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『ひとり暮らし』
- 2020/09/24(Thu) -
谷川俊太郎 『ひとり暮らし』(新潮文庫)、読了。

著者の詩集はいくつか体験していますが、
エッセイはお初です。

詩の世界を通してしか知らない著者だったので、どんな視点で世の中を眺めているのかな?と
興味津々だったのですが、意外と冷めた目で見ているところがあって、面白かったです。
未来のことを想像しなければいけない結婚式よりも、過去だけを考えていればよい葬式の方が好きとか(笑)。

そして、ご自身の家族のことも書かれていますが、
学者だったけど何だかちょっと人間性に欠損している部分を感じさせるお父様と、
そのお父様に暴言を吐かれていたと酔ってこぼすお母様。
なかなかにヘビーな家族です。
それを冷淡に感じるぐらいに淡々と書き残す著者。

全編を通してユーモアは感じるのですが、
ところどころにドス黒いブラックユーモアがあったりして油断できないです。

オーソドックスなエッセイ以外にも、日記風のものがあったり、
日記に至らないメモ書きのようなものがあったり、
バラエティに富んでいて面白かったです。

読後感としては、この人物を知ろうとするには、
本人が書いたエッセイよりも、第三者が書いた伝記的なものの方が
本質に迫りやすいような気がしました。
誰か書いてくれないかなぁ。




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『銀行とつきあう法』
- 2020/09/23(Wed) -
邱永漢 『銀行とつきあう法』(日本経済新聞社)、通読。

近所のおばちゃんがくれた本。
なんて本を読んでんだ!?と思っちゃいましたが、亡くなった旦那さんが銀行マンだったので
旦那さんの本だったのかな。

さてさて、私自身は、銀行からお金を借りた経験がなく、
それ以外からも借金は、育英会ぐらいです。
返済し終わっているので、今は借金ゼロです。

一方、金貸しの経験はというと、昔は金融機関に勤めてたので、
貸金業取扱主任者資格を持ってます(笑)。
金貸しや回収の部署に居たことがないので、あんまり実感わかないですけど。

というわけで、本作では、銀行でお金を借りる場合に何をチェックされるか、
どう立ち回ると貸してもらえるのか、そもそも銀行融資とはどんなものなのか
具体的に描いていて最初は興味深かったです。

でも、読み進めていくうちに、何だか同じようなエピソードを繰り返し書いているような印象を受けて、
後半は読み飛ばしでした。

本作の出版は昭和46年とのことですが、
今も銀行文化って本質は変わってなさそうだから、
本作で描かれたようなやり取りが今も起こってそうですね。




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『ジョブズは何も発明せずにすべてを生み出した』
- 2020/09/22(Tue) -
林信行 『ジョブズは何も発明せずにすべてを生み出した』(青春新書インテリジェンス)、読了。

ジョブズの本は何冊か読みましたが、
何冊読んでも、アップル社ってやっぱり興味深い組織ですよねー。

ジョブズ個人にはそんなに興味ないんですよ。
あまりにカリスマ性が突出しすぎてて、学ぶべきとっかかりが見つからないと言いますか。
逆に、アップル社という組織をどうやって作り上げたのかが気になります。
「カリスマに従う信者」というだけでは優秀な社員が集まることも、その能力を十分に発揮することも
難しいように思います。
しかも、かなり大きな組織に成長した後も、組織としての一体感を持っているのはすごいなと。

本作を読むと、いわゆる精鋭選抜のAチームと呼ばれる部分が肝で、
そこをジョブズが直接指導して、残りの従業員は、そのAチームに入るための熾烈な競争に
集中させるという感じでしょうかね。
ある種、ブラックな人間の使い方のように思えますが、
それに耐えうる人材を集めてるし、集まった側も自分はそんなにヤワじゃないと自信があるから
こういう運営ができるんでしょうね。

ジョブズ自身が商品を発明したのではなく、
ジョブズは、人間社会にどういう技術を提供したら社会が変わるのかという仮説を立てて
その仮説に基づいて従業員に技術を作り上げさせる手腕に富んでいたということがよくわかり
面白い本でした。

