『猫と針』
- 2016/09/17(Sat) -
恩田陸 『猫と針』(新潮文庫)、読了。

恩田作品にしては薄い本だなぁ・・・・
と思って買って来たら、戯曲でした。

5人の登場人物による密室劇+独白。

90分の芝居だったということで、
同じぐらいの時間で読み終えることができました。

不安を煽るような伏線があれこれ張られているのですが、
いまいち大きな展開がないまま、
シンプルな形で回収されていく感じで、ちょっと消化不良。

第一場の舞台設定と展開に、
「こりゃ、ドロドロとした大変なことが起こりそうだ!」と非常に期待したのですが、
不発のまま終わってしまいました。

劇そのものを楽しむというよりは、
戯曲の前後に挿入された著者による戯曲制作日記を楽しむような作りになっており、
小説家としては、ちょっと逃げているような印象も受けました。

芝居作りの舞台裏を知りたいという方には、
非常に面白い作品なのではないでしょうか。


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恩田 陸

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『ユージニア』
- 2016/05/19(Thu) -
恩田陸 『ユージニア』(角川文庫)、読了。

恩田作品の禍々しさが存分に味わえる一冊です。

とある地方都市の裕福な医者一家を襲った毒入りジュース事件。
一家の大半と、遊びに来ていた近所の人たち十数人が死亡するという凄惨な事件に。
犯人を追う手掛かりは少なく数年が過ぎたとき、1人の自殺した青年が
実行犯だと分かったものの、詳細は不明のまま。
さらに数年が過ぎたとき、事件当時に生き残った女の子が、
事件の真相を追うべく関係者に聞き取り調査を始める・・・・・。

こういう要約をしてしまうと、王道の推理モノのように見えてしまいますが、
聞き取り調査をする目的が、単純な「犯人を知りたい」という動機ではなく、
特定の者に読ませるためだけに、多大な労力を割くという行為。
そして、インタビューの相手によって、まったく人格が変わってしまったかのような
聞き取り手腕を見せるという人物像に、なんだか「憑き物」のような怖さを覚えます。

そして、狙われた医者一家で無傷のまま生き残った少女は、
目が見えないというハンデを負いながら、それを感じさせない立ち振る舞いを身に付けており、
しかも、ハンデを補うべく他の器官が発達したのか、鋭い洞察力を発揮します。
まるで全て見えているかのように、お見通しであるかのように。

私は、ハンデを背負いながらもしっかりと生きている人に畏怖を感じてしまいます。
並々ならぬ努力をしているということへの尊敬の念がある一方で、
ハンデを補うべく他の能力が抜きんでているということへの恐れに近い驚きです。
ややもすると差別的な発言かもしれませんが、感覚的に畏怖を覚えてしまいます。

この2人の人物が醸し出す怖さに呼応するかのように、
周辺の登場人物たちも、斜に構えた見方をするというか、
どこか捻くれているというか、なんだか不気味です。

ことの真相は、はっきりとは書かれていないのですが、
この不気味さの前には、あまり真相そのものは気にならなくなってしまいました。
人間って、なんて不気味なんだろうかと思えただけで、
読書としては満足してしまった感じです。


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恩田 陸

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『木洩れ日に泳ぐ魚』
- 2014/09/26(Fri) -
恩田陸 『木洩れ日に泳ぐ魚』(文春文庫)、読了。

久々の恩田作品。

同棲を解消する最後の夜、
1年前の旅行先でのガイドの転落事故の真相を知ろうと、
男と女は、お互いを相手に言葉をつむぐ・・・・・相手が殺人犯なのだろうと思いながら。

2人の会話を軸に、過去の場面に飛びつ戻りつ、
ガイドの転落事故の前後に起きた出来事を記憶の奥から掘り返していきます。

心理戦も伴う会話の駆け引きと、
新たな記憶が蘇ることで1つ1つ固められていく当時の様子。
だんだんと形になっていくプロセスを読んでいくのは面白かったです。

ところどころ、「その展開推理は強引だろう!」と思うところがあり、
会話の相手もすんなり受け入れていくことが多かったので、
思考に思考を重ねて真相を突き止めた!というスッキリ感はイマイチでしたが、
会話劇として楽しめました。

この2人の関係性も異様なところがあり、
会話劇というか、心理描写の濃い味付けになっていたと思います。


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『ネバーランド』
- 2013/10/23(Wed) -
恩田陸 『ネバーランド』(集英社文庫)、読了。

恩田作品は、やっぱり青春モノですね!
しかも、「田舎の進学校」という設定が好きです。
『球形の季節』『六番目の小夜子』などがこの系列。
本作は男子校が舞台ということで、これまた違った視点での学園生活が垣間見れました。

