦、液体を撒いた男、血の付いたぬいぐるみを持った少女、
この3つの原因かも!?と登場してきた話の扱いが、どうにもアンバランスで、
他の2つが放置されたまま少女の話に収斂していくのが、私の好みではありませんでした。

そして、最後の章で、まさにその少女のQ&Aになりますが、
正直、私には、この章は不要だったと感じられました。
一気につまらない作品になってしまったなと。
大惨事の謎について空想を広げていた話が、一気に人間臭い話に矮小化されてしまった印象です。

前半と終盤が面白かっただけに、この結末は残念でした。




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『不連続の世界』
- 2020/11/22(Sun) -
恩田陸 『不連続の世界』(幻冬舎文庫)、読了。

恩田作品にしては普通の厚みの本だったので
手軽に読めそうかなと買ってみたのですが、『月の裏側』という作品の続編だそうで
主人公の塚崎多聞という人物を軸に、不思議な話が展開していきます。

この塚崎多聞という人物の紹介が、音楽プロデューサーとしか分からないので、
第一話はそもそも内容が理解できませんでした。
「こもりおとこ」と聞いて、「木守」って出てきます??
私は「子守おとこ」しか浮かばないと思います。
強いて言うなら「小森さん」。
私の語彙力の問題かもしれませんが。

「なんで『木守』???」とモヤモヤしているうえに、
田代という男の掴みどころのなさのせいで、全然物語が頭に入ってきませんでした(苦笑)。

うわー、こんな調子で最後まで行ったら、途中で脱落しちゃうな・・・・と懸念したのですが、
2話目の「悪魔を憐れむ歌」は、ホラーチックなのですが、あくまで現実世界に立脚している印象で
しっかり読めました。そして楽しめました。

その歌を聞いたら死んでしまう・・・・・
その歌はラジオで2度流された・・・・・
その歌がなぜラジオで流れたのかは詳細不明・・・・・

いやいや、ラジオで流れたのに死んだ人ほとんどいないじゃん!って思っちゃいましたが
まぁでも、蔵での対話における沈黙の行間は怖かったです。

その後、多聞が、全国津々浦々に行きながら、当地のホラーテイストの謎の真相に挑む・・・・
そういう風に要約してしまうと、明快な謎ときのように思えてしまいますが、
謎解きそのものよりも謎が醸し出す空気感を楽しむ作品かと思います。
そのアンニュイな感じが、私はあんまり好みじゃないです(苦笑)。
この作品がどうこうというよりも、そういうジャンルの作品が好みじゃないということです。

『月の裏側』を先に読んでいたら、もっと楽しめたのかなぁ・・・・。
恩田作品は、ときどきこうやって置いてきぼり感を覚えてしまうときがあります。




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『木曜組曲』
- 2020/10/28(Wed) -
恩田陸 『木曜組曲』(徳間文庫)、読了。

耽美小説の巨匠が亡くなって4年。
毎年、その命日にあたる週の木曜日に、巨匠の邸宅に集まる女たち。
フリーライター、推理小説家、純文学作家、編集者、出版経営者、
5人のうち4人は巨匠の肉親。1人は担当編集者。
亡くなった日に居合わせたのもこの5人。
追悼のために毎年集まるものの、今年はおかしなメッセージが届いたことで
l巨匠の死の真相究明が始まる・・・・・。

洋館に女5人が集まって推理と詮索を繰り広げるという設定なので、
舞台を見ているような感覚でした。

それぞれに腹に抱えた思惑があり、コソコソと動いたりするために
お互いが視線を飛ばし合うような緊張感があります。

一方で、ほぼ肉親の集まりということもあってか、
誰かの一言でふと緊張感が緩んでいつもの和やかな空気が戻ってくるときもあり、
その緊張と緩和が不思議な小説でした。
普通の推理ものだと、ずーっと犯人捜しの緊張感があるので、
このふと気が抜ける瞬間が違和感なく描かれているのが何だか新鮮でした。

正直、5人が5人とも、企みを抱えて変な行動をとるので、
リアリティという点では違和感ありありなのですが、
まぁ、耽美派+洋館+会話劇という組み合わせが私にはもうファンタジーなので、
リアリティのなさは、そこまで気になりませんでした。

コトの真相に辿り着きますが、分かってしまえば、そんなことか・・・・・という感じで、
まあ、でも、5人の物語における各立ち位置を思うと、
そういう落とし方が一番収まりが良いのかなという気もしました。

最後、それぞれがこの物語を作品化するというところで話が終わったので、
続編を意識してるのかな?




