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『だれでも書ける最高の読書感想文』
- 2021/01/22(Fri) -
齊藤孝 『だれでも書ける最高の読書感想文』(角川文庫)、読了。

子どもの頃、基本的に学校の勉強は得意な方で、
宿題とかも苦にならず、夏休みの宿題なんぞ「7月中に全部終わらせて、8月は自由研究に集中!」
というようなタイプでした。

しかし、唯一不得意だったのが「読書感想文」。
なぜ不得意なのかという自分なりの分析もできていて、
「どういう風に感想文を構成していくと良い評価が得られるのか戦術がわからない」ということでした。

小学校の6年間、毎日、日記を書くという宿題があり、たぶん風邪などで休んだとき以外は
1日も欠かさずに書いたと思うのですが、日記を書くのは苦ではありませんでした。
むしろ、学校内での表彰で「入選」とか「佳作」とかもらっていたので、
良いテーマが見つかって、筆がのった時は、「選ばれる文章を書くぞ!」と気合が入った記憶があります。
日記は、「こういう風に書くと先生の評価が高い」というツボを、自分なりに攻略できていた気がします。

ところが、読書感想文は、基本的に年に1回か2回程度しか宿題にならず、
経験値が少ないので、「こう書けば先生に評価される」というポイントが見えていませんでした。
さらに、日記は学期ごとに表彰があり、表彰作品は文集みたいになって配られていたので
他の生徒の「特選」とか「入選」とかの日記を読んで、「あぁ面白い文章だな」
「なるほど、こう書くと起承転結のメリハリが出るんだな」というようなテクニック論を
周囲や先輩から学び取れた(盗み取れた?)ので、自分なりの攻略法を編み出せました。

ところが、読書感想文は、提出した後、誰が読んでどういう評価をしているのか
何もフィードバックがないし、日記の文集のように他の人の文章を読む機会もなかったので
ずーっと苦手でした。
「感想っていったい何なんだよ!?」ぐらいに思ってました。

ところが、中学校2年生の時だったと思うのですが、
当時の国語の担任が、自分の趣味で結構とっぴな授業をする人で、
ある時、数週間の国語の時間をつぶして、「教科書のこの文章に対する自分なりの考察を
書けるだけ書きなさい、内容よりも分量が多いことを評価します」というような変な授業をしました。
最初の何時間かは、その教科書の文章を黙読し、自分なりの考えをまとめ、
そして、さらに何時間かの国語の時間で、400字詰めの原稿用紙に延々と自分なりの考察を書くという
ものすごく静かで孤独な、しかし濃密な授業時間でした。

そのとき、読書感想文が苦手だった私は、なぜか「自分なりの考察」というキーワードに触発され、
原稿用紙32枚に渡る文章を書いて、「一番長い文章を書いた」と先生に褒めてもらいました。
凄く嬉しかった思い出です。

テーマだった教科書の文章が一体何だったのかは全く記憶にないのですが、
確か小説で、私は、登場人物の心の推移とか、関係性の変化とか、そういう主題からはじめて、
さらには、日本語文章としてのテクニックで気になったところや、疑問に思たっところなど
とにかく気づいたところを全て羅列しました。

「読書感想文」で、何を書いていいのかいつも困惑してたのに、なんでこの課題には
こんなに熱心に取り組めたのだろう?と思うと、たぶん「考察」という大人なワードに惹かれたことと、
「読書感想文」というパターン化された宿題ではなかったので、ほんとうに「何を書いてもいい」と思えて
素直に思ったことを書き連ねることができたためかと思います。

結構、この課題のおかげで、「あ、自分は、長い文章を書くことができるんだ」
「『考察』って言われると、いろんな角度から物事を考えることができるんだ」と気づくことができ、
その後の、小論文試験とか大学の卒論作成が苦にならなくなるきっかけになった気がします。

で、本作を読んでみて、著者が、軽すぎるかな?と思われるほどのポップな言い回しで
読書感想文に立ち向かう気持ちや姿勢について書いている内容を、
私は、この中学校の時の課題を通して、勝手に自分自身で見いだすことができたんだなと納得できました。
たぶん、文章を書いていて本当に楽しいと思えたのは、この中学校の課題が頂点で、卒論が次点かな。

