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『数字・データ・統計的に正しい、日本の針路』
- 2023/10/04(Wed) -
高橋洋一 『数字・データ・統計的に正しい、日本の針路』(講談社+α新書)、読了。

統計数字で論理的に解説してくれる高橋センセの本。
『現代ビジネス』の連載からピックアップしてまとめたもののようです。

基本的に、「マスコミは○○と解説して政府等を批判してるけど、データで見たら真実は△△だよ」
という指摘が多く、マスコミのイメージだけのふんわり解説や、
もしくは政府批判ありきの後付け解説とか、そういう判断を狂わせるような情報に対して
正しい判断の仕方を示してくれるので、勉強になりました。

それと、主要な論文も紹介してくれて、学説的には何が現在主流なのか、
そこも教えてくれるので、世界の「常識」みたいになっているものにも触れることが出来、
そこも勉強になりました。

先日読んだ朝日新聞の内部告発的な本の内容を考えると、
意識的な情報誘導もあり、加えて著者の言うように記者の質の低下による理解不足もあり、
マスコミの論陣は、使えないものになっちゃってますよねー。

あと、Youtubeとかで専門家とか本職ジャーナリストによるニュース解説動画を見るようになって、
テレビや新聞と違うのは、彼らは動画内で「本来こうあるべき」「政府方針は間違いで、こういう政策にすべき」
というように、対案を出して批判するところです。

その対案が説得力があるものもあれば、眉唾な感じのものもありますが、
いずれにしても、政府が出してきたもの=現在のように見えて実は過去の出来事に対して
文句をつけるだけのマスメディアより、何かしら自分なりの対案を示してくれた方が、
どちらが良さそうか・・・という観点で自分自身も頭を使って考えるステップが入るので
より深く社会を理解するきっかけになってます。

もう、我が家にはテレビはないし、新聞購読も、今年ついに日経ネット版を解約しちゃったので、
マスメディアとの接点は、Yahooニュースにアップされる新聞記事ぐらいです(苦笑)。
単発の記事だけ読んでいると、新聞全体の論調もつかめなくなり、読んでるこちらも
ますます誤読しちゃいそうなので、Yahooニュースも読む頻度が落ちてきました。
うーん、メディアも変革期ですね。




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『朝日新聞 血風録』
- 2023/10/02(Mon) -
稲垣武 『朝日新聞 血風録』(文春文庫)、読了。

ブックオフで本作を見つけて、タイトルから、
「俺は天下の朝日新聞でこんな凄い取材をやってのけたぜ!」的な本なのか
「俺はアノ朝日新聞の中で俺の信念を貫いたぜ!」的な本なのか
どちらかな?と裏面を見たら、「本当の言論の自由を守るために孤立無援で闘った」とあり、
「お、後者か!」と買ってきました。

第一部は「中国報道への弾圧」とのタイトルで、
著者が『週刊朝日』のデスクを勤めていた時に、野坂昭如氏と安岡章太郎氏の対談を担当し
世界各国の文学比較において、安岡氏の「中国人はユダヤ人よりすごいからね」との発言を
そのまま掲載したことによる社内の騒動の話から始まります。

ちょっと毒は感じる発言ではあるものの「中国人は食えない」という程度の発言が、
なぜそこまで朝日新聞社内で問題視されたのかというところから、当時の朝日新聞と
文化大革命中の中国共産党との関係、北京から日本人記者が全員排除された中で
唯一朝日新聞記者が現地に残れていたという事実、そして朝日新聞社内の社長ら経営陣の中国観など。

はー、ある意味、今よりも中国べったりな感じを隠していなかったようです。
一応「中立公正」を謳う全国紙としては、強気の姿勢だなと思いつつ、
今まで「どこで朝日新聞はおかしくなっちゃったんだろう?」とぼんやり思っていたのですが、
「昔からずっとおかしかった」というのが、どうやら正解のようです(苦笑)

