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『大阪弁ちゃらんぽらん』
- 2021/12/14(Tue) -
田辺聖子 『大阪弁ちゃらんぽらん』(中公文庫)、読了。

田辺聖子流の大阪弁講座。
例えば、「あほ」と「すかたん」の違い、使い分け方とかを解説しています。

私は大阪人ではないですが、関西弁使用地域の生まれなので、
「すかたん」を日常的に使うことは無くても、誰かが発したときのニュアンスは分かるつもりです。
ニュアンスは分かるけど、自分では説明できない。
そんなもどかしさを、何とも見事に言語化しているので、おせいさん、さすがです!

そして、その言語化された文章が、決して、解説文的なお堅いものでも、
エッセイ的なさらさらと流れていくものでもなく、まるで落語を読んでいるかのような
右へ左へ揺さぶられながらポンポンリズムよく会話が進んでいく感覚で
ああ、これもおせいさんだなぁと感じながら読んでました。

選ばれる大阪弁は、「ああしんど」に始まり、「あほ」「けったいな」「しんきくさい」「いちびる」等
大阪弁のウィットにとんだ言い回しが並ぶほかに、
「チョネチョネ」なんていう艶っぽい言葉も登場。
正直、「チョネチョネ」っていう言い方は知りませんでした。
これは大阪の閉じた部屋の中で使われる感じなんですかね(笑)。

解説に登場してくる事例や著者による感想も、
まさに大阪の猥雑な街並みの情景が頭に浮かんでくる感じで、面白かったです。




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『いっしょにお茶を』
- 2020/11/15(Sun) -
田辺聖子 『いっしょにお茶を』(角川文庫)、読了。

表紙絵が、これまでに読んだことがある短編集と同じ雰囲気だったので
短編集だと思い込んで買ってきたら、エッセイ集でした。
(下のAmazonの写真はKindle版なので私の手元の古本とは表紙が違ってます)

基本的に、作家・田辺聖子の日常を、作家の目線で描いているエッセイです。
なので、創作の苦しみだったり、取材旅行の楽しみだったりが描かれていて
一般人には興味深い日々です。

作家・田辺聖子のもとに創作の神様が降りてこないというときに
同居人のスヌーピーのぬいぐるみに当たり散らすというか、
スヌーピーに神様を呼んでくるように懇願する様子などを見ると、
作家の苦しみを思う前に、その滑稽さに笑ってしまいます。

自分の大変な苦労ですら、笑いの材料に変えてしまうのは、
さすが生粋の大阪人ですね。




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『不倫は家庭の常備薬』
- 2020/07/05(Sun) -
田辺聖子 『不倫は家庭の常備薬』(講談社文庫)、読了。

不倫をテーマにした短編集。
現在の「不倫は悪!」と断罪する時代においては、口にできないようなタイトルです(苦笑)。

上司とOLみたいなありきたりな設定ではなく、
主婦と60代・70代のオジサマというような変化球が多く、
性的な欲望だけではなく、洒脱な会話とか、余裕のある物腰とか、
そういうダンディーな部分がいかに魅力的かというようなところが描かれており、
なるほどなぁと思いました。

確かに、2人の間で会話が「弾んでる」んです。
対照的に描かれる家庭での夫婦の会話は、ブツ切り、単語、投げやりな感じで、
なんのために一緒に住んでいるのか分からなくなるような味気無さ。
それに比べて、不倫の2人の会話の面白いこと、楽しいこと。
そりゃ、不倫しますわなぁという感じです。

そして、そんな魅力的な会話ができるオジサマも、
家に帰ったら味気ない単語の会話を交わしていることも書かれており、
夫婦っていったい何なんだよー、と、結婚歴のない私には謎が深まるばかり。
うちの両親は結構会話する方なので、小説に登場する味気ない夫婦っていうのが良く分かりません。

それはさておき、田辺作品では、やっぱり関西弁の小気味良さ。
関西人の独特なノリの良さが、一片たりとも失われることなく再現できるのが
田辺表現の凄さだと思います。
本作でも、特に不倫の2人の会話シーンが面白かったのですが、
それ以外にも、喧嘩中の夫婦の間で夫が妻を「鬼おっかん」と表現したり、
このあたりの関西人のユーモアセンスって、抜きん出て凄いなと思います。

初版は1989年と30年以上も前ですが、生き生きとした短編集でした。
あけすけな性的描写もあり、バブルの残り香なのかな?と感じてしまう時代感でした。




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『女の居酒屋』
- 2019/07/09(Tue) -
田辺聖子 『女の居酒屋』(文春文庫)、読了。

おせいさん、天国に召されましたね。
合掌。

さて、手元にあった本を読んでみました。
おせいさんの日常エッセイは、実は初めてかも。
どうやら、「カモカのおっちゃんシリーズ」と呼ばれているようです。

日々の出来事に腹を立てたり、ほっかりしたり、賑やかに笑ったり、
そして最後は、おつまみをちゃちゃっと作って日本酒で乾杯🎵
幸せな日々ですね。

タイトルから、晩酌の話が中心になるのかと思ったのですが、
時々登場するだけで、そこまで晩酌の話で溢れているわけではなかったです。
どんなおつまみを食べているのかとか知りたかったのに、残念(笑)。

「カモカのおっちゃんシリーズ」と言われているだけあって、
おせいさんとカモカのおっちゃんのやり取りが面白いです。
前のめり気味のおせいさんと、斜に構えたカモカのおっちゃん、
このコンビネーションが良いですね。