自分自身で「読書感想文の壁」を乗り越えられたので、
こんな読書感想Blogを毎日書くことができるようになったのかなとも思います。
まぁ、拙Blogは、文章の温度差も品質差もひどいものですが(苦笑)。

もし、「読書感想文」に悪戦苦闘していた小学生の私が本作を読んでいたら、
得意な宿題に変わっていたかな?とも想像しましたが、たぶん答えは「No」です。

この手のハウツー本を受け入れられるようになったのは30代になってからで、
昔は、テクニックを教える本は、付け焼刃だとバカにしてたので、たぶん読めなかったと思います。
そして、やっぱり、学習法は、人に教えてもらったものを真似るより、
自分で開発して身につけるのが一番ですよね。

本の内容にはそこまで深い興味はわかなかったのですが、自分自身の思い出に浸れた読書でした。




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『実録 頭取交代』
- 2021/01/20(Wed) -
浜崎裕治 『実録 頭取交代』(講談社+α文庫)、読了。

手元にあったので、ふと手に取ってみたのですが、
たまたま少し前にYoutubeで見た「ポンジスキーム」の解説動画で
まさに取り上げていた第一生命の事案だ!とすぐにわかりました。

須田さんの動画では、どちらかというと生保レディに軸を置いていましたが、
本作は、銀行側を舞台にしています。

主役は、維新銀行のドン、相談役の甲羅天皇です。
労組対策のために中途入社で引き抜かれて銀行入り。
効果的な手をどんどん繰り出したことで、当時の頭取から手厚い信頼を受け、
次々と出世していきます。
そして、ようやく自らが頭取の地位につき、そこに連綿と居座るのかと思いきや
代表権のない相談役に退いて、会長と相談役の双方を裏で操るというしたたかさ。

中途入行でここまでの権力体制を築き上げることができるというのは、
ただモノではなく、やはり実力者ではあると思います。
ただ、銀行本業である営業面での施策はあまり何をやったのか描かれておらず、
本業を伸ばすことではなく、行内権力闘争のみで支配力を構成しているという
このアンバランスさがまた不気味です。

私自身、5年前まで銀行グループの中で働くサラリーマンだったので、
銀行の中の体制というのは一般の方よりは知っているつもりですが、
最初の印象は、「なんでこんなに内部統制が効いてないんだ!?」
「生保レディ個人とこんなにアカラサマに癒着したら、すぐに内外から指導が入るだろう!?」
と、維新銀行の中のあまりにも個人に振り回される様子に唖然としました。
監査室とか機能してないのかしら?金融庁にタレコミとかないのかしら?と。

そして、取締役会のクーデター騒ぎの後も、甲羅天皇がそのまま居座り続けることが
できているという事実に驚きました。
正直、小説の世界でこんな展開を描いたら、「リアリティがない」と叩かれる気がします(苦笑)。
つい最近まで相談役の座についていたという。
行員さんたち、どんな気持ちだったんだろう?もう麻痺してるのかな。

まぁ、でも、金融庁も、金融業界の適正化のためではなく、
金融庁の指導力を高めるために本クーデターを利用していた節があり、
世の中、正義にそって動いていくわけではないんだなと思いました。

甲羅派と谷野頭取派の取締役会での対決は一気読みの面白さでした。
谷野派が理路整然と反論しているのに比べて、
体当たり攻撃のような状態の甲羅派役員の頭の悪さが際立っていましたが、
なんで甲羅天皇はこんなアバウトな攻撃をやらせたんだろうか?と疑問を抱いていたら
最後の最後に甲羅天皇自ら取締役会の議論を結論付ける行動を見せて、
「あぁ、なるほど・・・・こういうことだったのか・・・・」と納得。
このような事態のために予め手を打ってあった、その先見性に感嘆しました。
この頭の良さを自分のためではなく銀行のために活用したら、きっと営業成績も
もっと上がっていたと思うのですが・・・・・無駄な感想ですね(苦笑)。

最後に、著者は、この維新銀行のモデルとなった山口銀行で
取締役まで務めた人とのことで、反甲羅派だったんだろうなとは思いますが
ここまで赤裸々に描いてしまって、山口銀行から訴えられないのかしら?と心配になるほどでした。
まぁ、銀行側としても、変に裁判に持ち込んで、そこで事実認定されてしまうと困るという
事情があるのかもしれませんが。