中国との関係以外に、ソ連との距離感、戦時中の大本営翼賛の原因追及をしようとした著者の
論文を骨抜きに編集改竄しようとした話とか、重たい話が続きます。
いずれも、著者自身が体験したことが中心となっており、「なぜそんな事態が起きるのか」という
朝日新聞社の歴史や思想、体制などの構造の問題をしっかり掘り返して解説されるので、
非常に重みのある内容が続き、読み応えがありました。

一方で、最後まで疑問だったのは、朝日新聞社は何を目指しているのかな?ということ。
例えば、個々の有力記者あがりの役員が「俺もナベツネみたいに政界で力を持ちたい!」との
個人的権力欲から来ている行動なのか、それとも「共産主義こそ素晴らしい未来だ!」なのか、
もしくは、その中間の中途半端な「後のことは知らんけど、とにかく現政権を転覆させるぞ!」なのか。

本作を読んでいると、個人の権力欲というよりは、組織として動いているように思えますが、
しかし、あまり大局観は無いように思え、今、足元で起きていることとかを見ると、
「打倒、自民党政権!」一点で、ただただ政府批判してるだけなのかな?と思えてしまいます。

著者が本作内で、朝日新聞の論説主幹が語った「論説委員になる秘訣」を紹介していて、
①まず世の大勢、社内の体勢に逆らわないこと、
②聴衆ならびにその出身階層には絶対に批判を加えないこと、
と暴露しています。

結局、日本という国はこうあるべき、とか、未来ある子供たちのために大人はこうすべき、というような
視野の広い提言ではなく、ただただ大衆の不満を拡声器のように大声で政府にぶつける仕事を
していけばよいんだという考え方のようです。
まぁ、朝日新聞読者がどんどん減っている現在、読者層はかなり特有の思想傾向の人に偏りつつ
あると思うので、ますますこの性格が強まっていくのは仕方ないのでしょうね。

本作は、出版された当時も話題になったようですが、
ネットメディアの発達した現在に発表されていたら、保守界隈を中心に大盛り上がりだったでしょうね。
著者は、2010年にお亡くなりになっているようで残念です。




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『日本はこうして世界から信頼される国となった』
- 2023/09/30(Sat) -
佐藤芳直 『日本はこうして世界から信頼される国となった』(小学館文庫)、通読。

こういう日本持ち上げ本は、「日本のみが際立って凄い」というようなどこか排他性を感じてしまうものと
「他国も日本もそれぞれに良いところがあるけれど日本に関してまとめると・・・・」という感じの平和なものと
2種類あると思うのですが、前者はマウントとるような感じがして苦手です。
本作は、著者がコンサル出身ということだったので、そのあたりは冷静にフラットな目線かなと思い
買ってみたのですが、うーん、どちらかというと前者のような・・・・・。

例えば、エルトゥールル号の難破事故の話は有名ですが、
和歌山の漁民たちは、著者が表現する「日本人として取るべき道」というような意識は
無かったのではないかと思います。敢えて言うなら「人間として」というような近代的な考え方も
無かったように思います。
ただただ、目の前で溺れている人が居たから、海っ端に住むものとして当然助けに行った、
それだけのことではないかと思います。

「日本人」という民族意識や国籍意識、さらには「人間として」というような近代的自我みたいなものは
まだ日本の多くの人は持ち合わせていない、狭いコミュニティ意識の中で暮らしている時代だったのでは
ないかと思います。

しかし、江戸時代から日本は、女性一人でも旅ができるような治安が確保され、
だからこそ多くの人が街道を行き交い、漁村にも行商の人が出入りしたりして、
顔の知らない人物が村にやってきても、不安に感じることはなく、
穏やかに交流するという文化か醸成されていたのではないかと思います。

そういう土壌のもとで、死のリスクに直面している人が目の前に居たら、
できる限り助ける努力をする、それが異国の人でも困っていたら助ける、
そういうお国柄が生まれたのではないかなと思っています。

