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『インテリジェンス人間論』
- 2023/09/26(Tue) -
佐藤優 『インテリジェンス人間論』(新潮文庫)、読了。

著者の手による政界の人物評価となると、
やはりロシア人脈、プーチン大統領やエリツイン大統領を期待する人が多いかと思いますが、
私は日本の政局というか、日本社会を牽引している政治家の能力というものを知りたいので、
本作では、橋本龍太郎総理、小渕恵三総理、森喜朗総理といった面々が
ロシア外交においてどんな腹の括り方をしたのか、その決断の瞬間を
担当外務省職員の目を通して描かれていて、面白かったです。

「外交政策は選挙の票にならない」と言われているせいか、
政治家側も積極的に外交持論を発表しないし、メディアも結果のみの後追い報道で
「こういう外交を展開すべき」「日本の外交政策のためにこの政治家が期待できる」みたいな
報道は少ないですよね・・・・・。

でも、国益の実現のためには外交が最重要な手段だと思いますし、
政治家の大局観が必要で、真の実力を発揮できる分野は外交だと思います。
だから、安倍総理は、現役世代では安定した支持があったように思えますし、
なんとなく小泉総理に大衆人気があったのは日米の距離が近くて明るい雰囲気で
安定していたからなのかなとも思います。

そういう点では、著者のように、当時の総理の間近で、その政治家としての力量を見定めてきた
人物による政治家評は面白いです。

森総理とかは、メディアが植え付けた無能イメージで埋め尽くされてしまってる気がしますが、
もうちょっと実績とか、政治家としての信念とか、人間性みたいなことろは
個別の作品で読んでみたいなと思います。




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『40 翼ふたたび』
- 2023/09/25(Mon) -
石田衣良 『40 翼ふたたび』(講談社文庫)、読了。

40歳になり広告代理店を辞め、先に独立していた先輩の会社に入りますが、
そこで水が合わずに半年で退職、そのまま個人事業主として
「なんでもプロデュースします」というよく分からない事業を始めた主人公。

この現状からすると、なんで広告代理店を辞めちゃったんだろう?と思ってしまう展開ですが、
しかし、もし転職して新しい自分で挑戦しようと思ったら、40歳というのはギリギリの
年齢かと思います。40歳過ぎたら独立は、余程の専門知識か人脈がないと厳しそう・・・・。

私自身、35歳過ぎで脱サラして、地元に戻って会社を立ち上げたのですが、
怖いものなしで新しいことに挑戦できる勇気と、ある程度、会社で経験積んできたという自信とが
良いバランスで組み合わさっているのは30代後半かなと。

当時、転職とかは全然考えていなかったのですが、ちょうど中小企業診断士の資格が取れて、
また会社から半年間の外部研修に出してもらって、半分が会社派遣、半分が個人参加の研修で、
自立心が強い人たちと知り合ったことで、自分の自立心も刺激を受け、
そこに、地元での自分の経験にピンポイントな働き口があったので手を挙げたら通ったという
なんだか運の巡り合わせで選択した独立でした。

5年遅かったら、会社で昇進して部下も増えてた可能性があるので抜けにくいですし、
新しい土地で新しいことを始めるエネルギーも出てこなかった気がします。

本作では、主人公が40歳で経験した1年間を振り返って、
「自分の価値、それもはっきり値段のつく市場価値がわからなこと」に悩んだと述べており、大納得。

例えば、私の仕事は、自分の会社の仕事と、副業的にやっている経営コンサルタントの仕事において
「この仕事を期間○○日、金額○○円でやってくれませんか?」と相手から条件を出されたら
その時の仕事の詰まり具合とか、その仕事で得られそうな人脈とか経験とかを踏まえて
余程内容の乏しいものでなければ受けるのですが、反対に「この仕事、いくらでやってくれますか?」
という問合せって、返答に困るんですよね・・・・特に補助金の書類作成みたいな事務仕事は。
価格競争になって安さだけで仕事を取ってる人も居ますし、正直、書類作成って仕事としては
やってて面白味がないんですよね・・・・。もっと広い事業全体の経営相談という仕事の中で
ツールとして補助金を使用しましょうと提案して書類作成を手伝うのは楽しいんですけどね。

というわけで、40歳という年代の、人生の曲がり角に悩む人たちが
主人公に持ち込んだ相談を解決していくという連作短編集の構成は興味深かったです。
それぞれの登場人物たちの悩みどころも共感できましたし、悩んでいる当事者は
周囲への配慮とかが平均よりも丁寧な優しい人が多いように思えたので。

