『言い寄る』
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- 2023/10/10(Tue) -
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田辺聖子 『言い寄る』(文春文庫)、読了。
先日読んだ石川達三作品、女主人公の頭でっかちな感じがしんどかったので、 たぶん、正反対の気持ちの良い女の子が出てきそうなおセイさん作品をば(苦笑)。 そしたら、図らずも乃里子さんが登場し、「乃里子3部作」だったようです。 「乃里子3部作」は、おセイさんの作品をだいぶ読んでから知ったのですが、 おセイさん作品を読み始めて2番目に『私的生活』をたまたま読んでいて、 その世界観の面白さは素直に感じてました。 恋愛小説って好んで読まないので、「恋愛小説でも面白いんだなー」と思えた作品です。 ただ、これをきっかけに恋愛小説を読むようになったわけではなく、 おセイさんの恋愛小説なら読めそうだ・・・・と思うようになっただけですけど(苦笑)。 本作は、「乃里子3部作」の第1作とのことで、 私は、「乃里子3部作」という枠組みを知らないまま、第2作目⇒第3作目と読んできて、 最後に第1作目となりました。 20代末期の独身女性ですが、デザイナーという職でそれなりに売れており、 同世代の男の子だけでなく、年上のオジサマたちとも堂々と渡り合える会話術を持っており、 一人で食事も飲みに出るのも気兼ねなく自由に動けて、誰かに誘われたときの 行動力も決断力もばっちり。 やっぱり乃里子さんは魅力的です。 そんな乃里子さんの周りにいる男性陣は、 乃里子の女友達を妊娠させて逃げを打ったタァちゃん、 タァちゃんの友人で金持ちボンボンの女好き・剛ちゃん、 剛ちゃんの別荘の隣に別荘を持つ中年男の水野さん、 乃里子の古なじみの優男で距離が近すぎて乃里子に全く手を出さない五郎ちゃん。 皆ぞれぞれ個性がある男性陣で、最初は、五郎ちゃんと乃里子はどこでくっつくのかなー?とか、 剛ちゃん、別荘に女の子を連れて行ってその仕打ちは酷いよー、 とか思いながら読んでいましたが、途中から、自分の中で五郎ちゃんへの評価がダダ下がり。 いくら優しい男でも、その行動はおかしいだろう??と思えてしまい、 なぜか女たらしでどうしようもない剛ちゃんの方が、 「肘鉄くらわされても、これだけ乃里子に執着できるのは凄いかも・・・・」と思えるほど。 乃里子も、男性陣に厳しい評価をしつつも、バッサリ切って捨てるわけではなく、 敗者復活のチャンスを与えるというか、悪い点一点だけで評価を下すのではなく、 人間だから良いところも悪いところもあるよねー、みたいな広い心の女性であるところが やっぱり魅力なのかなーと。 知性と肉体が一体化している女性像であることが、やっぱり読んでいて楽しいですね。 頭でっかち女性よりも、格段に惹かれます。 ![]() |
『いっしょにお茶を』
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- 2020/11/15(Sun) -
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田辺聖子 『いっしょにお茶を』(角川文庫)、読了。
表紙絵が、これまでに読んだことがある短編集と同じ雰囲気だったので 短編集だと思い込んで買ってきたら、エッセイ集でした。 (下のAmazonの写真はKindle版なので私の手元の古本とは表紙が違ってます) 基本的に、作家・田辺聖子の日常を、作家の目線で描いているエッセイです。 なので、創作の苦しみだったり、取材旅行の楽しみだったりが描かれていて 一般人には興味深い日々です。 作家・田辺聖子のもとに創作の神様が降りてこないというときに 同居人のスヌーピーのぬいぐるみに当たり散らすというか、 スヌーピーに神様を呼んでくるように懇願する様子などを見ると、 作家の苦しみを思う前に、その滑稽さに笑ってしまいます。 自分の大変な苦労ですら、笑いの材料に変えてしまうのは、 さすが生粋の大阪人ですね。 ![]() |
『ほどらいの恋』
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- 2016/02/06(Sat) -
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田辺聖子 『ほどらいの恋』(角川文庫)、読了。
おせいさんの短編集。 様々な形の男と女の関係を巡る日常を描いた作品。 恋人同士、不倫の関係などの恋愛最中の2人以外に、 お見合い相手、幼なじみ、取引先、お客様など、恋愛前だったり、恋愛とは無関係そうな2人も いろいろ登場してきます。 そして、どの作品も、抽象化しすぎたり、内面に落ち込んでいったりせずに、 あくまで日常レベルで男と女の姿を描き、具体的な会話や行動を通して、 人と関わるというのはどういうことかを描いていきます。 私はやっぱり、おせいさんが描く関西弁の会話分のポップさが好きで、 とにかく読んでいて心地よいです。 リズム感や語幹だけでなく、切り返しのフレーズの妙だったりするところも含めて こういう心地よさを小説から得られると、 自分の日常生活も、気をつけて見ていれば もっともっと楽しく心地よいものなのではないかな、それを見落としているだけじゃないかなと 前向きな気持ちになれます。