コンサルだから冷静な文章になるかと期待したのですが、
むしろ、歴史学者や郷土史家のような、歴史の流れをきちんと掴んでいる人の方が、
文章は人情的でも、分析は冷静なんだなと思い直しました。

本作は、Amazonでは評価高いですが、私は、歴史上の出来事をうまく利用して
日本を称賛するるための文章を作り上げたという印象を持ってしまいました。
結論ありきで、歴史上の出来事の描写を都合よく描いているような。

「日本は昔から法を守ることで定評のある国だった」と書かれていますが、
渋沢栄一が「論語と算盤」で、利益だけでなく倫理も説いたのは、
その当時の日本の商業慣習が海外に信用される水準になかったからだと
何かで読んだ記憶があります。(Blog見返しましたが何で読んだか定かではありません)

あんまりキレイゴトで歴史を飾ってしまうのは、根拠のある自信とは別の、
変な意識が日本人についてしまうようで、あまり良い傾向だとは思えませんでした。




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『復讐はお好き?』
- 2023/09/29(Fri) -
カール・ハイアセン 『復讐はお好き?』(文春文庫)、読了。

たぶん、「このミステリーがすごい!2008年版」で上位にはいっているのをみて、
買っておいたのだと思いますが、分厚いので、ずっと積読でした。

連泊の出張があったので持って行ったのですが、なかなかハードスケジュールで
読み進まず、時間かかってしまいました。

生物学者という立場ながら、民間の大農園に買収されて、水質検査の結果を
偽装する仕事で儲けている夫と、大金持ちの両親が事故死して大金を相続している妻、
結婚2年目を祝うクルーズ船の旅に出て、洋上で、妻を海に投げ落とすという殺人事件を
起こした夫。しかし、妻は近くの小島に流れ着き・・・・・・。

海外ミステリをあんまり進んで読まないのは、翻訳の調子が硬くて文章が苦手という面が
強いのですが、本作はポップな日本語になってて、読みやすかったです。
どうやら、著者が、サスペンス作家というよりユーモア作家として認識されているからのようです。

で、肝心の中身ですが、妻が殺人未遂犯の夫に対して、
勝手に家に入り込んで痕跡を残したり・・・・を手始めに嫌がらせを連発して、
夫を混乱の極みに追い込んでいきます。

なるほどねぇ、と思う嫌がらせもありましたが、
この手のサスペンスって、最後にドカーンと相手をやっつける山場を期待しちゃうのに、
正直、イマイチでした。なんだか、フワッと終わる感じ。

そうなると、話が長すぎるという感想にどうしてもなっちゃいます。
500ページ越えの分量は、最後のドカーンに向かって伏線を張ってるものと
勝手に期待しちゃうので。

なんで、これで、2位なんだろ?と思っちゃいました。




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『インテリジェンス人間論』
- 2023/09/26(Tue) -
佐藤優 『インテリジェンス人間論』(新潮文庫)、読了。

著者の手による政界の人物評価となると、
やはりロシア人脈、プーチン大統領やエリツイン大統領を期待する人が多いかと思いますが、
私は日本の政局というか、日本社会を牽引している政治家の能力というものを知りたいので、
本作では、橋本龍太郎総理、小渕恵三総理、森喜朗総理といった面々が
ロシア外交においてどんな腹の括り方をしたのか、その決断の瞬間を
担当外務省職員の目を通して描かれていて、面白かったです。

「外交政策は選挙の票にならない」と言われているせいか、
政治家側も積極的に外交持論を発表しないし、メディアも結果のみの後追い報道で
「こういう外交を展開すべき」「日本の外交政策のためにこの政治家が期待できる」みたいな
報道は少ないですよね・・・・・。

でも、国益の実現のためには外交が最重要な手段だと思いますし、
政治家の大局観が必要で、真の実力を発揮できる分野は外交だと思います。
だから、安倍総理は、現役世代では安定した支持があったように思えますし、
なんとなく小泉総理に大衆人気があったのは日米の距離が近くて明るい雰囲気で
安定していたからなのかなとも思います。