また、「5階層のシナリオ」として紹介されていた考え方も、
やっぱりモノゴトの順番って大事だよなぁと納得。
組織を仕組み化すること、また思考を仕組み化すること、
その重要性を感覚的に最も会得していたリーダーだったんだろうなと思います。




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『成城のとんかつやさん』
- 2020/09/21(Mon) -
宮尾登美子 『成城のとんかつやさん』(新潮文庫)、読了。

宮尾作品、かなり積読になっているのですが、
どれも分厚いので、手に取るのに根性いるなぁ・・・・・とそのままです(苦笑)。
ブックオフで薄めのエッセイを見つけたので、そちらから先に。

タイトルから食エッセイなのかなと思ったのですが、
出身地高知県の話あり、取材旅行の話あり、同業の作家さんの話あり、訃報の話あり、
著者の日常が垣間見れる多岐にわたるエッセイでした。

個人的には、食の話よりも、人の話が面白かったです。
どの人とどんなお付き合いがあるのか、どんな切っ掛けで付き合いが始まったのか、
その人のどういうところに惹かれているのか、等々。

特に最後の、「この人のここが素敵」と思っていることをサラッと書いていくところが
ベテランの巧みな文章技術だなと勉強になりました。

作品のタイトルが、なぜ「成城のとんかつやさん」が選ばれたのかは良くわかりませんでしたが、
とんかつとそうめんが食べたくなりました。




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『ざらざら』
- 2020/09/20(Sun) -
川上弘美 『ざらざら』(新潮文庫)、読了。

川上弘美さんの掌編小説、大好きです。

この短い文章で、なんでこんなに存在感のある世界観を出せるのかと
いつも驚いてしまいます。

ある日常の瞬間を切り取ったように見せかけて、
しっかりと凝縮して表現しながら、その凝縮感を出さずに、さらっと描いてしまう技量。
すごいです。

「恋愛小説集」というジャンル分けになるようですが、
私は人間そのものを描いた小説のように感じました。
確かに1個1個は恋愛の場面を描いているのですが、
恋愛そのものよりも、それを通して人間が何を考えているのか、何を見ているのかというところが
伝わってきて、面白かったです。




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『「リベラル」がうさんくさいのには理由がある』
- 2020/09/18(Fri) -
橘玲 『「リベラル」がうさんくさいのには理由がある』(集英社文庫)、読了。

「週刊プレイボーイ」の連載シリーズです。

いわゆる日本の「リベラル」を自称する方々の筋が通っていない感じは常々気になっているので、
著者らしい毒で分析されているかと思い買ってみました。

そもそも、「リベラル」っていうカタカナ表現が、曖昧さを助長しているように思います。
なんとなく、リベラル=左派=左翼=野党みたいな構図を思い浮かべてしまいますが、
全部、概念の軸が違ってますよね。
たまたま日本ではイコールになるのか、それともグループが重なっているだけでずれているのか、
はたまた重なっていると思うのは誤解なのか、正直よくわかりません。

国会の論戦(というか難癖?)を聞いていると、リベラルを名乗るご本人たちも
本当は良く分かってないのではないかという気もしてしまいます。

で、本作で何かヒントがつかめるかな?と思ったのですが、
冒頭、エピソード0として、太平洋戦争末期の沖縄戦での集団自決に関して、
戦後の訴訟やそれを巡る新聞報道等をもとに検証していきます。
かなり事細かに詳述されているので、「え、橘玲ってこんなに細部にこだわる人だっけ?」と驚きましたが
異様な歴史の捏造のされ方自体に驚き、とても勉強になりました。

一方で、私の中では、結構、言い放ち系と思っていた著者がこんなに詳述していることに、
「リベラル」の人たちに対峙するのって、こんなにエネルギー要ることなんだ・・・・・と
改めて思想対立の大変さを実感することになりました。

しかし・・・・・次章のエピソード1以降は、いつもの橘言いっ放し節に戻ってしまった感があり、
エピソード0の深堀ぶりが凄かっただけに、反動で、「え、これだけ?」と思ってしまうところもあり、
リベラルの怪しさは分かりましたが、この本の分析内容をもって私自身がリベラルを批判できるだけの
知識や理論構成を持ちえたかというと、そこはあやふやです。

