『苦悩する農協』
- 2017/11/19(Sun) -
朝日新聞経済部 『苦悩する農協』(朝日新聞社)、読了。

農業について勉強しようと思い、数冊買ってきました。
まずは、農協という組織を学ぼうと、本作から。

新聞社の書いた本ということで、
体系的に農協の仕組みが理解できるかなと思ったのですが、
冒頭から個別の事件の紹介と課題の分析に入ってしまい、
全体感が把握しづらかったです。

ヤミ米問題とか、この本が発表された1994年という時期は
みんな知ってて当然のことだったのかもしれませんが、
今になって読むと、そもそも「ヤミ米」の定義をしてくれないと
何がヤミ米で、どこが問題なのだか分かりません。
このあたりの不親切さが非常に残念でした。

個々の問題に関しては、実名をあげて、また現場取材もしているなど
新聞社らしい解説をしているので、分かりやすかったです。
でも、個別問題の糾弾だけでは問題の本質を突くことができないと思います。

アンバランスさが残念でした。


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朝日新聞経済部

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『官僚の反逆』
- 2017/11/18(Sat) -
中野剛志 『官僚の反逆』(幻冬舎新書)、通読。

現役官僚による日本の官僚制度の考察。
基本的には批判です。

TPPのような具体的な政策に対する官僚の行動様式を議論するのかと思いきや
ウェーバーやオルテガを引き合いに出して
結構、抽象的な議論が展開されていきます。

こういう展開は予想していなかったので、
頭がついていけず、流し読みになってしまいました。

ただ、オルテガの『大衆の反逆』という本は面白そうだと思ったので
今後探してみたいと思います。

日本の官僚制度について自分なりに考えてみますと、
官僚制度の構造自体から生まれるメリット/デメリットというものがあり
そのデメリットばかりがもし表出しているのであれば、
それは、官僚機構の責任というよりも、日本という社会が官僚制度を
上手く使いこなせてないということなのではないかなと思いました。

つまり、日本人のレベルに見合った官僚機構ができているというわけであり、
官僚制度そのものの問題ではないのではないかということです。

本作を読んで、読者は日本の官僚を批判するのではなく、
自らが、官僚制度をどう利用し、官僚制度にどう制約を受けているのか
つまりは官僚制度にどう向き合っているのかを自問して、
より良い官僚制度運営を日本国民として積極的に求めていくようにすべきではないかと思いました。


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中野 剛志

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『陽だまりの偽り』
- 2017/11/16(Thu) -
長岡弘樹 『陽だまりの偽り』(双葉文庫)、読了。

「偽り」をテーマにした短編集。

自らの認知症の疑いを嫁に見つからないように齷齪する老人。
市役所管理の駐車場で起きた転落事故を自殺に見せかけようとする管理課長。
息子がカツアゲ被害に遭っている場面に遭遇しながらスルーした父親。

日常生活に紛れ込んだ「危険」を何とか回避しようとする姿を
ちょっと皮肉もきかせながら描写しています。

表題作の、認知症疑いの高齢者を主人公にした作品は、
清水義範ばりの日常生活描写で面白かったです。

このように、当事者がアレコレ考えてしまって右往左往する様子は
第三者である読者からすれば滑稽でさえあるのですが、
しかし、死亡事故や暴行事件といった切迫した状況を目の前に、
自分の保身のために死体や怪我人を放置もしくは隠蔽してしまおうとする
その判断には全く共感できませんでした。

こんな状況に置かれたら、自分も、保身に走るという選択肢を考えてしまうのでしょうか。
自分の運転する車で人を轢いてしまったにも関わらず、
明日の昇進発表を前に、怪我人をどうにか処分しようと思い至るというのは、
よっぽどだと思うのですが・・・・・。

もしかすると、こんな心理状態に追い込まれるのかもしれないという恐怖を
感じるべき作品集なのかな。


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長岡 弘樹

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『希望難民ご一行様』
- 2017/11/15(Wed) -
古市憲寿 『希望難民ご一行様』(光文社新書)、読了。

面白かったです。

街角のあちこちにポスターが貼られているピースボート。
その内情について、実際に著者が乗船して描いたルポ。

実は、私の同級生に、ピースボートに乗った人が居ます。
「乗るんだ」という話を聞いたときに、「えぅ、あんな左翼の船に!?」と驚きました。
左翼の集団の中に閉じ込められる数か月というイメージがあったので、
洗脳されてしまわないだろうか・・・・・と不安に思った記憶があります。

そう、私の世代は、高校生の時にオウム事件があり、
大学入学時に、政治組織と併せて、カルト組織に誤って足を踏み入れてしまわないように
という注意喚起が行われていた頃でした。
なので、つい、「洗脳」というフレーズが頭をよぎってしまうのです。

そんな偏ったイメージを持っていたピースボートですが、
本作を読んで、思っていたほど政治がかっていないことに、逆に驚きました。
イマドキの・・・・・ということなのでしょうか。
「9条ダンス」とかいう発想は、確かに斜め上を行ってる感じですが、
でも、ゴリゴリの左翼感は感じませんでした。

私のピースボートのイメージの根源は、
創設メンバーの辻元清美氏、水先案内人の鎌田慧氏や、本多勝一氏といった
名前から来るところが大きいです。
逃げ場のない船上で、こんな人たちの思想を叩き込まれるのではないかと。

でも、本作を読んで、あっけらかんとした若者が多いのに驚きました。
あまり思想とか意識しておらず、しかも乗船後もあまり意識に変化がないという点で、
逆に「大丈夫か!?」と思ってしまうほどののんきさ。

そして、高齢者の乗船もそれなりの割合を占めるという事実も衝撃でしたし、
その中の声として「こんな左翼の船だったとは思わなかった」と憤激しているコメントを読んで、
「なんで乗船前に気づけないんだ!?」と、これまた衝撃でした。
(そういえば、本作内で、水先案内人に関する描写がなかったのは残念)

ゴリゴリ左翼は乗っていなくて、
乗船中に左翼に目覚める人もあまりいなくて、
結局、世界一周パッケージ旅行をオンボロ船で行っているというだけ?

