『犬とハモニカ』
- 2017/05/25(Thu) -
江國香織 『犬とハモニカ』(新潮文庫)、読了。

サクッと読める小説はないかな・・・・と手元の積読本を探して、
見つけたのがこの一冊。薄い本に6つの短編が収まっています。

冒頭の表題作「犬とハモニカ」。
とある空港の到着ロビーで行きかう人々の生活を
断片的に描いてみせた作品。

何という出来事が起きるわけではないのですが、
短い描写の中で、それぞれの人が背負った人生の在り様をズバッと見せており、
それぞれの人が交じり合う一瞬を捉えて、お互いの人生を切れ味良く評価させています。

この技量たるや!
どうやったら、こういう作品を描こうと思いつけるのでしょうか。
物語の構成、登場人物たちの人間性、交じり合う一点の内容、
どれも絶妙な匙加減で作られています。

後で裏表紙を見たら、川端賞受賞作だとのこと。
そりゃ、そうですわな。素晴らしい作品です。

他にも、人間たちの交じり合えない様子を描いた短編が並びますが、
印象に残ったのは、『源氏物語』を現代風にアレンジした「夕顔」。
女心の機微が、イマドキの女の子の言葉遣いで描かれているので、
妙にリアルな感じがして面白かったです。


犬とハモニカ (新潮文庫)犬とハモニカ (新潮文庫)
江國 香織

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『表参道日記その一』
- 2017/05/24(Wed) -
伊藤公一 『表参道日記その一』(幻冬舎)、読了。

著者は、表参道にある伊藤病院の三代目医院長。
日本全国に名の知られた甲状腺の専門病院です。

実は、私もバセドウ病を患っていたので、
東京に住んでいた頃は伊藤病院にお世話になっていました。
症状的には軽いものから特に悪化せず、しばらくして寛解と言われたので、
今は通院していません。

でも、一時期は、手術が必要かも・・・・・なんていう診断をされ、
いろいろ検査を受けながらドキドキしたものです。

という、様々な思い渦巻く伊藤病院ですが、
院長先生による雑誌連載のエッセイです。

3.11直後の文章には、甲状腺ガンの話題が登場しますが、
それ以外は、職責を離れた日常エッセイがほとんど。
その時々の時事ネタを織り込みながらも
爽やかなエッセイに仕上がっています。

ただ、逆に、3.11の直後のエッセイが物足りない感じも。
あれだけフクシマの放射能漏れと、その影響について議論になっていた時に、
甲状腺がんの専門家としての伊藤病院って、何か発言したような記憶がないなぁと。

過剰なマスコミの報道には乗っからないように、
専門家として冷静な対応を続けていたのかもしれませんが、
当時の印象にないというのは、甲状腺を患っていた私自身としても
抜かったなぁ・・・・と反省しました。
もっと、その言説を追っておくべきだったなと。

本作の中では、40歳以下の若い人には影響がある可能性があるが、
それ以上の年齢の人には有意な影響はないということが書かれています。
この情報だけでも、冷静にリスクに向き合うきっかけになるのではないかと思いました。
ま、小さい子供を持っている人たちにとっては、
逆に恐怖を増す言葉なのかもしれませんが。

3.11の時代を東京で過ごしながら、
伊藤病院の情報発信を捉えていなかった、意識していなかったのは、失敗でした。


表参道日記表参道日記
伊藤公一

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『飯田線・愛と死の旋律』
- 2017/05/23(Tue) -
西村京太郎 『飯田線・愛と死の旋律』(集英社文庫)、読了。

息抜きに十津川警部をば。

国土交通省(と思われるK省)の部長が帰宅途中に撲られ意識不明に陥る。
航空事故調査委員会の結論に強硬に反対していた部長は、
当該事故を起こした航空会社に命を狙われたのではないかと噂され・・・・。

というようにまとめると、社会派事件のような期待感を持ちますが、
被害者部長の意識を取り戻すべく、奥様が耳元でオルゴールで思い出の歌を聞かせて
必死に看病を続けるという夫婦愛の話に重きが置かれていて、
社会派サスペンスとしては掘りが浅かったです。

事故調査委員会と国策融資という興味深いテーマは、
上手く料理できれば重厚な作品になり得ただけに勿体ない!


