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『宵山万華鏡』
- 2020/09/30(Wed) -
森見登美彦 『宵山万華鏡』(集英社文庫)、読了。

京都・祇園祭が舞台という情報と、表紙絵の感じから
またまた京大の学生諸君が無駄に大暴れする話かと思いきや、
最初の物語の主人公は小学生の姉妹でした。

バレエ教室からの帰り道、宵山の雑踏を覗いてみたくなった姉が
まじめで脱線することができない妹を無理やり祭りの空間に連れ込みます。
2人で手をつなぎながら祭り見学をしますが、最後の最後に手を放してしまい、
2人は離れ離れに・・・・・そして姉はいつまでも戻ってこなかった・・・・・。

幻想的で恐怖感が底流に流れているような展開に、
『きつねのはなし』系の作品か!と思って、気持ちを切り替えて第2話を読んだら、
今度は大学卒業後に久々に祇園祭の夜に京都を訪れた男が
同窓の友人にはめられ、バカげた恐怖体験をするという
一転して『四畳半神話大系』の世界か!という振り幅でビックリ。

で、この振り幅からどうやって物語を進めていくんだ???と思ってたら、
少しずつまたバカ学生世界から幻想世界に近づいていき、
全ての物語がつながったような、微妙にずれているような
絶妙なところでお話が閉じられました。

森見作品の多様性の中の、良い部分を横串でしっかり貫いたような面白い出来上がりでした。

私と著者の作風の相性はイマイチしっくりきてないのですが(苦笑)、
こういう作品が出てくるから、つい読んじゃうんですよねー。




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『おはようからおやすみまでの科学』
- 2020/09/29(Tue) -
佐倉統、古田ゆかり 『おはようからおやすみまでの科学』(ちくまプリマー新書)、読了。

タイトルから、日常生活の中に存在する科学的な知見の活用事例を紹介した本かと思ったのですが、
そうではなく、リビング・サイエンス・ラボという著者たちのグループが提唱する
科学技術とどう向き合って生活するかという、モノの考え方を示した本でした。
なので、内容は理念的です。

文章は、主に古田ゆかりさんが書かれたということですが、
導入部のスムーズな問題提起に引き込まれました。
自分たちが毎日口にしている食べ物の「安全」とはどういうことなのかを
平易な文章で掘り起こしていきます。

個人的には、この掘り起こし作業の中で、具体的かつ専門的な科学技術のエピソードが
知れたら尚よかったのですが、なぁ、そこまでは求め過ぎなのかな。

一部、佐倉氏が書いている文章があるということだったのですが、
第5章かな?と感じました。
13年間使ったホットプレートの本体には問題がないけど、鉄板のフッ素樹脂加工が摩耗したので
製造メーカーに鉄板のフッ素樹脂加工を依頼し、「うちではそういうサービスは行っていません」と
断られて、不満を述べてます。

いやいや、無理だろう、そりゃ。
東芝も松下も三菱も、どんなに丁寧な言葉で応対してくれて、その無理強いを受け入れるとは思えません。
さらには町工場にまで電話をして、「技術的にはできるけどコスト的に割に合わない」とやんわり断られ、
「この仕組みに首かしげ・・・」と著者は書いてますが、そりゃそうだろう。
メーカーの収益構造がそんな形になってないんですから。
C to Cサイトで趣味的に対応してくれる人を探すべきでしょう。

というわけで、第5章だけ異質な印象を受けました。
科学技術を信奉するあまり、経済活動とか社会活動とかいうものと
非常にアンバランスになってしまっている感じです。




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『天然理科少年』
- 2020/09/28(Mon) -
長野まゆみ 『天然理科少年』(文春文庫)、読了。

まったく存じ上げない作家さんだったのですが、
ブックオフで表紙の人形の写真が目に留まり、タイトルも気になったので買ってみました。

全国を気ままに動き回る物書きの父に連れられて
転校を繰り返す主人公の少年。
また移動をし、自分で転入手続きをして入った学校で、
不思議な少年との交流、そしてリーダー格の少年との対峙が描かれます。

正直なところ、少年たちの交流を描いた部分の物語は
あんまりピンときませんでした。
なんで、そんな七面倒くさいことするの?みたいな。
時代背景がよくわからない世界観で、つかみどころがなかったせいかもしれません。
(時代背景がよくわからなかった理由は真相を知れば納得できるのですが)

タイトルの意味も、よく分かりませんでした。
でも、Amazonなどのレビューを見てみると、
「これぞ長野まゆみの世界観!」みたいな評価が多いので、
ファンの方からすると、タイトル含めて筋の通った作品のようです。

私は、少年たちのやり取りよりも、父と息子の関係の方が気になりました。
まぁ、父子の部分が現実世界だからというので、理解しやすかったのかもしれません。

ちょっと苦手なファンタジーの世界でした。




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『100億稼ぐ仕事術』
- 2020/09/25(Fri) -
堀江貴文 『100億稼ぐ仕事術』(SB文庫)、読了。