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『常野物語 光の帝国』
- 2020/04/10(Fri) -
恩田陸 『常野物語 光の帝国』(集英社文庫)、読了。

巻末の解説は、小説のタイトルの話から始まりました。
「小説のタイトルは、はやり歌における十五秒CMで流すサビの部分のようなもの」、その通り。
納得して読み進んだら、解説者は「光の帝国」というタイトルから、
本作を壮大な宇宙戦争モノのように思い込んでいたとのこと。
私は、「常野物語」というタイトルから、「遠野物語」を連想し、ちょっと怖い民話を想像してました。
宇宙戦争なんて全くの想定外。

表紙のタイトルの配置からすると、「光の帝国」の方が大きく描かれているので、
当然、そちらが主題なのだと思いますが、やっぱり人間の興味関心によって、
小さい文字の方が印象に大きく寄与することってあるんですねぇ・・・・。

というわけで、解説の感想から書き始めてしまいましたが、
本作は、東北地方?のどこかに存在していた特殊能力を持つ一族の話を連作短編にしたもの。

前半は、とても面白く読みました。
最初の話に登場する、読んだものを何でも記憶することができる能力を持つ一家。
この一家を軸に話が進むのかと思ったら、次に登場するのは同じ一族だが
将来起こることが映像で見えてしまうという別の能力を持つ娘の話。

次々と特殊能力を持つ一族が登場し、
そんな特殊能力のことなど知らない一般人との日常生活内での交わりを描いていき
興味深かったです。

ただ、中盤にある表題作「光の帝国」で、一族が背負った歴史が語られます。
この話が、本作の背骨になるものなのですが、どうも私は面白いと思えませんでした。
この背骨の後の話は、前半の話たちが、いかに繋がったものなのかを見せていく話になりますが、
多分、その構成があまり好きではなかったのだと思います。

何となく思うのは、私は、この常野の一族に、「離散」「バラバラ」「離れていく」という方向性を
期待していたんだと思います。一族で集まっていた時代を経て、一般人の住む社会の中に
それぞれで紛れ込んでいく方向性を読みたかったのかなと。
それが前半でした。

ばらばらになりながらも、何とか自分の生活と立ち位置を作り上げた常野一族に対して、
後半で、これでもかというぐらい繋がりを強調されてしまうと、
なんと可哀そうな一族なんだろうという哀れみが湧き出てしまって、
こんな物語にしなくても・・・・と共感よりも拒否感が生まれてしまいました。

私は、常野の地を離れても、それぞれが自分の住むべき新たな場所になれる努力をしている
その努力を肯定する作品が読みたかったのだろうなと思います。

結果、後半がちょっと読み飛ばしになってしまいました。




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『ブラザー・サン シスター・ムーン』
- 2019/01/29(Tue) -
恩田陸 『ブラザー・サン シスター・ムーン』(河出文庫)、読了。

タイトルは映画から取ったものだそうで。
私的には、もろチャゲアス!って感じです(笑)。
両方とも名盤ですね~。

本作は、高校の同級生で同じ大学(W大学)に進学した
3人の男女の大学時代を、成人したそれぞれの視点から振り返ったもの。

特に何という出来事が起こるわけではないのですが、
とにかく、大学時代の大学生らしい日々というものが
非常に丁寧に描かれていると思い、自分の大学時代と重ねて読んでいました。

私の中では、高校生までの同級生と、大学の同級生は全く違った存在です。
大学生の同じサークルの友人たちは、まさに「一緒に生きてた!」って感じの
深いつながりを覚えます。
大学に泊まり込んでサークル活動をしていたので、本当に深い深い関係だと思ってます。
久々に会っても、すぐ昔のように会話ができる間柄で、とても安心します。

そんな関係が構築できた大学時代の4年間というのは、一生の宝物です。
父親から「大学で得た友人関係は一生ものだから大学選びは真剣にやりなさい」と言われましたが
本当にその通りだと思います。