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西村 京太郎

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『真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ』
- 2017/05/22(Mon) -
大沼紀子 『真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ』(ポプラ文庫)、読了。

時々、本読みブロガーさんのところで見かける作品だったので
気になっていましたが、ブックオフでワゴンセールされていたので買ってみました。

渋谷駅にほど近い国道246号線のそばで、深夜23時に営業開始するパン屋。
そこに出入りする人たちの物語。

渋谷近辺なら、こんなパン屋もありなのかもと思わせる設定ですが、
しかし、その所在地と描写される人々の暮らしぶりとが
なんだかちぐはぐな印象です。
地名を登場させずに文章を読んでいたら、渋谷近辺とは思えないというか。

いじめ、ネグレクト、性同一性障害、過剰教育、ひきこもり、盗撮など
社会問題に苦しむ人々をこれでもかというぐらいに登場させていますが、
問題の掘り方が浅いので、どのお話にも不快さが残ってしまうというか、
問題児側だけでなく問題解決側も含めて。
関係者の心の浅さが、強く印象に残ってしまいます。
平たく言うと、こんなに簡単に物事は好転しないよ・・・・・というところでしょうか。

パン屋の設定は新鮮なので、サクサク読めますが、
扱っているテーマの深刻さの割には心に響かない感じです。
この軽さでいくなら、もう少し軽いテーマにするとか、
社会問題を扱うにしても症状の軽い人を扱った方が読後の納得感が高い気がします。

本作はシリーズ化されているようですが、
2作目以降も、重たい問題を抱えた人々がジャンジャン登場するのかしら?
通常、シリーズものって深刻になっていくものですからね。
読み進めるかは、ちょっと検討します。


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大沼 紀子

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『自分の頭で考えるということ』
- 2017/05/21(Sun) -
羽生善治、茂木健一郎 『自分の頭で考えるということ』(大和書房)、読了。

あまりに、ちきりんさんの本と似ているので、
このタイトルどうなのよ?と、編集者に言いたくなっちゃいましたが、
中身は面白かったです。

将棋の電脳戦の話から始まりますが、
将棋ソフトの計算ロジックの変遷や、棋士の局面の読み方のクセといったところが
比較されて話されており、特に、棋士の方があの長考の中で
一体何を考えているのかが分かったので、興味深かったです。

そして、その棋士の頭の使い方が、
日本の職業人として極めて特殊なものであるという分析を
茂木センセが行うことで、より広い視野から
将棋というものが見えてきて、面白かったです。

そもそも棋士の心情として、
対局で勝つこと以上に、以前の対戦とは同じ局面にしない、異なる手を打つことを
意識して、さらに棋士によっては自分が美しいと感じる将棋を指すという
様々な制約を設けていることに驚きました。
ものすごく歴史というものを大切にしていて、
しかも自分の差し手が記録され後世に残るということを
これほどまでに強烈に意識している職業はないだろなと。

ごく僅かな選ばれた人だけがなれるプロ棋士という職業の自負心が
強く感じられる対談で、将棋にそれほど興味のない私でも
面白く読める対談でした。


自分の頭で考えるということ自分の頭で考えるということ
羽生 善治 茂木 健一郎

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『決定で儲かる会社をつくりなさい』
- 2017/05/20(Sat) -
小山昇 『決定で儲かる会社をつくりなさい』(河出書房新社)、通読。

またまた小山本ですが、
前回読んだものほどの新鮮味はなかったです。
同じことの繰り返しに感じた部分が多いからでしょうかね。

しかし、やっぱり、徹頭徹尾、中小企業目線で書かれているので、
世の中の経営者の大半を占める中小企業経営者にとっては
参考になる部分が多いのではないでしょうか。

特に中小企業では、人的リソース不足の観点から、
どうしても経営者1人に様々な判断や重要な行動が集中してしまうところがあり、
それをどうやって1人でこなしていくか、どこを部下に任せるのか、
任せるならどうやって任せるのかといった課題にぶち当たります。
そこに上手く答えを見出しているのが著者の経営方針であり、
経営者1人の力を無限のものと考えないところや、
部下の能力を過度に期待しないところ等が、
世の中の経営者に支持されるポイントではないでしょうか。

著者の本は、経営者の本というよりは、
経営実務の成功体験を持つ経営コンサルの本という感じで、
自分の経験でありながら、客観的に語ってくれるところが
分かりやすさの秘訣なのかなと思いました。


「決定」で儲かる会社をつくりなさい「決定」で儲かる会社をつくりなさい
小山 昇

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『道元と曹洞宗』
- 2017/05/19(Fri) -
山折哲雄 『道元と曹洞宗』(歴史新書)、読了。