2003年の発行なので、プロ野球球団の買収騒ぎとかよりも前の時代のもので、
ほんとうに出始めのあたりのホリエモン本だと思います。

タイトルは仰々しいというか、大見得をきっている感じですが、
中身は、かなり具体的な仕事のテクニックというか、
著者自身が日々の仕事やビジネスにどのように向き合ってどう対処しているかということを
非常にブレイクダウンして書いてあるので、参考にしやすい良書だと思います。

1個1個のテクニックが良いか悪いかということよりも、
各テクニックの考え方の裏側に一本筋が通っていることがわかり、
ホリエモン流の仕事の仕方の仕組みづくりについて本質が見えるようになっています。

そして、自身が起業してから、多くの部下をマネジメントしてきた経験を振り返り
特に初期のころは、自分の会議における時間の使い方が下手だったとか、
部下の本心を汲み取る仕組みが弱かったとか、素直な反省の弁が述べられており、
当時、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長をし始めた企業の経営者として、
この反省力は凄いなと思いました。
結果、PDCAがきちんと回せていたから、その後の快進撃に繋がったのかなと思います。

私自身、丁寧に優しく部下の気持ちに沿ってマネジメントしてあげるという能力に
欠けているところがあるので(苦笑)、ホリエモン流の解決策に学ぶところが大きかったです。




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『ひとり暮らし』
- 2020/09/24(Thu) -
谷川俊太郎 『ひとり暮らし』(新潮文庫)、読了。

著者の詩集はいくつか体験していますが、
エッセイはお初です。

詩の世界を通してしか知らない著者だったので、どんな視点で世の中を眺めているのかな?と
興味津々だったのですが、意外と冷めた目で見ているところがあって、面白かったです。
未来のことを想像しなければいけない結婚式よりも、過去だけを考えていればよい葬式の方が好きとか(笑)。

そして、ご自身の家族のことも書かれていますが、
学者だったけど何だかちょっと人間性に欠損している部分を感じさせるお父様と、
そのお父様に暴言を吐かれていたと酔ってこぼすお母様。
なかなかにヘビーな家族です。
それを冷淡に感じるぐらいに淡々と書き残す著者。

全編を通してユーモアは感じるのですが、
ところどころにドス黒いブラックユーモアがあったりして油断できないです。

オーソドックスなエッセイ以外にも、日記風のものがあったり、
日記に至らないメモ書きのようなものがあったり、
バラエティに富んでいて面白かったです。

読後感としては、この人物を知ろうとするには、
本人が書いたエッセイよりも、第三者が書いた伝記的なものの方が
本質に迫りやすいような気がしました。
誰か書いてくれないかなぁ。




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『銀行とつきあう法』
- 2020/09/23(Wed) -
邱永漢 『銀行とつきあう法』(日本経済新聞社)、通読。

近所のおばちゃんがくれた本。
なんて本を読んでんだ!?と思っちゃいましたが、亡くなった旦那さんが銀行マンだったので
旦那さんの本だったのかな。

さてさて、私自身は、銀行からお金を借りた経験がなく、
それ以外からも借金は、育英会ぐらいです。
返済し終わっているので、今は借金ゼロです。

一方、金貸しの経験はというと、昔は金融機関に勤めてたので、
貸金業取扱主任者資格を持ってます(笑)。
金貸しや回収の部署に居たことがないので、あんまり実感わかないですけど。

というわけで、本作では、銀行でお金を借りる場合に何をチェックされるか、
どう立ち回ると貸してもらえるのか、そもそも銀行融資とはどんなものなのか
具体的に描いていて最初は興味深かったです。

でも、読み進めていくうちに、何だか同じようなエピソードを繰り返し書いているような印象を受けて、
後半は読み飛ばしでした。

本作の出版は昭和46年とのことですが、
今も銀行文化って本質は変わってなさそうだから、
本作で描かれたようなやり取りが今も起こってそうですね。




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『ジョブズは何も発明せずにすべてを生み出した』
- 2020/09/22(Tue) -
林信行 『ジョブズは何も発明せずにすべてを生み出した』(青春新書インテリジェンス)、読了。

ジョブズの本は何冊か読みましたが、
何冊読んでも、アップル社ってやっぱり興味深い組織ですよねー。

ジョブズ個人にはそんなに興味ないんですよ。
あまりにカリスマ性が突出しすぎてて、学ぶべきとっかかりが見つからないと言いますか。
逆に、アップル社という組織をどうやって作り上げたのかが気になります。
「カリスマに従う信者」というだけでは優秀な社員が集まることも、その能力を十分に発揮することも
難しいように思います。
しかも、かなり大きな組織に成長した後も、組織としての一体感を持っているのはすごいなと。