しかし、完全に物語にのめり込めなかったのは、周囲の登場人物に、時々「???」という
対応をする人がいたから。
例えば、「翼ふたたび」。高校生の時に突然引きこもりとなり、23年間部屋から出てこなかった男。
相談にきた両親は、「引きこもりの原因が思い当たらない」と言いますが、
主人公が引きこもり男と接して引き出した原因は、聞いてみたら、「それ、親が忘れる?!」と
思ってしまうほど、衝撃的な内容でした。
まぁ、そういう親だから子供が苦しんで引きこもりになってしまうのかもしれませんが・・・・。
ちょっと無神経過ぎないか?と思ってしまいました。

なんだか、ちょいちょい残念な人が登場してくるので、そんな不用意な人を登場させる必要
あるのかな?と思えてしまいました。




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『ジゴクラク』
- 2023/09/24(Sun) -
森巣博 『ジゴクラク』(光文社)、読了。

著者本人を彷彿とさせる主人公と、10代後半の少女・舞ちゃんとの博打打ちの物語。

これまで、著者の私小説的な作品は読んだことがありますが、
作り物としての小説は本作が初めてです。

ギャンブルにおいて、いかにドツボに堕ちていくかという悪魔的な要素と、
舞ちゃんとの性的描写とに集中していて、これまで読んだ著作よりも
うーん、読んでいてしんどかったです。

これまでに読んだ本は、例えば、カジノという商売がどうやって金を稼ぐのかという構造的な
面の解説とか、カジノに通う人々は、社会的にどういう立場の人かというような、
博打と社会という関係性を解説している要素が強かったので、
全く博打に縁のない私にも、社会勉強として読んでみると得るものがありました。

しかし、本作は、博打の興奮とエロの興奮が大半を占めていて、
あんまり勉強になる部分がなくて残念。

金森との博打対決の駆け引きでは、人間の弱いところが端的に理解できて、
いざという局面で冷静になれることは大事だなぁと再認識。

博打も、確率論的な数学の観点で分析すると面白い分野だと思うんですけど、
やっぱり集まってくる人たちのギラギラとした金への執着を見ていると、
関わりたくないなぁ・・・・・と思ってしまいます。

本作に登場してくる、中国のおばちゃん4人組のような、
自分のペースで張り続けて、しっかり勝ちを取っていくような根性がないと、
博打の世界には足を踏み入れてはいけないように思いました。




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『大将』
- 2023/09/23(Sat) -
柴田錬三郎 『大将』(講談社)、読了。

近所の公民館の図書室の廃棄本をもらってきたもの。

タイトルから、戦争モノだと思い込んでずっと積読にしていたのですが、
昭和23年の広島から物語はスタート。シベリア抑留から戻ってきた主人公は、
偶然出会った男の家に行くと、そこに初めて訪ねてきた腹違いの妹が金の無心をするのを聞き、
即断即決で自身の故郷松山に連れて帰り、夫婦になるという急展開。

どんな話が展開していくのかと思いきや、父親の遺産を元手に
故郷松山で映画館経営を一気に3館で始めて、ガッポガッポ儲けたと思いきや
住友が見放した造船所の立て直しを行い、さらには道後温泉と対立して奥道後温泉を開くなど
活躍のフィールドに全く制限を設けない自由な行動力で
様々な事業を成功させていきます。

モデルは、坪内寿夫氏だということですが、恥ずかしながら全くお名前を存じ上げませんでした。
映画産業、造船産業ともに斜陽産業になってしまい、奥道後温泉もどうやら昭和のレジャー施設の
ような感じのようですので、今の時代に名前が上がらなくなっちゃうんでしょうねー。

とにかく腹の括り方が尋常ではないです。
「これを実現すべきだ!」「この言い分はおかしい!」と決めたら、
多少時間がかかっても譲らないという姿勢は、
頑固だと思う一面もありますが、しかし、やはり凄いと思います。

造船会社を立て直したのは、経営手法や販売方法を抜本的に改善しているので
ここまで徹底的にできれば、時流もあって成功できるだろうな・・・・とは思えましたが、
道後温泉と対立したとき、最終的に、奥道後の土地を買ってボーリングを行い
温泉を掘り当てようとする行為は、温泉が実際に湧き出たから良いものの、
実業家の正常な思考とは思えない行動力です。
まぁ、映画館や造船所で儲けた資金があるからこそ取れる手法かと思いますが。