著者の書く文章は、著者自身の思いを極力抑えこんで、
経過のみを淡々と描いていくので、好感が持てました。
こういう作品を書くとき、自分の主張が押しつけがましい人って、結構いますからね。

ビジネスマンとして、いろいろ考えさせられる本でした。






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『料理王国 2021年2月号』
- 2021/01/19(Tue) -
『料理王国 2021年2月号』

訪問先での空き時間に手持無沙汰だった時に、置かれていた本誌をペラペラ。

初めて読んだのですが、料理の話で毎月これだけのボリュームのページを埋めるなんて
私には想像を絶する仕事だなぁ・・・・・と変な感想(苦笑)。

巻頭のいくつかの記事は、コロナ禍における海外での新店オープンの話等が出ていて、
なるほど、レストランのオーナー向けに、世界の流行の方向性を提示したりしているのか・・・・と
やっと想定読者のイメージが湧きました。

特集は日本酒。
特に、日本酒会に新風を巻き起こすために新しい動きを始めた人たちが紹介されています。
自分よりも年下なのに、業界の慣習を乗り越えて仲間とともに新しいことをしようとしているのは
素晴らしいエネルギーだなと感じました。

私的に一番のポイントは「仲間と一緒に」というところで、
新しいことをするのにあたり、賛同者をきちんと捕まえて巻き込んでいくのって、
すごく体力が要る作業だと思うんですよね。
むしろ、一人で突っ走った方が楽な印象です。自分で全部決められるしね。
それを、若い立場で仲間を巻き込み、先輩にも話を聞き、進めていくという骨の折れる作業を
きちんと段取り踏んで進めていることに感嘆。
・・・・・全然、料理雑誌の感想っぽくないですけど(笑)。

特定ジャンルのビジネス誌として読むと、別にその業界に所属していなくても
ビジネスマンとして勉強になるものは多いんだなと気づかされました。




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『歪曲報道』
- 2021/01/18(Mon) -
高山正之 『歪曲報道』(新潮文庫)、読了。

著者の辛口保守エッセイは、ちょっと私には毒が過ぎるのですが、
本作はタイトル通り「歪曲報道」に絞った話のようだったので、買ってみました。

「歪曲報道」と言いつつ、様々な指摘を受けているのは朝日新聞の記事が大半で、
ま、保守派論客によるいつもの朝日新聞バッシングでした。

著者は新聞記者出身ですから、一般的な保守論客とは違って、
記者の仕事の世界を分かったうえで朝日を批判しているので、そこは面白かったです。
ただ、批判している対象が、従軍慰安婦問題とか安部元首相のNHK圧力問題とか、
良く知られているものが多かったので、あんまり新鮮味がなかったという感じです。

でも、2021年の今は、「朝日新聞の報道姿勢」みたいなものが
広く一般に語られるようになってきたので、その批判を読むと食傷気味になってしまうのかもしれませんが、
発行時の2006年時点では、そこまで知られていなかったのかも。
そういう点では、保守派論客の功績なのかも知れませんね。

ところで、アメリカ大統領選挙に関して、不正選挙が行われただとか、
フェイクニュースが流されただとか、不正選挙についてきちんと報道されていないだとか、
報道というポイントについて喧々諤々の議論がなされており、興味深く見ていました。

しかし、最近の日本の保守派言論陣を見ていると、
「不正選挙で大統領が選ばれるなんて認められない、民主主義の正義を徹底的に主張しろ!」
という理念の主張はすごく共感できるのですが、その理念を飛び越えて
「トランプが大統領であるべきだ!」という願望が先走っていて、根拠不明のエールを送っているように
感じる場面も増えてきているように思え、ちょっと距離を置いて眺めています。
一部では保守内部で分裂のような喧嘩も勃発しているようですしね。

フェイクニュースについて解説してくれるのはありがたいのですが、
是非、ご自身の願望とは切り離して、事実での評価・分析をお願いしたいなと願い限りです。
まぁ、最後は、自分が情報の真偽を見極める能力を身に付けるしかないんですけどね。




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『Q&A』
- 2021/01/17(Sun) -
恩田陸 『Q&A』(幻冬舎文庫)、読了。

昨日、ネットで注文していたマッサージチェアが届きました。
試運転のお供に本作を手に取ったのですが、
思いのほかマッサージが気持ちよく、立ち上がれません。
連続運転させている間に、一気読みです(苦笑)。
(マッサージチェアの連続使用って、体に悪いからダメですよね・・・・)