本作を読むと、いわゆる精鋭選抜のAチームと呼ばれる部分が肝で、
そこをジョブズが直接指導して、残りの従業員は、そのAチームに入るための熾烈な競争に
集中させるという感じでしょうかね。
ある種、ブラックな人間の使い方のように思えますが、
それに耐えうる人材を集めてるし、集まった側も自分はそんなにヤワじゃないと自信があるから
こういう運営ができるんでしょうね。

ジョブズ自身が商品を発明したのではなく、
ジョブズは、人間社会にどういう技術を提供したら社会が変わるのかという仮説を立てて
その仮説に基づいて従業員に技術を作り上げさせる手腕に富んでいたということがよくわかり
面白い本でした。

また、「5階層のシナリオ」として紹介されていた考え方も、
やっぱりモノゴトの順番って大事だよなぁと納得。
組織を仕組み化すること、また思考を仕組み化すること、
その重要性を感覚的に最も会得していたリーダーだったんだろうなと思います。




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『成城のとんかつやさん』
- 2020/09/21(Mon) -
宮尾登美子 『成城のとんかつやさん』(新潮文庫)、読了。

宮尾作品、かなり積読になっているのですが、
どれも分厚いので、手に取るのに根性いるなぁ・・・・・とそのままです(苦笑)。
ブックオフで薄めのエッセイを見つけたので、そちらから先に。

タイトルから食エッセイなのかなと思ったのですが、
出身地高知県の話あり、取材旅行の話あり、同業の作家さんの話あり、訃報の話あり、
著者の日常が垣間見れる多岐にわたるエッセイでした。

個人的には、食の話よりも、人の話が面白かったです。
どの人とどんなお付き合いがあるのか、どんな切っ掛けで付き合いが始まったのか、
その人のどういうところに惹かれているのか、等々。

特に最後の、「この人のここが素敵」と思っていることをサラッと書いていくところが
ベテランの巧みな文章技術だなと勉強になりました。

作品のタイトルが、なぜ「成城のとんかつやさん」が選ばれたのかは良くわかりませんでしたが、
とんかつとそうめんが食べたくなりました。




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『ざらざら』
- 2020/09/20(Sun) -
川上弘美 『ざらざら』(新潮文庫)、読了。

川上弘美さんの掌編小説、大好きです。

この短い文章で、なんでこんなに存在感のある世界観を出せるのかと
いつも驚いてしまいます。

ある日常の瞬間を切り取ったように見せかけて、
しっかりと凝縮して表現しながら、その凝縮感を出さずに、さらっと描いてしまう技量。
すごいです。

「恋愛小説集」というジャンル分けになるようですが、
私は人間そのものを描いた小説のように感じました。
確かに1個1個は恋愛の場面を描いているのですが、
恋愛そのものよりも、それを通して人間が何を考えているのか、何を見ているのかというところが
伝わってきて、面白かったです。




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『「リベラル」がうさんくさいのには理由がある』
- 2020/09/18(Fri) -
橘玲 『「リベラル」がうさんくさいのには理由がある』(集英社文庫)、読了。

「週刊プレイボーイ」の連載シリーズです。

いわゆる日本の「リベラル」を自称する方々の筋が通っていない感じは常々気になっているので、
著者らしい毒で分析されているかと思い買ってみました。

そもそも、「リベラル」っていうカタカナ表現が、曖昧さを助長しているように思います。
なんとなく、リベラル=左派=左翼=野党みたいな構図を思い浮かべてしまいますが、
全部、概念の軸が違ってますよね。
たまたま日本ではイコールになるのか、それともグループが重なっているだけでずれているのか、
はたまた重なっていると思うのは誤解なのか、正直よくわかりません。

国会の論戦(というか難癖?)を聞いていると、リベラルを名乗るご本人たちも
本当は良く分かってないのではないかという気もしてしまいます。

で、本作で何かヒントがつかめるかな?と思ったのですが、
冒頭、エピソード0として、太平洋戦争末期の沖縄戦での集団自決に関して、
戦後の訴訟やそれを巡る新聞報道等をもとに検証していきます。
かなり事細かに詳述されているので、「え、橘玲ってこんなに細部にこだわる人だっけ?」と驚きましたが
異様な歴史の捏造のされ方自体に驚き、とても勉強になりました。

一方で、私の中では、結構、言い放ち系と思っていた著者がこんなに詳述していることに、
「リベラル」の人たちに対峙するのって、こんなにエネルギー要ることなんだ・・・・・と
改めて思想対立の大変さを実感することになりました。

しかし・・・・・次章のエピソード1以降は、いつもの橘言いっ放し節に戻ってしまった感があり、
エピソード0の深堀ぶりが凄かっただけに、反動で、「え、これだけ?」と思ってしまうところもあり、
リベラルの怪しさは分かりましたが、この本の分析内容をもって私自身がリベラルを批判できるだけの
知識や理論構成を持ちえたかというと、そこはあやふやです。

まぁ、そこから先は自分の頭で考えて構築していくしかないのかもしれません。




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