冬休みに学園寮に残った3人の生徒と、
近隣に住む友人1人の4人が過ごす冬の7日間を描いています。

1日目~2日目にかけて、ちょっとしたミステリアスな出来事が起こりますが、
その謎解きが本題なのではなく、それを切っ掛けに展開される4人それぞれの告白、
そして、告白を受けて4人が感じる思い、行動に重ねた気持ち、それらを描きます。

なんともキラキラした青春なんですよね~。
確かに、キレイ過ぎるのかもしれませんが、青春にはキレイなものを求めたいですよね。
せめて本の中では・・・。

そして、ここまでピュアでキレイな世界ではなかったですが、
それでも自分の学生生活を、多少美化しながら振り返るのも、
30代も半ばになったら許されるお遊びでしょう(笑)。
私が同級生たちと「キラキラしてた」のは、中学校の頃でした。
幼稚園からずーっと持ち上がりの長い友達と、
新しく中学校から入ってくる受験組の秀才たちとの刺激的な関係。
実際に楽しかったし、今もFBなどで繋がっていられるのは、深い思い出のおかげかな。

さて本作では、4人とも、相当に重たい過去や家庭環境を背負ってますが、
何を重いと感じるか、何を負担に感じるかは、その人の感覚次第ですからねぇ。
そういう意味では、みな、重いものを背負っているのでしょうね。
他人がどう評価しようとも、本人にとっては譲れない出来事というものがあるもので。

読みながら、また読後にも、いろいろと思いを巡らすことができる
よい読書でした。


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『ドミノ』
- 2013/04/13(Sat) -
恩田陸 『ドミノ』(角川文庫)、読了。

「コメディ」と銘打った恩田作品を読むのは初めてです。
しかも内容がドタバタ系だったので、
これまでの著者の印象を覆す、「こんな作品も書くんだぁ」というものでした。

コメディ要素を引き立てるためか、
第三者的な視点で客観的な文章で綴られていくのですが、
なぜか清水節が頭に浮かんできました。
これもまた、意外な印象です。

肝心のストーリーの方は、
前半は、28人の登場人物たちが段々と接近していくところに
ワクワク感を覚えたのですが、
なんだか後半の盛り上がりに欠けるような気がして、イマイチ乗り切れず。

場面としては、籠城事件や大捕り物が巻き起こるのですが、
それぞれの事件に関わる人間が意外と少ないというか、
結局、1点に全てが集中する瞬間がなく、
なんとなくすれ違ってしまった印象で終わってしまいました。

うーん、残念。

映画作品だと、画面の中で一気に語ることができるので、
結構、こういう構成で成功しているものも多いと思うのですが、
小説だと文章で一つ一つ描かなければいけないという限界があるのですかねぇ。


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『中庭の出来事』
- 2013/02/24(Sun) -
恩田陸 『中庭の出来事』(新潮文庫)、読了。

さてさて、最近勢いづいている恩田作品を読もう!ですが、
今回は舞台の脚本が軸となっている作品です。

芝居のシーン、オーディションのシーン、そして現実世界と、
様々な世界が入れ代わり立ち代わり描かれるのですが、
どこまでが現実で、どこからが作り物の世界なのか、
段々と分からなくなってくる不思議な感覚が味わえます。

読んでいて、頭を使うことを求められるので、大変に疲れる読書なのですが、
でも、ちゃんと読めば、それぞれのシーンのつながりなどが段々と分かってくるので、
知的興奮を刺激される感覚が続きます。
一気に読むと、突破感や征服感を得られると思います。
この構成力は凄いです。

しかも、作中劇の『告白』という芝居が、これまた面白いんです。
芝居として上演されているのを見たくなります。
実力派の女優3人が火花を散らす、素晴らしい芝居になる気がします。

ちょっと、「男」が「女優1、2、3」を相手に推理を展開し
追い詰めていく場面は、なんだかモヤモヤ感が晴れなかったのですが・・・。
やや、情緒的な攻め方のような気がして。
ま、科学的な推理モノに毒されてるのかもしれませんが(苦笑)。

いずれにしろ、恩田作品の手の込んだ面白さが堪能できる作品でした。

個人的には、「中庭における表現」というものに
強いイメージを抱いてしまいます(笑)。
「中庭は特別な表現のステージ」というのは、芸術家に共通する認識なんですかね?