そういう点では、著者のように、当時の総理の間近で、その政治家としての力量を見定めてきた
人物による政治家評は面白いです。

森総理とかは、メディアが植え付けた無能イメージで埋め尽くされてしまってる気がしますが、
もうちょっと実績とか、政治家としての信念とか、人間性みたいなことろは
個別の作品で読んでみたいなと思います。




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『40 翼ふたたび』
- 2023/09/25(Mon) -
石田衣良 『40 翼ふたたび』(講談社文庫)、読了。

40歳になり広告代理店を辞め、先に独立していた先輩の会社に入りますが、
そこで水が合わずに半年で退職、そのまま個人事業主として
「なんでもプロデュースします」というよく分からない事業を始めた主人公。

この現状からすると、なんで広告代理店を辞めちゃったんだろう?と思ってしまう展開ですが、
しかし、もし転職して新しい自分で挑戦しようと思ったら、40歳というのはギリギリの
年齢かと思います。40歳過ぎたら独立は、余程の専門知識か人脈がないと厳しそう・・・・。

私自身、35歳過ぎで脱サラして、地元に戻って会社を立ち上げたのですが、
怖いものなしで新しいことに挑戦できる勇気と、ある程度、会社で経験積んできたという自信とが
良いバランスで組み合わさっているのは30代後半かなと。

当時、転職とかは全然考えていなかったのですが、ちょうど中小企業診断士の資格が取れて、
また会社から半年間の外部研修に出してもらって、半分が会社派遣、半分が個人参加の研修で、
自立心が強い人たちと知り合ったことで、自分の自立心も刺激を受け、
そこに、地元での自分の経験にピンポイントな働き口があったので手を挙げたら通ったという
なんだか運の巡り合わせで選択した独立でした。

5年遅かったら、会社で昇進して部下も増えてた可能性があるので抜けにくいですし、
新しい土地で新しいことを始めるエネルギーも出てこなかった気がします。

本作では、主人公が40歳で経験した1年間を振り返って、
「自分の価値、それもはっきり値段のつく市場価値がわからなこと」に悩んだと述べており、大納得。

例えば、私の仕事は、自分の会社の仕事と、副業的にやっている経営コンサルタントの仕事において
「この仕事を期間○○日、金額○○円でやってくれませんか?」と相手から条件を出されたら
その時の仕事の詰まり具合とか、その仕事で得られそうな人脈とか経験とかを踏まえて
余程内容の乏しいものでなければ受けるのですが、反対に「この仕事、いくらでやってくれますか?」
という問合せって、返答に困るんですよね・・・・特に補助金の書類作成みたいな事務仕事は。
価格競争になって安さだけで仕事を取ってる人も居ますし、正直、書類作成って仕事としては
やってて面白味がないんですよね・・・・。もっと広い事業全体の経営相談という仕事の中で
ツールとして補助金を使用しましょうと提案して書類作成を手伝うのは楽しいんですけどね。

というわけで、40歳という年代の、人生の曲がり角に悩む人たちが
主人公に持ち込んだ相談を解決していくという連作短編集の構成は興味深かったです。
それぞれの登場人物たちの悩みどころも共感できましたし、悩んでいる当事者は
周囲への配慮とかが平均よりも丁寧な優しい人が多いように思えたので。

しかし、完全に物語にのめり込めなかったのは、周囲の登場人物に、時々「???」という
対応をする人がいたから。
例えば、「翼ふたたび」。高校生の時に突然引きこもりとなり、23年間部屋から出てこなかった男。
相談にきた両親は、「引きこもりの原因が思い当たらない」と言いますが、
主人公が引きこもり男と接して引き出した原因は、聞いてみたら、「それ、親が忘れる?!」と
思ってしまうほど、衝撃的な内容でした。
まぁ、そういう親だから子供が苦しんで引きこもりになってしまうのかもしれませんが・・・・。
ちょっと無神経過ぎないか?と思ってしまいました。

