『怖い絵 泣く女篇』
- 2016/08/29(Mon) -
中野京子 『怖い絵 泣く女篇』(角川文庫)、読了。

大ブームになった『怖い絵』ですが、
本作は続編のようです。

最もインパクトのある絵をシリーズ1作目に持って行ったのでしょうから、
本作に登場する作品は、多少地味な感じでまとまっているのではないかと推測。

ただ、地味な分、じわじわと来る恐ろしさがあります。

ドレイパー「オデュッセウスとセイレーン」や、ベックリン「死の島」には、
絵そのものから受ける不気味さが感じられますが、
ブリューゲルの「ベツレヘムの嬰児虐殺」などは、
その歴史背景を解説されることで、より怖さが引き立ちます。

さらには、ミレーの「晩鐘」のような作品からは、
一見すると怖さは感じないのですが、
他の画家がこの作品をどう見ていたのかという解説の内容の方に怖さを感じたり。

でも、一番怖いと思ったのは、絵の中の無表情の人たち。
カレーニョ・デ・ミランダの「カルロス二世」、フォンテーヌブロー派の「ガブリエル・デストレとその妹」、
ファン・エイク「アルノルフィニ夫妻の肖像」など、どれもこれも無表情、もしくは薄い表情。
その裏に潜んでいそうな本音の部分が皮を破って飛び出してきそうで、気味が悪いです。

結局、一番怖いのは、人間そのもの。


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中野 京子

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『薄毛の秋』
- 2016/08/28(Sun) -
風野真知雄 『薄毛の秋』(文春文庫)、通読。

いただき物の本なのですが、
シリーズの3話目と5話目のみをいただくという状況で、
良く分からないまま3話目を読んでみました。

連作短編集と勝手に決めつけていたのですが、なんと長編でして、
芸者の髪切り事件、下着ドロ、犬が屋根に上がってた事件など、
うーん、このネタで引っ張るのかぁ・・・・・と思ってしまいました。

段々と大きな事件につながってはいくのですが、
最初に、軽い謎解きの作品だ・・・・と思って読み始めてしまっているため、
気持ちが追い付けませんでした。

1作目から読んでたら、また違ったのかもしれません。


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『星に願いを』
- 2016/08/26(Fri) -
重松清 『星に願いを』(新潮文庫)、読了。

1995年から2000年までの6年間を、
3つの家族の姿を通して映し出した作品。

時事ネタがふんだんに盛り込まれており、
しかも、ストーリーに絡めるのではなく、
あくまで当時のニュースとして断片的に突っ込んでくることで、
その時事性が際立っています。

主要登場人物は3人。
定年が見えてきたアサダ氏、
幼い娘の一つ一つの行動が心配でならないヤマグチさん、
自分の進路がまったく見えてこない高校生のタカユキ。

タカユキと私は、1学年違うぐらいのほぼ同世代の年齢設定。
タカユキが経験した世界は、私が経験した世界でもあります。
阪神大震災、サリン事件、たまごっち、・・・・・。

思いもよらない出来事の前に、自分はどうしたらよいのか
分からなくなってしまう感覚。
とにかく静観した私と、ボランティア活動に参加したタカユキ。
同じように周りが見えていなくても、行動できた者と行動しなかった者は、
その出来事が人生にもたらす意味合いの重さが全く異なるんだろうなぁと
タカユキの行動力が羨ましかったです。

さて、物語の方ですが、
3つの家族を通して、この年代の日本を写し取るということには
同時代を生きた者なら、ある程度成功していると感じるでしょうが、
しかし、小説として面白かったかと言われると・・・・・うーん。

まず、3つの世界が独立して展開していくのに、
しょっちゅう切り替わるので、読んでいて落ち着きません。
そして、アサダ氏、ヤマグチさん、タカユキという呼称も、
他の家族が下の名前で、しかも漢字表記で書かれている中で、
何だか変に浮き上がってしまっていて、文章として読みづらかったです。

実験的な作品だとは思いますが、
実験には形式的には一定成功しても、結果が伴わなかった印象です。


星に願いを―さつき断景 (新潮文庫)星に願いを―さつき断景 (新潮文庫)
重松 清

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『お魚の大疑問』
- 2016/08/25(Thu) -
謎解きゼミナール 『お魚の大疑問』(KAWADE夢文庫)、読了。

お気楽お魚エッセイ。
知らない情報も結構載っていて面白かったです。

基本的に、食材としての魚を取り上げているので、
食べられる魚の話が大半でしたし、
魚以外の魚介類の話も多かったです。

今度は、純粋な魚に絞って、
食用魚以外の魚にも話を広げて
この手の本を読んでみたいです。


知ってビックリ!お魚の大疑問 (KAWADE夢文庫)知ってビックリ!お魚の大疑問 (KAWADE夢文庫)
謎解きゼミナール

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『身がわり』
- 2016/08/24(Wed) -
有吉玉青 『身がわり』(新潮文庫)、再読。