タイトル通りQ&A形式で、とある組織の人達が、大惨事となった事件の関係者に質問を行いう様子を
淡々と会話文のみで描写していきます。

この作品構造の時点で、「『藪の中』スタイルかも?」と、真相がわからないエンディングになる
可能性についてはある程度覚悟していました。
むしろ、論理破綻を起こさずに、様々な可能性を提示することができるのかというところに
興味がありました。

問題の大惨事とは、郊外のショッピングモールで、中にいた買い物客数千人がパニックになり
外に逃げようとする人々が押し合った結果、圧死や転落死など数十人が亡くなり、
100名以上が怪我をするという事態に。
しかし、パニックの原因になった最初のきっかけが何なのか、事故から数カ月たっても
未だに解明されないという不思議な状況です。

前半、Q&Aは、とある組織が関係者に質問するという体裁になっており、
事件の真相以外にも「この組織は何なんだろう?」というサブの謎もあって、
ワクワクしながら読む手を止められませんでした。

しかし、中盤から、この組織が登場しなくなり、「あれれ?何だったの?」と肩透かし。
後半は、ただの2人の会話として進んでいくので、ちょっと中だるみしましたが、
終盤になって、遺族中心に結成された宗教団体の話がメインになてくるにつれて、
「あ、前半の組織は公安的な組織で、成長しすぎた宗教団体の監視的調査をしてるのかも」と
思うようになりました。ま、あくまで私の想像ですけど。

組織の方の真相は、明確な答えがないにしても、私なりの想像ができたので
そこは満足できたのですが、事件の真相の方は、ちょっと不満でした。
ナイフの老夫婦、液体を撒いた男、血の付いたぬいぐるみを持った少女、
この3つの原因かも!?と登場してきた話の扱いが、どうにもアンバランスで、
他の2つが放置されたまま少女の話に収斂していくのが、私の好みではありませんでした。

そして、最後の章で、まさにその少女のQ&Aになりますが、
正直、私には、この章は不要だったと感じられました。
一気につまらない作品になってしまったなと。
大惨事の謎について空想を広げていた話が、一気に人間臭い話に矮小化されてしまった印象です。

前半と終盤が面白かっただけに、この結末は残念でした。




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『ランナー』
- 2021/01/16(Sat) -
あさのあつこ 『ランナー』(幻冬舎文庫)、読了。

陸上部に所属していた高校1年生の少年。
競技会での敗北で挫折し、同時期に起こった両親の離婚に始まる家庭の問題にも直面し、
陸上部を退部し家で幼い妹の遊び相手をしています。

この少年に対して、陸上部の先輩マネージャー、陸上部の同級生の友人など
様々な人が退部後の少年のことを気にかけて声をかけてきますが、
その接し方が、無理には踏み込まず、一線をきちんと引いたうえで
自分の気持ちを押し付けすぎないように配慮しながらなので、
すごく素敵な人たちに囲まれているなと素直に羨ましくなりました。

一方で、家庭の方。
両親が離婚。子供二人は母親が引き取りますが、妹はもともとは父親の弟の子供。
弟夫婦が事故死したため養子縁組で引き取った娘です。
家族4人で居る時は、実の子も養子の子もともに愛情をもって育てられたのに、
離婚をして、自分が一家の生計を全部背負うことになり、追い詰められた日々を送る中で、
娘の面影の中に逃げていった夫の姿を見てしまうようになり、ついに虐待してしまう。
その虐待現場に居合わせた息子。

いやぁ、これはもう、しんどい。
実の子である息子の目線で、世の中に対していい恰好をしてしまいがちな母親と、
自分が養子であるとは知らない幼い妹の、緊張感のある日々を描くので、
母や妹がそれぞれいつ爆発するか、いやーなドキドキ感があります。

そして、少年の周囲にいる優しい人たちは、
基本的に、競技会での挫折が原因で退部したと考えているので、
家庭の問題にまでは手を伸ばすことができません。
不器用な少年も、家庭の話を相談することができず、背を向けてしまいます。

世の中のニュースで、時々、虐待事件のことが報じられ、
どうしても被害者になった子供への憐憫と、虐待をした親への非難ばかりが報じられますが、
同居している家族とか、周囲の人間のことは、あまり想像したことがありませんでした。