これも近所のおじいいちゃんからいただきました。

近所のお寺が曹洞宗の系列なので、
たぶん、地元には曹洞宗を信仰する人が多いのでしょう。
女性たちは「梅花」に勤しんでいるグループも居ます。
(引っ越してきた当初、「ばいか」という言葉の意味が分かりませんでした・・・)

私自身の家の宗派は浄土宗なので、
禅宗の教えというのは、親近感がないのですが、
なぜ座禅をするのかという点に、シンプルな考え方があって
分かりやすいし、行動しやすいというのが、庶民に広まったポイントなのかなと。

特に、最初は臨済宗に学びながらも、
途中で独立して曹洞宗を立ち上げていく道元の姿が、
差別化の要素を理解するのに分かりやすかったです。

本作では、あまり突っ込んだ枝葉末節の解説はばっさりカットして、
座禅の大切さや、臨済宗から離れた経緯など、
大事なポイントに絞って記載されているので、より分かりやすかったのかなと思います。


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山折 哲雄

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『この世はウソでできている』
- 2017/05/18(Thu) -
池田清彦 『この世はウソでできている』(新潮文庫)、読了。

清彦センセの本は、刺さったり刺さらなかったり
温度差が結構あるのですが、
これは「世の中のウソ」という社会科学的に興味深そうなテーマを扱ってそうで、
期待していたのに・・・・・・・イマイチでした。

まえがきにて、ウソと社会システムの関係から書き始めていたので、
「これ、これ!」とワクワクしたのですが、
本文に入ったら、なんだか小さな話を突き回している印象が強くて、
イマイチ乗っていけませんでした。

社会の常識を分かりやすく批判するために、
些細なことにケチをつけている感じと言ったらよいのでしょうか。

もっと大きな社会のウソをしっかり書いてくれよ~と思っちゃいました。


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池田 清彦

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『邪悪なものの鎮め方』
- 2017/05/17(Wed) -
内田樹 『邪悪なものの鎮め方』(バジリコ)、読了。

やっぱり内田センセイ、好きだわー。
という感想になった今回の読書。

合理的な判断をできなくさせるような心理的な制約。
意識的にか、無意識的にかに関らず、判断を誤らせる罠が
どういうところに仕掛けられているかを、具体的な時事ネタ等をもとに解説・分析した本です。

分析・考察の内容が、私の嗜好に合っているというのはもちろんですが、
街頭での交通遺児のための募金活動に対して「うるせえなぁ」と書いてしまう
その突き放し方が、心地よかったり。

構造主義的な系譜を、現実世界における諸問題を通して
分かりやすく語り掛けるのが、内田作品の魅力だと思っています。

なぜ、そのような思考をしてしまうのか、
なぜ、他のところには価値を見出さないのか、
視点を変えると、この問題はどういう風に見えるのか、
そういう、一段上の気づきを与えてくれます。

ノートまとめがまだ終わっていないので、
まだ、フワッとした感想に過ぎませんが、
もう一度、ノート整理を通して、世の中の見方を考えたいと思います。

あと、ブログからの抜粋ということですが、
無料で読めるブログではなく、やっぱり本で読んでしまうのは、
編集者の抜粋力(本作で言うと「邪悪」「呪い」にまつわるテーマのエントリに絞り込むこと)が
効果的で読みやすくなっているからか、
それともPC画面の前で読むのとは異なり、本を読むという没我の時間が特別なのか、
そこは分かりませんが、本という媒体がやっぱり好きだということを実感しました。


邪悪なものの鎮め方 (木星叢書)邪悪なものの鎮め方 (木星叢書)
内田 樹

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『千円札は拾うな。』
- 2017/05/16(Tue) -
安田佳生 『千円札は拾うな。』(サンマーク出版)、通読。

それなりにヒットしていた作品だったような記憶が。
100円だったので今更ですが読んでみました。

タイトルからは、人生哲学というか行動の価値観の話かなと予想したのですが、
会社経営にあたっての著者なりの教えが書かれています。

正直、読書前に予想した内容と
実際に書かれている内容の方向性が違っていたので、
読みづらかったというか、全然言葉が頭に入ってきませんでした。

なんで、この本がヒットしたのか、良く分からないまま終わってしまいました。

時代の寵児だったということなのでしょうかね。


千円札は拾うな。千円札は拾うな。
安田 佳生

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