何度目になるでしょうか。

中学生の時に初めて読んで、
主人公が母や家族や周囲の大人たちに対して向ける目に深く共感し、
我が事のように作品の世界を体験できたことから
「本って、こんなに凄いんだ!」と、読書世界にのめりこむことになった思い出の一冊です。

大作家を母に持ち、父がいない分、母だけが親だった著者。
忙しい母は、構えるときに子供に構おうとする、モザイク模様の愛情を注ぎます。
子供は、その愛情の重さを感じながらも、負担にも感じ、ズレているとも感じ、
母を避けようとする時期が、これまたモザイク状に発生します。

こんな、すれ違いの母と娘の物語を娘の視点から
非常に冷静なまなざしで紡いでいきます。
母に対してだけでなく、自分自身に対しても冷徹なまなざし。

この冷徹さがあるからこそ、
一見、心変わりのような行動の変化が起きても、
「そういう心境の変化によるものなのか」と納得でき、
1人の人間の姿として、太い軸を感じることができます。
この観察力と感応力と分析力は凄いなといつも感じます。

今回の読書では、祖母の姿が一番印象に残りました。

有吉佐和子の秘書としてテキパキと物事を仕切る祖母、
ちょっとズレた母の愛情の発露を、一緒に苦笑してくれる祖母、
著者が母の意にそわないことをするときに共犯者になってくれる祖母、
しかし、母の死から、次第に祖母の中で母の神格化が始まり、
3人のバランスが、2:1になるようになっていきます。

逆縁という罪。
それを、この祖母の変化で強く感じました。

祖母が印象に残ったのは、
実際に私の祖母が逆縁の経験をしているため、
その打ちひしがれた姿が目に焼き付いているからかもしれません。
もしくは、自分の母が「おばあちゃん」と呼ばれる年代に入ってきたせいかもしれません。

この本を読んで、いつも読後に心に誓うのは、
自分の家族とは、自分だけに与えられた家族、
どの他の家の家族とも違う、オリジナルのものである。
だから自分の家族を大事にしなければいけないし、
自分の家族を大事にできるのは自分たち家族のみだということです。

今日も、そのような気持ちを新たにしました。


身がわり―母・有吉佐和子との日日 (新潮文庫)身がわり―母・有吉佐和子との日日 (新潮文庫)
有吉 玉青

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『デイ・アフター・トゥモロー』
- 2016/08/23(Tue) -
『デイ・アフター・トゥモロー』

毎日、35度オーバーの暑い日々が続いていますが、
今日は氷の世界の映画を観てみました。

地球温暖化の影響で、極地の氷が溶けだし、
塩分濃度が変わることで海流の流れが変化し・・・・・
そして陸上は氷の世界になった。

何だか、原因と結果が途中で大きくスキップしているような印象ですが、
まぁ、そもそも地球温暖化論は現在も真っ二つに分かれてというか、
多方面で議論中のテーマですから、こういう突飛な想定が出てきても
あまり驚かなくなってきました(苦笑)。

さて、ストーリーですが、主人公の考古気象学者が
政府の議論の輪に入れてもらえず、かといって単独行動の暴挙にも出ず
じっと自分の研究室で観測と分析を継続するという
非常に地味な、ある意味で科学者らしい行動を選択したことで、
あぁ、この映画は、基本的にCG映像が全てなんだなと気づき、
それからはあんまり頭を使わずに映像重視で眺めてました。

世間的には、竜巻の描写や氷の世界の凍てついていく描写が素晴らしいという
評価だったのではないかと想像しますが、
私としては、ハリケーン級猛吹雪を起こした低気圧の雲の渦巻きの姿が
美しいと感じ入りました。
動きはそれほどないシーンですが、やっぱり気象の面白さの基本は低気圧にある気がします。

そして、気象レーダー画面ではあったものの、
ハリケーン級の巨大低気圧が、アメリカ大陸、ヨーロッパ大陸、アジア大陸にそれぞれあって、
そこから3つが統合されていくというシミュレーション画像に
不謹慎ながらワクワクしてしまいました。

ま、現実世界では起こり得ないと思われる気象現象ですが、
この映画を通して、まるで人間が環境を壊したといわんばかりのメッセージは
ちょっとなぁ・・・と思ってしまいます。

もちろん、一つの生き物として、身の丈に合った生活をし、
環境を汚すようなことや、資源を無駄使いするようなことは避けるべきですが、
しかし、人間に地球をどうこうするような力なんて無いと思うんですよ。

極地の氷が溶けたことに端を発して、
その影響が様々な形で地球上の現象として現れましたが、
その後の氷河期的状況は、地球が変化に対応しようとする過程であって、
地球の意思によるバランシングだと思うのですよね。
それがたまたま人間の生活には不具合な環境になってしまっただけであって
地球からすれば、灼熱地獄だったり、凍てつく氷河期だったりを繰り返して
今の環境になっているわけですから、1つの局面に過ぎないと思います。

人間中心の基準で地球を測ろうとする姿勢は、
私としては、不満です。
そのような人間の傲慢な姿勢にも、本作で警告を発してほしかったです。


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『エボリューション』
- 2016/08/21(Sun) -
『エボリューション』