なんだか、ちょいちょい残念な人が登場してくるので、そんな不用意な人を登場させる必要
あるのかな?と思えてしまいました。




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『ジゴクラク』
- 2023/09/24(Sun) -
森巣博 『ジゴクラク』(光文社)、読了。

著者本人を彷彿とさせる主人公と、10代後半の少女・舞ちゃんとの博打打ちの物語。

これまで、著者の私小説的な作品は読んだことがありますが、
作り物としての小説は本作が初めてです。

ギャンブルにおいて、いかにドツボに堕ちていくかという悪魔的な要素と、
舞ちゃんとの性的描写とに集中していて、これまで読んだ著作よりも
うーん、読んでいてしんどかったです。

これまでに読んだ本は、例えば、カジノという商売がどうやって金を稼ぐのかという構造的な
面の解説とか、カジノに通う人々は、社会的にどういう立場の人かというような、
博打と社会という関係性を解説している要素が強かったので、
全く博打に縁のない私にも、社会勉強として読んでみると得るものがありました。

しかし、本作は、博打の興奮とエロの興奮が大半を占めていて、
あんまり勉強になる部分がなくて残念。

金森との博打対決の駆け引きでは、人間の弱いところが端的に理解できて、
いざという局面で冷静になれることは大事だなぁと再認識。

博打も、確率論的な数学の観点で分析すると面白い分野だと思うんですけど、
やっぱり集まってくる人たちのギラギラとした金への執着を見ていると、
関わりたくないなぁ・・・・・と思ってしまいます。

本作に登場してくる、中国のおばちゃん4人組のような、
自分のペースで張り続けて、しっかり勝ちを取っていくような根性がないと、
博打の世界には足を踏み入れてはいけないように思いました。




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『大将』
- 2023/09/23(Sat) -
柴田錬三郎 『大将』(講談社)、読了。

近所の公民館の図書室の廃棄本をもらってきたもの。

タイトルから、戦争モノだと思い込んでずっと積読にしていたのですが、
昭和23年の広島から物語はスタート。シベリア抑留から戻ってきた主人公は、
偶然出会った男の家に行くと、そこに初めて訪ねてきた腹違いの妹が金の無心をするのを聞き、
即断即決で自身の故郷松山に連れて帰り、夫婦になるという急展開。

どんな話が展開していくのかと思いきや、父親の遺産を元手に
故郷松山で映画館経営を一気に3館で始めて、ガッポガッポ儲けたと思いきや
住友が見放した造船所の立て直しを行い、さらには道後温泉と対立して奥道後温泉を開くなど
活躍のフィールドに全く制限を設けない自由な行動力で
様々な事業を成功させていきます。

モデルは、坪内寿夫氏だということですが、恥ずかしながら全くお名前を存じ上げませんでした。
映画産業、造船産業ともに斜陽産業になってしまい、奥道後温泉もどうやら昭和のレジャー施設の
ような感じのようですので、今の時代に名前が上がらなくなっちゃうんでしょうねー。

とにかく腹の括り方が尋常ではないです。
「これを実現すべきだ!」「この言い分はおかしい!」と決めたら、
多少時間がかかっても譲らないという姿勢は、
頑固だと思う一面もありますが、しかし、やはり凄いと思います。

造船会社を立て直したのは、経営手法や販売方法を抜本的に改善しているので
ここまで徹底的にできれば、時流もあって成功できるだろうな・・・・とは思えましたが、
道後温泉と対立したとき、最終的に、奥道後の土地を買ってボーリングを行い
温泉を掘り当てようとする行為は、温泉が実際に湧き出たから良いものの、
実業家の正常な思考とは思えない行動力です。
まぁ、映画館や造船所で儲けた資金があるからこそ取れる手法かと思いますが。

地方の実業家というのは、中央の事業家とはまた違った野性味があるので
面白いですね。




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『日本企業は何で食っていくのか』
- 2023/09/22(Fri) -
伊丹敬之 『日本企業は何で食っていくのか』(日経プレミアシリーズ)、通読。