地方の実業家というのは、中央の事業家とはまた違った野性味があるので
面白いですね。




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『日本企業は何で食っていくのか』
- 2023/09/22(Fri) -
伊丹敬之 『日本企業は何で食っていくのか』(日経プレミアシリーズ)、通読。

日本企業が世界市場で勝っていくために、どこに注力すべきかを指摘した本。

「電力生産性(=その産業が生み出す付加価値を使用電力量で割り返した数値)」とか
「ピザ型グローバリゼーション」とか、着眼点は面白いと思ったのですが、
どうにも経済オンチの自分には文章に面白さが感じられず。

学者先生ではなく、もうちょっと売文家的な経済ジャーナリストが書いていたら
興味を持てたかも・・・・・。

データと理論で解析する経済学の本、もうちょっと読めるようになりたいわ・・・・。




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『NPSの奇跡』
- 2023/09/21(Thu) -
篠原勲 『NPSの奇跡』(東洋経済新報社)、読了。

こちらも近所のおっちゃんからもらった本。
銀行勤務だった人なので、この手の経営指南本もたくさんお持ちで。

New Production System って何なんだろう?昭和の頃の流行りものかな?と
中身が分からないまま読み始めたのですが、
どうやらトヨタのジャストインタイムの系譜だということは分かったものの、
NPSの説明がないまま、NPS研究会がいかに素晴らしい先見性に富んだ組織化という話と、
研究会の会員企業がNPSに入会する前はいかに酷い経営をしていて、それがどう改革されたか
という自慢話が進んでいくので、NPSの周辺を撫でているだけで、本質が見えてこず、
読んでてイライラ。

これは何かの副読本みたいな位置づけの本なのかな?とも疑いましたが、
本文中に、「NPS研究会は口外不可の秘密の組織」「一業種一社しか入会を認めない」というような
閉鎖的な話を強調しているので、そういうノリを売りにしているのかも・・・・・。

トヨタ生産方式の生みの親・大野耐一を担いで立ち上げた組織のようですが、
本作曰く、大野氏はトヨタ社内でのトヨタ生産方式の目指す方向性に不満があったようで、
当人のやりたい形を追求するために本会が立ち上がったような書きぶりです。

とにかく、本作は、強気の上から目線の物言いが気になります。
トヨタの不十分さを批判したり、会員企業のこれまでの経営を怠慢だと面罵したり、
ロスジェネ世代の私からすると、なんだかバブル崩壊直前の傲慢な日本ビジネス界の姿を
象徴的に体現しているように感じました(爆)。

と、まぁ、印象は悪いのですが(苦笑)、生産方式として言っていることは納得できるというか、
私が経営している会社も、設立から数年たって、結果的には、NPS的な仕組みに
変わってきています。

昔は、原料が安いときに大量に購入し、パートさんなども使って一度に大量生産し、
それを保管して、注文の都度随時出荷していくというやり方をしていました。
人件費を使っても、大量生産すれば、1個当たりの製造原価は数字の上では小さくできます。
でも、保管費用が掛かるし、保管中に破損してしまうものも出るし、
大量生産するための人繰りの調整に時間がかかって思っていたより生産予定が先延ばしになるなど
やりにくさも感じてました。

今は、このラインは超えないという製造原価の上限を定めておき、
それを下回る状況の時に、必要な量のみ生産するようにし、
その代わり、昔は単品種製造だったのを、今は同時に多いときは7本ぐらいのラインを
走らせるように変えました。しかも、パートさん雇わずに1人で作業できるようにしました。
製造原価は多少上がりましたが、保管料とかは大きく削減でき、在庫の滅失も減りました。
人繰りの手間もなくなり、1人さえ都合がつけば、すぐに製造できる体制になり、
かなり効率化できました。

実際に、自分が、このNPS方式に近いような体制で事業運営をできて、売上を伸ばし利益も出せているので
本作の内容は納得できるものでしたが、体験実感をしていなければ、
なかなかスッと納得することは難しいだろうな・・・・と感じてしまいました。

本作では、かなり大口を叩いている印象ですが、
現在のNPS研究会は、どんな業容なんでしょうかね?