まぁ、ニュースになるぐらいのひどい虐待だと、親の側の異常性に目が行ってしまいますが、
そうではなく、世間一般にはびこっている虐待の現実というのは、
本作にあるような、虐待をしてしまった自分に悩む親、愛情を欲しがりながらも一方でおびえる子供、
そして、その暗い緊張感の中で同居を強いられる他の家族、そういう姿なのかなと思いました。

スポーツものとして期待して読み始めると、
本作はしんどい読書を強いられてしまうと思います。
こんな家族の重い悩みというのがあるのかと、それが特異なことではなく全国あちこちになることなのかと思うと
気持ちが非常に沈みます。

そういう現実を教えてくれたという点では、ためになる読書でした。
スポーツものの爽快感は、あまり得られないですが、
最後、どういう展開になるのかと思ったら、結構、安易な展開で、
そこに関しては、同じ悩みを抱える子供が読んだらどう思うのかなと、
他人事ながら心配になってしまいました。




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『世田谷一家殺人事件』
- 2021/01/15(Fri) -
一橋文哉 『世田谷一家殺人事件』(角川文庫)、読了。

タイトルの事件は、八王子スーパーナンペイ事件と並んで、
未解決事件として有名ですよね。
ただ、事件発生時に私は大学生で、正直、あんまりこの手の事件に興味を持てなかったので、
一家4人が殺されたのは可哀そうだけど、なぜここまで何年たっても話題になるのかな・・・・と
疑問に思ってました。

スーパーの方は、「スーパー+拳銃+女子高校生」という組み合わせが衝撃的で、
こちらは世間が驚愕する理由はなんとなく納得できてました。

で、本作を見つけたので、読んでみました。
先日の年末で事件から20年だったんですね。

まず、事件そのものの発生状況が、一言で言ってしまうと気持ち悪い。
4人の殺害方法について、殺害するということ以外の目的(痛めつけるとか破壊するとか)が
見えてくるので純粋に怖いです。

そして、一家4人が全員亡くなっているので、この家庭の生活習慣を把握するのに手間取り、
家族の生活の痕跡なのか、犯人の犯行の痕跡なのかを見極めるのが大変だったという事実。
隣に実の姉と母親が住んでいても分からないものなのか、
人間の存在というのはそんなにも曖昧なものなのかと、
自分自身の存在の不確実性を思って怖くなりました。

著者は、独自の情報提供者をたどって犯人と思われる人物に迫っていきますが、
正直に思ったのは、「なんで著者はこんなに簡単に犯人と思える人に出会えるんだろう?」という疑問。
この事件だけを執念深く追っているのならともかく、著作リストを見ていると、
それなりに同時並行でいくつかの事件を追いかけているのではないかという気がしています。
なのに、犯人に出会えて、しかも話ができて、さらに事件の真相に迫る攻防をできてしまうことに
うーん、どこまでが調査の結果で、どこからが創作が入ってるんだろう?と感じてしまいました。
前に読んだ本でも、真犯人と目される人に突撃してますしね

途中から、事件の真相を知るというよりは、事件の真相をイメージした小説を読んでいるんだと
割り切ったら、読みものとして興味深く読めました。

韓国社会、軍人社会、宗教法人社会、様々な特殊な世界の文化が複雑に絡んでおり、
パズルのピースがはまっていく感覚があるので、「真相はこうなのかも!」と思えてきます。
動機についてもそれなりに腑に落ちるものが提起されていたので、
私は、本作に描かれたような社会に関係する人が犯人のような気がするけど、
本作で仮名によって描かれている人が本当に存在するのか、
それがそれぞれ1人の人間なのか、複数の人間の要素をまとめて描いたものなのか、
そこまでは判断できませんでした。

韓国に関わる宗教法人ということで、本作中には明言されていませんが、
ネットで検索すると、ずばっと書かれており、信仰の状況なども嘘かほんとか分かりませんが
いろいろ書かれていました。
どの書き込みも、元ネタは本作のように思ったので、
本作が単独で唱えている説なのか、他のジャーナリストでもそう言っている人がいるのか
そこまでは分かりませんでした。

いずれにしても、当時、捜査に関わった警察官の方々にとっては、
こんな本を出されてしまうのは忸怩たる思いでしょうね。




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『家族の標本』
- 2021/01/14(Thu) -
柳美里 『家族の標本』(角川文庫)、読了。