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『源氏紙風船』
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- 2014/12/26(Fri) -
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田辺聖子 『源氏紙風船』(新潮文庫)、通読。
源氏物語に対する著者の熱い思いを語った本。 著者の思いが熱すぎて、 『源氏物語』のファンの人か、 これから『源氏物語』を是非とも読んでみたい!と思っている人か、 何かしら思いを共有できないと、熱さについていけないかもしれません。 私は、感覚がオジサンだとよく周りから言われるので、 まさに冒頭で著者が世の中の男性諸君を嘆いているように、 『源氏物語』の世界観には、少し距離を感じてしまっていると思います。 ま、食わず嫌いなのかもしれませんが。 なかなか、あのボリュームを前にすると、 尻込みしてしまうのですよねぇ・・・・・。
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『百合と腹巻』
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- 2014/05/26(Mon) -
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田辺聖子 『百合と腹巻』(ポプラ文庫)、読了。
おせいさんの小説は、気づけば4年ぶりとなっておりました。 「田辺聖子コレクション」ということで、 文化勲章を受章したあたりで発行されたものでしょうかね。 大阪という街における恋愛5つが収録されていますが、 やっぱり、おせいさんの書く大阪弁は素敵です。 その大阪弁をしゃべる男も女も、登場人物みんな素敵です。 客観的に見れば、はぐらかす男や、ぐずぐずしている女たちなのですが、 自分の気持ちに正直に行動しているところが 清々しいように感じるんです。 その正直さが、大阪モンの魂のように思ったりもして。 やっぱ、おせいさんの描く大阪人は素敵やなぁ。
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『舞え舞え蝸牛』
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- 2012/09/22(Sat) -
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田辺聖子 『舞え舞え蝸牛』(文春文庫)、読了。
おせいさんの「おちくぼ姫」。 以前、その名も『おちくぼ姫』を読みましたが、 本作では、一層、個々のキャラクターが立っているように感じました。 おちくぼ姫はしとやかに、 北の方は激烈に、 阿漕ははしこく。 おせいさんの、おちくぼ姫への愛情がひしひしと伝わってくる作品になっています。 それにしても、何度読んでも、 このストーリー構成は上手いですよね~。 ある意味、王道の物語展開なのですが、 人々に愛されるエンターテイメントをよく理解して作られているように思います。 10世紀にこんな作品を生み出す日本文化って、すごい!!
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『おせい&カモカの昭和愛惜』
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- 2011/02/19(Sat) -
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田辺聖子 『おせい&カモカの昭和愛惜』(文春新書)、読了。
「おっ、おせいさん、新書も出しているのかー」と思い、 何も中身を確認せずに買ってしまったのですが、アフォリズム集でした。 ・・・というか、これまでに発表した小説やエッセイの数行を 切り出してきて並べたという内容。 う~ん、これは、分かってたら、買わなかったなぁ・・・・。 断片的に読まされても、やっぱり面白さは伝わらないと思うんです。 いわゆるアフォリズムの妙というのは、 一言でズバッと本質を突く気持ちよさだと思うのですが、 本作は、数行で描写しようとするので、なんだか冗長。 中途半端さが付きまといます。 唯一読めたのは、カモカのおっちゃんとの「中年いろはがるた」の作成談。 ここは、一つのエッセイとして完成していて、面白かったです。 これは、騙されたなぁ。
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