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『「族議員」の研究』
- 2023/09/20(Wed) -
猪口孝、岩井奉信 『「族議員」の研究』(日本経済新聞社)、通読。

昔、近所のおっちゃんが、家の整理のために大量に本を捨てるというので、
ほぼ、そっくりそのままもらってきました。
かなり古い本ばかりだったので、ほぼそのまま我が家に積読になってるのですが(苦笑)、
ちょっとずつ消化しませんとね。

「族議員」って、平成以降は力を失ってるようなイメージで、
勝手に昭和の政治スタイルだと思ってたのですが、しかし、今もしぶとく「〇〇族」という
レッテルを貼られてる政治家もいるので、実態としては残ってるんでしょうね。

なんとなく「族議員」というくだけた呼び方から、本作は、政治ジャーナリストによる
政治家の利権争いとか政局での闘争とかを面白おかしく書いているのかと思いきや、
「研究」というタイトル通り、真正面から論じたものであり、著者も学者さんでした。
あとで検索してみたら、奥様は男女共同参画大臣も務めた猪口邦子氏だそうで、
「あれ?古い本なのに、奥様は現役政治家?年の離れた夫婦なの?」と思ったら、
猪口議員、もう70代なんですね・・・・・お若く見えるわ。

さて、どうでもよい話から入ってしまいましたが、まじめな論文で、かつ時代が古いので、
梶山静六氏とかの大物政治家しか誰だか分からない面もあり、
面白さには欠けてしまうところがありますが、しかし、例えば茨城県の衆議院議員全員の動静を
地元紙の議員動静からすべてデータ化して、政治家としての活動が月何時間で、
地元での活動何割、国会での活動何割、党本部での活動何割、業界団体での活動何割と
細かく調査したうえで、その政治家のスタンス(族議員か、二世議員か、政策通か等)で、
政治家としての活動方針と実際の行動を評価していて、興味深かったです。

あと、当時は中選挙区制度なので、自民党議員間で票を食い合ってたりという話もあり、
エンタメとしての選挙はやっぱり中選挙区制の方が面白いよなぁ・・・・・なんて思ってしまいました。
あと、茨城県でこんなに当選者が出るんだ・・・・やっぱり都会なんだな・・・・・・と一瞬思いましたが
今は、小選挙区制だけでなく比例代表もあるから、そう感じちゃうのか、と気づきました。
比例復活という仕組みも変ですが、陰でこそっと当選してる感がある比例代表は
あんまり良い制度に感じられないです。
どうせ二大政党制になれなかったのなら、中選挙区制に戻したら面白いかも・・・・なんて
あんまり詳細を詰めることなく考えてしまいました。




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『経営コンサルタントハンドブック』
- 2023/09/19(Tue) -
野口吉昭 『経営コンサルタントハンドブック』(PHP研究所)、読了。

世の中には、経営者向けの経営ハンドブックはあふれていますが、
経営コンサルタント向けの本は少なく、著者の本は何冊か読んでます

本作は、「ハンドブック」の名の通り、要点だけを詰め込んだ冊子ですが、
無駄を一切省いた内容で、キレイに整理されているので、
一通りの経営手法を学んでいたら、辞書のように使えるんじゃないかと思います。

過去に勉強したことばかりの内容で新鮮味がないという点もあるかもしれませんが、
実際にコンサルの仕事をしていると、自分の使いやすいスキームでばかり整理してしまう傾向が出るので
たまに教科書を読み直して、「ああ、そういえば、こういう整理の仕方もあったな」と
思い出すのも必要な作業かと思います。




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『東大が倒産する日』
- 2023/09/17(Sun) -
森毅 『東大が倒産する日』(ちくま文庫)、読了。

タイトルから、国立大学の独立法人化という局面において、
東大をはじめとする京大、阪大などの有力な国立大学の経営のあり方について
物申す的な本かなと思って買ってきたのですが、
その話もありつつ、学生の質の変化とか、試験の採点作業に対する思いとか、
いろんな話が語られているので、ちょっとタイトルは編集者が釣り過ぎな感じがします。

内容としては京大の話なのに、タイトルに東大を付けてしまうのは、
編集者の売らんかな根性だと思いますが、著者はきっと望んでないことだと思いますし、
森毅ファンだったり京大ファンだったりも望んでないことだと思いますし、
タイトル通りの内容を期待して買った人も裏切られてしまうという点で、
あんまり良い編集方針ではないと思ってしまいます。
祖父は森毅ファンかつ京大ファンだったので、本作のタイトルを知ったら憤慨しそうです(苦笑)。