まぁ、そこから先は自分の頭で考えて構築していくしかないのかもしれません。




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『スナックちどり』
- 2020/09/17(Thu) -
よしもとばなな 『スナックちどり』(文春文庫)、読了。

タイトルの語感に惹かれて買ってきたのですが、
表紙のイラストと印象にギャップがあるので、どんな話なんだろう?と思いながらの読書でした。

主人公は、離婚して傷心中。
いとこを誘ってイギリスの辺鄙な町に旅行にやってきますが、
いとこの方も育ての親のような祖父母を亡くした後というタイミング。
お互いの傷に心を配りながらの旅行となります。

この、いとこ・ちどりが、祖父母が経営していたスナックを引き継いで、
帰国後はバーとして再開予定。
まだ改装中ということで、気分はスナックを引きずっています。
そして、主人公の離婚後の傷心話を聞いて慰めているうちに、
さもイギリスの地で「スナックちどり」を開いたかのような癒しの空間が生まれました・・・・というような展開です。
表現へたくそで申し訳ないですが。

私は、姉も妹も親しい女のいとこも居ないので、
血のつながった年齢の近い女性に悩み相談をした経験がありません。
なので、本作を読んで、「あぁ、こういう本音を安心して吐露できる同姓の相手がいるというのは羨ましいな」
と感じました。でも、無防備に本音をさらけ出しているわけではなく、
あくまで相手がどう思うかということを慮って、思慮深く悩みを少しずつ吐き出していきます。
その思いやりがまた美しいなと。

ちどりの方も、祖父母を亡くした喪失感があるわけで、
きっと主人公のさっちゃんに話を聞いてもらうことで慰められた部分も多かったと思います。

個人的には、さっちゃんの旦那の我が儘ぶりが苦手なタイプだったので、
あまりにさっちゃんが可哀そうに思え、反対に、ちどりの方の祖父母は素敵な夫婦だったようなので
ちどりは幸せ者だなぁと、単純に、さっちゃんに心を寄せて読んでいました。

でも、素敵な家族を亡くした喪失感というのは耐え難いものがあるでしょうし、
一方でダメな夫を分析評価するさっちゃんを見てると、「なんであんたこんなヤツと結婚したんだよ~」と
呆れてしまう部分もあり、だから結局、いとこ同士で補い合わないといけないんだなと思い至りました。

終盤、さっちゃんとちどりの関係に大きな変化が訪れそうな展開になりましたが
その変化をも飲み込んで、平常運転に戻るという、なんだか凄い大人な関係。
私の個人的な好みからすると、この手の展開は苦手なのですが、
イギリスの暗い風景の町で展開されたら、なんとなく受け入れられてしまいました。
ばななマジックなのかな。




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この記事のURL |  吉本ばなな | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『それは経費で落とそう』
- 2020/09/15(Tue) -
吉村達也 『それは経費で落とそう』(集英社文庫)、読了。

なんとなく山田作品から経理つながりで読んでみました。

著者の作品は前に一度読んだ時の印象があんまりよくなかった
ので
本作も怖々読んでみたのですが、やっぱりダメでした(苦笑)。

サラリーマンの日常生活における
結婚とか浮気とか昇進とか経費のごまかしとか、まあそういう小さい話の短編集なのですが、
携帯電話がない時代の話なので、今の世の中で読むとリアリティが想像できなくなってしまってます。

とりあえず、主人公に自分勝手な人が多いので、共感はできません。
経費のごまかしのテクニックとか、非常に古典的なもので目新しいものはないので
学ぶべきところもありません。

「こんな作品のレベルで良いのか?」と疑問が湧いてしまいましたが、
著者プロフィール見たら大学の先輩だった(爆)。




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『大手新聞・テレビが報道できない「官僚」の真実』
- 2020/09/14(Mon) -
高橋洋一 『大手新聞・テレビが報道できない「官僚」の真実』(SB新書)、読了。

ここ1年程、保守系Youtube動画を見るようになったので、
高橋センセはよくお見掛けします。
かなり上から目線での物言いではありますが、
本人の状況把握力とか、本質を見抜く力とか、制度構築力とかを目の当たりにすると、
そりゃ他の人間がバカに見えちゃうのはしょうがないようなぁ・・・・・と思ってしまいます。