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『朝日のようにさわやかに』
- 2013/02/06(Wed) -
恩田陸 『朝日のようにさわやかに』(新潮文庫)、読了。

年末に行った古本屋に恩田作品がたくさん並んでいたせいで、
積読の恩田作品が多くなり、最近、結構な頻度で読んでます(苦笑)。

本作は短編集でした。
かなり作品の幅が広くて、最初は、まとまりの無さが気になっちゃいました。
でも、全体を通すと、いろんな恩田作品が楽しめて、お得だったかのかな。

ホラー系の作品とか、結構、新鮮な感じで面白かったです。
「淋しいお城」とか、子供に辛辣ですねぇ。

あと、同窓生が久々に集まる「楽園を追われて」などは、
最近、面白さが分かってきたような気がします。
大学卒業10年を超えると、友達の安心感みたいなものが一層感じられて、
深く納得してしまう自分が居ます。
というか、こういう飲み会がしたいという、切実な感想なのかも。

あと、ショートショートについては、
最後の一行の効果があんまり伝わってこなくて残念でした(苦笑)。
狙いは分かるのですが・・・。

他の長編小説と繋がっていそうな作品もありましたが、
ま、そこまで恩田作品に没頭しているわけでもないので、
個々の作品単位でみて、全体としては楽しめたかな・・・という感想です。



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『三月は深き紅の淵を』
- 2013/01/20(Sun) -
恩田陸 『三月は深き紅の淵を』(講談社文庫)、読了。

『三月は深き紅の淵を』というタイトルの本を巡る4つの話。
しかし、4つの話には関連がなく、また4つの話で語られる
『三月は深き紅の淵を』は、ぞれぞれ全く違った作品になっています。
非常に不思議な仕掛けの物語。

でも、第一章で語られる第一章における『三月は深き紅の淵を』の4つの章の内容と、
この作品自体が持つ4つの章が、直接的には関連はないのですが、
なんとなく同じような雰囲気を感じ取りました。
不思議なリンク構造。

1つ1つの物語でいうと、
第1章は、舞台となる高輪の大豪邸に集う読書マニア4人のキャラは面白かったのですが、
イマイチそれを活かしきれないまま話が尻すぼみに終わってしまった印象。
でも、第2章に読み進めると、第1章がこんな内容だったことをなんとなく納得。

第1章とのつながりがどうなっているのか気になっているのに、
それに応えてくれない著者(笑)。
そのつれない感じが、続いての第3章へと誘ってくれます。
第2章は、家族の血(血脈)という問題を取り上げてますが、
気持ち悪い・・・でも、読みたい・・・・。
この章も主人公たちが魅力的で読み進められました。
ちょっと推理の部分は、視野が狭くて決めつけ過ぎな気がしましたが(苦笑)。

第3章では、異母姉妹の女子高校生という、これまた不気味な関係を描きます。
人間の持つ表と裏、怖いです。
表が美しい人ほど、裏側が怖いです。

そして、最後の第4章。
正直、この世界観は、私の苦手な恩田ワールドでした。
これを楽しめるかどうかが、大ファンになるか、一読者で終わるかの分かれ目な気がします。
私はやっぱり後者でした。
でも、読み進める手を止められないという点では、最後までエネルギーをもつ作品でした。


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『MAZE』
- 2012/12/16(Sun) -
恩田陸 『MAZE』(双葉文庫)、読了。

アジアの西方に立つという白い構造物。
そこに足を踏み入れた者は、一瞬にしてこの世から消滅してしまう。
なぜなのか・・・。

冒頭、この消滅のエピソードがいくつか語られますが、
状況を把握しにくく、相互関係も不明で、最初の40ページが苦痛でした。
どうも、この手の、思わせぶりな恩田演出が苦手です(苦笑)。

現在の時間に戻り、主人公たちが動き出してからは読みやすくなったので、
面白く読めました。

ただ、終盤の流れに関してはイマイチ。
なんだか、登場人物たちの立場を考えていけば
想像できてしまう範囲内の話に落ち着いてしまったような。
途中であれこれ出来事があった割には、
ありきたりな結末になってしまったような印象です。

そして、その後に続く思わせぶりな描写。
うーん、腑に落ちないわぁ。


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『象と耳鳴り』
- 2012/08/23(Thu) -
恩田陸 『象と耳鳴り』(詳伝社文庫)、読了。

連作推理ものです。

定年退職した判事が探偵役となり、
日常生活で出会った謎や、問いかけられた謎の解明に挑みます。
安楽椅子探偵ものが割合多かったのかな。

ただ、私には、どうにも謎解きの展開に無理があるような気がして、
物語に入っていくことが出来ませんでした。

それだけのヒントで、そんな仮説を組み立てるのは無理だろうに・・・というもの。
仮に、仮説を立てられたとしても、それが真相だという納得感が無いんですよねー。

奇しくも「机上の論理」で、主人公の娘と息子がもっともらしく解いて見せた仮説が
両方とも間違っていたということが、他の作品達にも当てはまるだろうと
思ってしまいました。

それと、もう一つ違和感を感じたのは、主人公「関根多佳雄」の人物像。
作品ごとに受ける印象が違っていて、
一人の人間としての統一感が無いように感じました。
最初に奥様と一緒に登場したので、普通のおじさんを想像したのですが、
他の人に見せる顔は違っていたりして・・・。
外の顔から段々と身内に見せる顔に変化を楽しむ構成だったら
もっと受け入れやすかったかもしれませんが、なんだか不安定さを感じてしまいました。

本作は、苦手なほうの恩田空気が漂っていました。


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