さて、内容ですが、豊田充氏がインタビュアーとなって
著者のざっくばらんな飾らない言葉で、大学教育にかける思いが記録されています。

祖父が京大ファンだった理由は、日本一の東大の真面目さやお堅さ(立場が立場なので仕方ないですが)
に対して、個性を尊重するユニークな大学の方針で、ノーベル賞受賞者の輩出など
素晴らしい業績を出しているという点でした。
そして、森毅先生は、その京大の良い面、もしかすると悪い面も含めて
一人の教育者として体現しているというところに祖父は感銘を受けていたのだと思います。
もちろん祖父が数学マニアだったというところもあります。

本作で、京大の入学試験における採点基準を設けているものの、
実際に答案を採点し始めて、採点基準には無かった要素が答案から見えてきた場合は
基準を事後変更して、もう一度最初から採点をし直すというエピソードは、
京大の個性重視のユニークさ、教授陣が学生の意見も尊重している精神性を
象徴的にあらわしているのかなと感じました。
当初の予測とは外れた反応が返ってくることを、嬉しがってるようにさえ思えます。

そして、「ニセ学」のススメ。
「ニセ学」とは、受講申請していない授業を黙って見に行くこと、
京大生以外にも、学外から無断で授業に参加することを指す言葉だそうで、
私の母校には無かった言葉です。
時代のせいかも知れませんが、一橋大は、他学部の授業を取ることを視野を広げるという点で
推奨されていたようなところがあり、正式な単位もくれました。
なので、私は社会学部でしたが、法学部、商学部の授業は取ってました。
経済学部は、わたくし経済学オンチなので取る勇気が出なかったですが(苦笑)。

ただ、森先生が指摘するように、こうやって制度化してしまうと、
逆に単位取得が認められた他学部の授業は取りますが、
認められない授業(専門性の高い授業や、一定の授業の単位取得後でないと受けられない授業とか)は
最初から関心の外に置いてしまっていた気がします。
単位くれなくても、黙って覗きに行くことはできたのに、したことがなかったです。
世間的に有名な教授の授業は、単位関係なく、1回でも聞いておけばよかったなと後悔してます。
その分、卒業後にOB会で行われる人気教授陣の講座には良く通いましたが。

森毅先生みたいな、ご意見番的な大学教授って、今、誰がその座を引き継いでるんですかね?
山中伸弥先生ですかね?内田樹先生ですかね?
前者はまだまだ研究者としてバリバリですし、後者はSNSでの左翼傾倒が強すぎて
世間的にウケが悪いような気もしますし・・・・・。
ちょっと大学教育もこじんまりしちゃってる感じがありますね。




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『日本人のためのピケティ入門』
- 2023/09/15(Fri) -
池田信夫 『日本人のためのピケティ入門』(東洋経済新報社)、読了。

一躍時の人となった感のあるピケティですが、
経済学オンチの私には、そもそも多くの人が脱落しているという『21世紀の資本』は
とても読めそうにないので、この薄ーい本で挑戦。

サブタイトルに「60分でわかる」とある通り、サクサク読めます。
前半はQ&A形式で『21世紀の資本』の中身を解説し、
後半は、著者なりに日本社会について考察したものなので、
ピケティの話は、実質的には前半の数十ぺージのみです。

で、その前半の解説ですが、真正面からピケティの著作を解説するのではなく、
むしろ、「データ分析に基づく経験則の発表であり、体系的な理論ではない」とか
「各国の長期的なデータの解析を行いその比較を文章に落とし込んでいるのでとにかく長い」とか
内容よりも、読んだ人がひっかる部分について、それはこういうことなんだよとフォローしており、
そこが分かりやすさの秘訣かなと思いました。

ピケティの著作を読んで、しかも相応に内容を理解している人からすれば、
いくらなんでも端折り過ぎだとか、単純化し過ぎだという批判はあるえしょうけれど、
著作を読んでもたぶんチンプンカンプンに終わってしまうであろう私からすると、
こういうレベルの解説が一番ありがたいです。

少なくとも、”Occupy Wall Street!”において、どういう役割を果たした著作なのかは、
ニュース解説レベルで理解できました。

ひとつ気にすべきとしたら、本作の著者の池田信夫氏は、Twitterでの発言とかを見ていると
自分の思想信条がハッキリとした人で、それに対立する思想信条を持つ人には
厳しい言葉で糾弾したり、皮肉な物言いをしたりする人なので、
本作においても、ポジショントーク的な部分はあるんだろうなぁ・・・・と思います。
どこがどうポジショントークなのかは、私の能力では説明できないですが(苦笑)。
鵜呑みにせずに、こういうピケティ解説もあるよ・・・というぐらいで受け止めたらよいのかなと
思っています。






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