日本企業が世界市場で勝っていくために、どこに注力すべきかを指摘した本。

「電力生産性(=その産業が生み出す付加価値を使用電力量で割り返した数値)」とか
「ピザ型グローバリゼーション」とか、着眼点は面白いと思ったのですが、
どうにも経済オンチの自分には文章に面白さが感じられず。

学者先生ではなく、もうちょっと売文家的な経済ジャーナリストが書いていたら
興味を持てたかも・・・・・。

データと理論で解析する経済学の本、もうちょっと読めるようになりたいわ・・・・。




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『NPSの奇跡』
- 2023/09/21(Thu) -
篠原勲 『NPSの奇跡』(東洋経済新報社)、読了。

こちらも近所のおっちゃんからもらった本。
銀行勤務だった人なので、この手の経営指南本もたくさんお持ちで。

New Production System って何なんだろう?昭和の頃の流行りものかな?と
中身が分からないまま読み始めたのですが、
どうやらトヨタのジャストインタイムの系譜だということは分かったものの、
NPSの説明がないまま、NPS研究会がいかに素晴らしい先見性に富んだ組織化という話と、
研究会の会員企業がNPSに入会する前はいかに酷い経営をしていて、それがどう改革されたか
という自慢話が進んでいくので、NPSの周辺を撫でているだけで、本質が見えてこず、
読んでてイライラ。

これは何かの副読本みたいな位置づけの本なのかな?とも疑いましたが、
本文中に、「NPS研究会は口外不可の秘密の組織」「一業種一社しか入会を認めない」というような
閉鎖的な話を強調しているので、そういうノリを売りにしているのかも・・・・・。

トヨタ生産方式の生みの親・大野耐一を担いで立ち上げた組織のようですが、
本作曰く、大野氏はトヨタ社内でのトヨタ生産方式の目指す方向性に不満があったようで、
当人のやりたい形を追求するために本会が立ち上がったような書きぶりです。

とにかく、本作は、強気の上から目線の物言いが気になります。
トヨタの不十分さを批判したり、会員企業のこれまでの経営を怠慢だと面罵したり、
ロスジェネ世代の私からすると、なんだかバブル崩壊直前の傲慢な日本ビジネス界の姿を
象徴的に体現しているように感じました(爆)。

と、まぁ、印象は悪いのですが(苦笑)、生産方式として言っていることは納得できるというか、
私が経営している会社も、設立から数年たって、結果的には、NPS的な仕組みに
変わってきています。

昔は、原料が安いときに大量に購入し、パートさんなども使って一度に大量生産し、
それを保管して、注文の都度随時出荷していくというやり方をしていました。
人件費を使っても、大量生産すれば、1個当たりの製造原価は数字の上では小さくできます。
でも、保管費用が掛かるし、保管中に破損してしまうものも出るし、
大量生産するための人繰りの調整に時間がかかって思っていたより生産予定が先延ばしになるなど
やりにくさも感じてました。

今は、このラインは超えないという製造原価の上限を定めておき、
それを下回る状況の時に、必要な量のみ生産するようにし、
その代わり、昔は単品種製造だったのを、今は同時に多いときは7本ぐらいのラインを
走らせるように変えました。しかも、パートさん雇わずに1人で作業できるようにしました。
製造原価は多少上がりましたが、保管料とかは大きく削減でき、在庫の滅失も減りました。
人繰りの手間もなくなり、1人さえ都合がつけば、すぐに製造できる体制になり、
かなり効率化できました。

実際に、自分が、このNPS方式に近いような体制で事業運営をできて、売上を伸ばし利益も出せているので
本作の内容は納得できるものでしたが、体験実感をしていなければ、
なかなかスッと納得することは難しいだろうな・・・・と感じてしまいました。

本作では、かなり大口を叩いている印象ですが、
現在のNPS研究会は、どんな業容なんでしょうかね?




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