本作は、モリカケ問題から話が始まるのですが、
私の中では、安倍政権の問題点よりも、野党側の問題点が浮き彫りになった事件だと思ってます。
野党が、モリカケの騒ぎの中で、日本の国益を損ねる問題点がどこにあるのか、その本質を見極めずに
とにかくテレビ受けしそうなポイントばかりを闇雲に突き回して揚げ足取りみたいな表層的な
議論ばかりしているから、安倍政権側も「やってらんないわ・・・・」と答弁が適当になり、
ときどきオカシナことを口走ってしまうので、そこをまた野党が突き回すという構図。

ほんとクダラナイ。

もっと本質的な議論ができていたら、「安倍一強」になんてなってなかったでしょうし、
安倍政権の最後の方の雑な政権運営も、もう少しマシだったのではないかと思われ。

ま、国会の話は置いておいて。

本題の官僚機構の問題点ですが、私はぶっちゃけ、
優秀な官僚たちがある程度勝手に行政機構を運営していても、
それが最終的に国益になるんだったら任せちゃった方が楽だと思ってます。
行政も政治も正解はないんだから、トライ&エラーというか、毎日社会実験の繰り返しだと思ってます。
なので、特定の瞬間を切り取って、「この行政の判断は間違ってる!」とか「この仕組みは不十分だ!」とか
糾弾してもあまり意味がなくて、「だからどう改善するのか」という議論に全力を傾ければよいと思ってます。

今の野党の、テレビのコア視聴者層にウケルことを重視した国会論戦なんかに
官僚や政府首脳の時間を費やすよりも、彼らにしっかり行政を行い、立法の立案も含めて
議論させた方が効率的なんじゃないかと思ってます。

まぁ、政府の上層部も、官僚の幹部たちも、優秀な人ばかりではなさそうだし、
国民感情や世情を知らない人も多そうなので、
あんまり任せすぎると、明後日の方向に暴走する危険もありますが。
適度な三権分立の名目を保ちながら、優秀な人材が肝心なところを切り盛りする
本音と建て前をうまく使い分ける行政機能になったらなぁと思います。

コロナ対策を見ていると、数字の上では日本は結果を残しているとは思うのですが、
ちょっと日本の政府も官僚も、国民への説明が上手くないというか
マスコミよりも、物事の本質を見極めて分かりやすく解説してくれる論客やYouTuber等を上手く活用して、
政府の言いたいことを発言力のある人に代弁させて披露目させるようなテクニックを
使えるようになればいいのになぁ・・・・と思ってしまいました。




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『白洲次郎の日本国憲法』
- 2020/09/13(Sun) -
鶴見紘 『白洲次郎の日本国憲法』(知恵の森文庫)、読了。

伊勢谷友介逮捕のニュースの中で、「白洲次郎」の名前がよく出てきたので、
「そういえば積読があったなあ・・・・・」と取り出してきました。

タイトルからして、特に、戦後直後の日本の立て直し期における
白洲次郎の活躍ぶりを描いた作品かと思ったのですが、
憲法改正については1章しか割かれておらず、羊頭狗肉の感。

白洲次郎の祖父・父の話から書き起こして、
英国留学のエピソードもしっかり描くことで、白洲次郎が戦後の日本社会でもずっと体現していた
「noblesse oblige」の精神とはどういうものかという観点が印象に残りました。
日本社会という、ある種、つかみどころのない、ふにゃふにゃした世界において、
自分のあるべき姿を貫く姿勢に感銘を受けました。

まさに、「principle」に貫かれた人だなと。

そして、その姿は、やはり一番身近に白洲次郎を見ていた奥様の言葉で語られる時が、
最も明確に彼の姿を表現できているなと感じました。

ただ、文章は、著者自身の憲法観とか戦後観とかが結構前面に出てきてて
正直読みにくかったです。
思想の面を横に置いておいても、文章としても、あまり構成がきれいじゃないような気がして、
すんなりとは頭に入ってこなかったです。

過去に読んだ、青柳恵介氏による白洲次郎モノの方が、興味深く読めました。




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