アリゾナの砂漠に落ちた隕石から発見された
地球外由来の単細胞生物は、瞬く間に進化を遂げて
観察に現地に向かうたびに、新たな生物が増えていく・・・・・。

設定は非常に興味深いものでしたが、
映画のノリがかなり軽いので、
あぁ、これは真剣に見ちゃいけない映画だな・・・・と観念し、
途中からは刹那的なギャグ中心に楽しみました。
ま、お気楽SFコメディです。

エイリアンの侵入事案だというのに
軍隊を指揮するのは頭コチコチの旧式将軍。
このキャラクター配置の時点で、ドタバタコメディ決定ですが、
もし、シリアスなSFサスペンス映画として描いたら
どんな出来になってたのかなと、そちらも見てみたい感じです。

エイリアンが、人間の日常世界に入ってきたときも、
そこからアウトブレイクになるのかと思いきや
一匹、二匹紛れ込んできただけのグズグズの展開に苦笑。

最後も、リスク管理ゼロの突撃戦略で
ご都合主義的ハッピーエンドを迎えますが、
ま、こういうお気楽さがハリウッド作品の一つの存在価値なのかも。


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『オープン・セサミ』
- 2016/08/19(Fri) -
久保寺健彦 『オープン・セサミ』(文春文庫)、読了。

お初の作家さんです。

冒頭の作品で、新任教師が直面する学級崩壊の現場という
現代の社会問題を真正面から捉えた舞台設定に
その描写の説得力に驚かされながら、
最後はどのように結論付けるのだろうかと期待したら・・・・・
なんとも拍子抜けのご都合主義で、えっ・・・・って感じでした。

次の「はじめてのおでかけ」でも、
娘が父親に向ける厳しい視線を描写しながら、
最後はなぁなぁで終わってしまった感じ。

ハートウォーミングに終わるのとは
ちょっと違う感じを受けてしまうような、気の抜けた終わり方です。

ちょっと物語の閉じ方が雑というか。

結局、後半も、その感想を引きずってしまい、
なんだか作品との距離を縮められないまま終わってしまいました。

題材の選び方は面白いと思ったので、
ストーリー構成を作りこんでほしいですね。


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久保寺 健彦

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『パイナップルの彼方』
- 2016/08/18(Thu) -
山本文緒 『パイナップルの彼方』(角川文庫)、読了。

新書関連が続いたので、久々に小説をば。

ジュニア向け作品を書いていた著者による
最初の一般文芸ということですが、面白かったです!

23歳、信金勤務の独身女子、親元を離れて一人暮らし、
彼氏はいるけど結婚はまだ先で良い・・・・・・

こんな主人公の身の回りに起きる出来事をつづった小説なのですが、
主人公のモノの考え方が私に近くて、親近感を持って読みながらも、
でも、このまま行くとフン詰まるんだろうな・・・・・と危惧している通りの展開で、
我が事のように捉えてしまいました。

多方面に意識を配って、不用意なところに足を踏み入れないように、
面倒な人間関係に巻き込まれないように細心の注意を払っているつもりでも、
ちょっとしたことから崩れてしまい、一気に大変な事態に陥ってしまう・・・・。

私は、他人と一定の距離を取りたがる性質のため、
この主人公の気の配りようというか、関心を持たないようにするための注意が、
非常に良く分かります。

そして、その距離を取る方策が失敗した時の
恐ろしい展開について、いつも想像して不安な気持ちを携えてます。

幸い、今まで、大崩れしたことがないのですが、
かと言って、これから本作のような大崩れを体験しないとも限らないわけで。

本作は、いろいろ苦労をしつつも
最後はみんな落ち着くところに収まったというか、
ハッピーエンドな感じでしたが、
世の中、そう上手くはいかないわよねーという怖さがあり、
こういう等身大の小説を読むと、ドキドキしてしまいます。

それぐらい、身につまされる作品でした。


パイナップルの彼方 (角川文庫)パイナップルの彼方 (角川文庫)
山本 文緒

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『戦国の群像』
- 2016/08/17(Wed) -
小和田哲男 『戦国の群像』(学研新書)、読了。

冒頭の戦国大名と国人領主の違いというテーマが
時代の変わり目を端的に表していて、興味深かったです。

それまでの封建制度における官僚的な組織の動きから、
能力主義の個人の動きへとダイナミックに変わっていき、
しかも、それが国盗りという側面だけでなく、
国造りや人民平定にも如何なく発揮されたというところが、
この時代の面白さですね。

また、百姓というものは、農民を指すわけではなく、
農民、漁民、猟民を幅広く指す言葉であったにもかかわらず、
幕府の政策の偏りから次第に百姓=農民となっていったなど、
面白い話もいろいろありました。

後半は、だんだん話が地味になっていった印象ですが、
歴史への興味を膨らませるには良い本なのではないでしょうか。


戦国の群像 (学研新書)戦国の群像 (学研新書)
小和田哲男

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