本作では特に、恩田陸さん自身の大学生時代の思い出がふんだんに盛り込まれているようで、
日記を読むようなドキドキ感がありました。

そして、恩田さん自身も、自分の大学時代について
私と同じような感覚で捉えているんだなと分かり、
すごく嬉しい気持ちで読んでいました。

客観的な目で見ると、大したことが起きていない4年間だけど、
当人にしてみたら、人生を形成する大きなものを手に入れる4年間。
そんな事実をしっかりと認識できた読書となりました。






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『「恐怖の報酬」日記』
- 2018/10/07(Sun) -
恩田陸 『「恐怖の報酬」日記』(講談社文庫)、読了。

恩田さんのエッセイはお初です。
小説家のエッセイ作品に手を出す時は結構慎重に検討するのですが、
本作は「飛行機嫌い!」「ビール大好き!」っていうテーマだったみたいなので即買い(笑)。
だって、私もそうだから。

エッセイは、なぜか新国立劇場のビュッフェからスタートします。
この時点で、すでに現実逃避気味(笑)。
数日後に迫った飛行機搭乗(人生2回目!海外は初!!)があまりの恐怖で、
どれだけ自分の日常に支障を来しているかということから始まります。

私も、恩田さんほどではないですが、飛行機は嫌いです。
理由も同じで、鉄が空に浮いてる、閉じ込められてる、トラブル時に自力ではどうにもならない、
というところに集約されていきます。
船旅も、太平洋の真ん中でトラブルになったら全員死ぬんでしょうけど、
「もしかすると無人島にたどりついて生き延びられるかも・・・」みたいな夢を見られるので
まだ落ち着いていられます。
統計的には最も安全な乗り物なのかもしれませんが、
何かトラブルが起きたら死の恐怖に直面して逃げられないというシチュエーションが苦手です。

搭乗日が近づくと憂鬱になり、機内で読む本を準備するときに「読む気になるのか?」と不安になり、
空港のカウンターに行くと「職員の対応が機械的だ」と思ってしまう
この心情、とても共感できます。

でも、恩田さんは、「怖い怖い飛行機に乗るんだぴょん」って、
躁的に怖がっているのが凄いなと。
だから、読んでて面白いんですけど。ぴょんって(笑)。

そして、やっとの思いで初海外に行ったら、
もちろん取材として観光地などに寄っていますが、
とにかくビールの話が多い!
ビール好きがイギリスに行ったら、そうなりますわなぁ。
さらにアイルランドにも行っちゃったら、そうなりますわなぁ。

あぁ、海外で現地のビール飲みたい!
仕事で何か所か海外に行きましたが、
それぞれの旅の一番の思い出は、MLB球場のスタンドで飲んだビールとか、
なぜかオーストラリアで韓国焼肉を食べながら飲んだビールとか、
メキシコ料理屋で出会ったテカテを、帰国後の打ち上げでもまた飲んだとか、
一緒に出張した人たちと飲んだ思い出ばかり(苦笑)。
でも、ビールって、みんなでワイワイ飲むと美味しいんですよね~。

恩田さん、小説作品では、鬱々とした雰囲気を感じることが多いのですが、
エッセイでは開けっぴろげで、面白い人ですね!
エッセイ作品も気を付けていきたいと思います。




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『猫と針』
- 2016/09/17(Sat) -
恩田陸 『猫と針』(新潮文庫)、読了。

恩田作品にしては薄い本だなぁ・・・・
と思って買って来たら、戯曲でした。

5人の登場人物による密室劇+独白。

90分の芝居だったということで、
同じぐらいの時間で読み終えることができました。

不安を煽るような伏線があれこれ張られているのですが、
いまいち大きな展開がないまま、
シンプルな形で回収されていく感じで、ちょっと消化不良。

第一場の舞台設定と展開に、
「こりゃ、ドロドロとした大変なことが起こりそうだ!」と非常に期待したのですが、
不発のまま終わってしまいました。

劇そのものを楽しむというよりは、
戯曲の前後に挿入された著者による戯曲制作日記を楽しむような作りになっており、
小説家としては、ちょっと逃げているような印象も受けました。

芝居作りの舞台裏を知りたいという方には、
非常に面白い作品なのではないでしょうか。


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