毎日、作家としての仕事に頑張って、
18時に「今日は終わり!」となって、カモカのおっちゃんと晩酌しながら
あーだこーだと今日を振り返る。
素敵な生活ですね。




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『ほどらいの恋』
- 2016/02/06(Sat) -
田辺聖子 『ほどらいの恋』(角川文庫)、読了。

おせいさんの短編集。
様々な形の男と女の関係を巡る日常を描いた作品。

恋人同士、不倫の関係などの恋愛最中の2人以外に、
お見合い相手、幼なじみ、取引先、お客様など、恋愛前だったり、恋愛とは無関係そうな2人も
いろいろ登場してきます。

そして、どの作品も、抽象化しすぎたり、内面に落ち込んでいったりせずに、
あくまで日常レベルで男と女の姿を描き、具体的な会話や行動を通して、
人と関わるというのはどういうことかを描いていきます。

私はやっぱり、おせいさんが描く関西弁の会話分のポップさが好きで、
とにかく読んでいて心地よいです。
リズム感や語幹だけでなく、切り返しのフレーズの妙だったりするところも含めて

こういう心地よさを小説から得られると、
自分の日常生活も、気をつけて見ていれば
もっともっと楽しく心地よいものなのではないかな、それを見落としているだけじゃないかなと
前向きな気持ちになれます。


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『源氏紙風船』
- 2014/12/26(Fri) -
田辺聖子 『源氏紙風船』(新潮文庫)、通読。

源氏物語に対する著者の熱い思いを語った本。

著者の思いが熱すぎて、
『源氏物語』のファンの人か、
これから『源氏物語』を是非とも読んでみたい!と思っている人か、
何かしら思いを共有できないと、熱さについていけないかもしれません。

私は、感覚がオジサンだとよく周りから言われるので、
まさに冒頭で著者が世の中の男性諸君を嘆いているように、
『源氏物語』の世界観には、少し距離を感じてしまっていると思います。
ま、食わず嫌いなのかもしれませんが。

なかなか、あのボリュームを前にすると、
尻込みしてしまうのですよねぇ・・・・・。


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『百合と腹巻』
- 2014/05/26(Mon) -
田辺聖子 『百合と腹巻』(ポプラ文庫)、読了。

おせいさんの小説は、気づけば4年ぶりとなっておりました。

「田辺聖子コレクション」ということで、
文化勲章を受章したあたりで発行されたものでしょうかね。

大阪という街における恋愛5つが収録されていますが、
やっぱり、おせいさんの書く大阪弁は素敵です。
その大阪弁をしゃべる男も女も、登場人物みんな素敵です。

客観的に見れば、はぐらかす男や、ぐずぐずしている女たちなのですが、
自分の気持ちに正直に行動しているところが
清々しいように感じるんです。
その正直さが、大阪モンの魂のように思ったりもして。

やっぱ、おせいさんの描く大阪人は素敵やなぁ。


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『舞え舞え蝸牛』
- 2012/09/22(Sat) -
田辺聖子 『舞え舞え蝸牛』(文春文庫)、読了。

おせいさんの「おちくぼ姫」。
以前、その名も『おちくぼ姫』を読みましたが、
本作では、一層、個々のキャラクターが立っているように感じました。

おちくぼ姫はしとやかに、
北の方は激烈に、
阿漕ははしこく。

おせいさんの、おちくぼ姫への愛情がひしひしと伝わってくる作品になっています。

それにしても、何度読んでも、
このストーリー構成は上手いですよね~。
ある意味、王道の物語展開なのですが、
人々に愛されるエンターテイメントをよく理解して作られているように思います。
10世紀にこんな作品を生み出す日本文化って、すごい!!


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『おせい&カモカの昭和愛惜』
- 2011/02/19(Sat) -
田辺聖子 『おせい&カモカの昭和愛惜』(文春新書)、読了。

「おっ、おせいさん、新書も出しているのかー」と思い、
何も中身を確認せずに買ってしまったのですが、アフォリズム集でした。
・・・というか、これまでに発表した小説やエッセイの数行を
切り出してきて並べたという内容。

う~ん、これは、分かってたら、買わなかったなぁ・・・・。

断片的に読まされても、やっぱり面白さは伝わらないと思うんです。

いわゆるアフォリズムの妙というのは、
一言でズバッと本質を突く気持ちよさだと思うのですが、
本作は、数行で描写しようとするので、なんだか冗長。
中途半端さが付きまといます。

唯一読めたのは、カモカのおっちゃんとの「中年いろはがるた」の作成談。
ここは、一つのエッセイとして完成していて、面白かったです。

これは、騙されたなぁ。


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『おちくぼ姫』
- 2010/11/03(Wed) -
田辺聖子 『おちくぼ姫』(角川文庫)、読了。

おせいさんによる『落窪物語』の現代語超訳。
平安時代のシンデレラ物語というのは、言い得て妙ですね。

おせいさんが相応の手を入れているようなのですが、
それでも、内容面で、ストーリーの面白さはサスガ。
この時代にまで伝わっているだけのことはあります。

私は、てっきり原作者は女性だと思っていたのですが、
どうやら、男性下級貴族の手によるものという説が主流なんですね。
男性がこのような恋愛ものを書きあげるとは、驚きです。

作品を通して見えてくる、平安時代の貴族の生活の風雅の豊かさ、
そして、このような文学作品を残せる教養の高さというものを
十分に楽しめる作品でした。


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