著者の周囲にある様々な家族の姿を短い文章で描き出したエッセイ集という裏表紙の紹介でしたが、
私は、エッセイではなく小説として読みました。

それぐらい、濃密な家族の姿が描かれていて、
短い文章なので無駄を削った文章なのですが、
行間に人間のいやーな部分があふれ出ているようで、怖さを感じるぐらいでした。

で、人間って怖いな・・・・と思いながら前半を読んでいたのですが、
途中で気づいたのは、「著者の周りにはどんだけ重たい家族がたくさんいるんだ」ということ。
そして次に思ったのは、「どの家族も重たいものを抱えているとしたら、その闇のようなものを
周囲にいる人たちから引き出している著者の引力ってすごいな」というものでした。

ルポライターではないので、取材でそういう家族を探し当てているのではなく、
あくまで周囲の知人・友人・仕事仲間とのつきあいや会話の端々から
家族の闇を聞き出したり察知したりしているのだと思います。
その引き出し力がすごいなと。
もしくは闇を引き付ける負の力なのでしょうか。

私が最初に感じたように、小説としての創作の部分も多分に入っているのかもしれませんが、
こういう1組1組の家族の積み重ねが日本なんだなと、今の自分の立ち位置とは
違う視点で社会を眺めるきっかけになりました。




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『漱石先生ぞな、もし』
- 2021/01/13(Wed) -
半藤一利 『漱石先生ぞな、もし』(文春文庫)、読了。

著者と漱石先生、なんとご親戚だそうで。
そういう身内の視点も絡めながらのユニークな漱石論です。

夏目漱石の作品は、結局、『吾輩は猫である』とか『坊ちゃん』とかユーモアのあるものを読んで
重たい感じの作品は敬遠したまま今に至っています。

教科書で学んだ『こころ』が、私にはとてもヘビーに感じられて、
苦手意識を醸成してしまったような。
でも、日本一の文豪の作品は、日本人としていつかはきちんと読まないといけないですよね。

本作は、漱石の様々な作品の内容についても触れる機会が多いので
もちろん作品をきちんと読み通していた方が楽しめるとは思いますが、
あまり知らなくても、ちゃんとあらすじや場面設定を解説しながら話を進めてくれるので
理解しながら読むことができます。

漱石作品を読み込んでの解説だけでなく、
漱石の日常を伝える本人の日記や周辺の人々の随筆などからも引用し、
漱石の作品と漱石本人とを重ね合わせるような分析も、立体的で面白かったです。

著者の義理の母が漱石の娘さんということで、
義母の口を通して語られる漱石像も興味深かったです。

引用された文章を読んでいるうちに、また『吾輩は猫である』を読みたくなっちゃったな。




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『できる人はなぜ、本屋で待ち合わせをするのか?』
- 2021/01/12(Tue) -
臼井由妃 『できる人はなぜ、本屋で待ち合わせをするのか?』(翔泳社)、読了。

「お、本の話か」と思って買ってきたら、
タイトルに関わる話は最初の数ページで終わりでした(苦笑)。

著者が自分の仕事をするうえで自分に課しているルールを
1つ1つ解説しています。

夫の病気により急遽健康器具の会社の社長を引き受け、
その後ヒット商品を生み出したことでガンガン伸びてきた著者が
自身の経験の中から学び取ってルール化してきたことを述べているのですが
経験談を交えているので分かりやすいです。

1つ1つのルールの話には特に関連性や流れはないので、
体系だったものではなく、総花的な内容ではあるのですが、
そうだよねと共感できるものが多かったです。
「仕事で初めて会うときは、土産ではなく土産話を持ってくるべきだ」とか、なるほどねぇ。

ただ、「仕事はやり残して帰る」とかは理解できませんでした。
中途半端なところで終わらせておくと、翌朝、いきなりスピード感をもって始められると。
なぜなら、やりかけの仕事があると気になるし、翌朝早く行こうと思うから
こうやって自分を追い込むべきだ・・・・・。
って、毎晩、「あぁ、あれが終わってない・・・」と追い込まれるのって、精神衛生上つらくないですか?
これはあんまり、他人にお勧めしない方が良いような気がします。

とりあえず、タイトルから、本の話とか、情報収集の話とか、
そういう類の本だと思っていたので、ニーズ違いではありましたが、
ま、普通のビジネス啓発本でした。




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