事業モデルとしては、非常に興味深いものでした。
ボランティアスタッフを囲い込む方法を練り上げており、
街頭ポスター貼りなどの営業活動を上手く組み込んでおり、
乗船中も客に自分たちでイベントの企画・運営をやらせるという周到さ。
ビジネスマンとしては非常に優秀だと思います。
運営しているのが左翼なのが残念!

著者の分析に関して言うと、
ピースボートという舞台の上で、社会学の様々な概念を解説してくれて
面白おかしく読みながら、勉強になりました。

硬い論文の紹介を、
絶妙なバランスでおちゃらけた文章に乗せているので笑いながら読めて、
しかも、ピースボートという特殊な事業モデル、
生活空間の様子を知ることができ、興味深かったです。


希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 (光文社新書)希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 (光文社新書)
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『グランド・フィナーレ』
- 2017/11/14(Tue) -
阿部和重 『グランド・フィナーレ』(講談社文庫)、読了。

芥川賞受賞作。
あんまり私は芥川賞とは相性が良くないのですが、
ドカ買いの中で買ってきてました。

で、読んでみた結果、やっぱり合わない・・・・・。

ロリコン趣味を妻に知られて離婚された男。
その趣味の対象が、他所の女児に向いていたのではなく、
自分の娘に向いていたというのが、何とも気持ち悪い。
でも、そこについて本作ではあまり触れられていないというか
重視されてない感じ。

他人の娘と自分の娘では、決定的に違う存在だと思うのですが、
ロリコン趣味の人って、そこの違いは関係ないのですかね?

で、そういう超個人的趣味嗜好の描写に混じって、
9.11のような世界的な事件や、ドラッグ汚染のような社会問題など
現代性を強調するようなトピックが登場しますが、
なんだかそれも、取って付けたようなアンバランスな感じがしました。

そして、この作品で伝えたかったこと、
それが私には良く見えてきませんでした。

前半と後半の繋がりも上手く受け止めきれず、
あの2人の少女は一体何だったんだろうかと、読み終わった今も疑問のまま。


グランド・フィナーレ (講談社文庫)グランド・フィナーレ (講談社文庫)
阿部 和重

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『有栖川の朝』
- 2017/11/13(Mon) -
久世光彦 『有栖川の朝』(文春文庫)、読了。

お初の作家さん。作家というより脚本家の印象ですが。

有栖川宮詐欺事件を題材にした作品ということで、
詐欺師がいかに人を騙すのかというテクニックやサスペンスを
期待していたのですが、どちらかというと、詐欺に関った人間の
物悲しい人生を描くことに力点が置かれていて、期待外れでした。

こんな面子で、大掛かりな詐欺事件が起こせるのかいな?と
能力的に疑問を抱くキャラクター設定だったのですが、
あにはからんや、そんな結末を迎えるとは・・・・・。

最初から最後まで、期待していた感じとは違う作品でした。


有栖川の朝 (文春文庫)有栖川の朝 (文春文庫)
久世 光彦

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『叱られる力』
- 2017/11/12(Sun) -
阿川佐和子 『叱られる力』(文春新書)、読了。

「聞く力2」ということで、ヒット本の続編です。

『聞く力』に比べるとエッセイ感が強いというか、
ちょっとまとまりがない感じもしましたが、
それは多分、「叱られる」という軸が一本通っている感が
微妙だったからなような気がします。

叱られるという事象について語っているというよりも、
父娘エッセイだったり、お仕事エッセイだったりの混在な感じです。

そもそも、阿川弘之さん、相当なガンコ親父というか、偏屈親父というか、
こりゃ、娘さんもこじれて結婚できなくなっちゃいますわな(苦笑)。
ま、作品からも、その片鱗は覗けますが。

この本で印象に残ったのは、
ヒットした『聞く力』について、なぜヒットしたのかをテレビのコメンテーターが解説していたのを
テレビを通して見たときに、「そういうことだったのか」と自分自身も気づけたという瞬間。
第三者の目を通して自分を見つめなおすことで
意味づけ、位置づけが再認識できる、または新たな目線が獲得できるというのは
大事なことだなと思いました。

というわけで、何だかタイトルの本題とは別のところが気になった本でした。


叱られる力 聞く力 2 (文春新書)叱られる力 聞く力 2 (文春新書)
阿川 佐和子

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『あの空の下で』
- 2017/11/11(Sat) -
吉田修一 『あの空の下で』(集英社文庫)、読了。

ANAの機内誌『翼の王国』で連載された短編をまとめたもの。
小説12編とエッセイ6編という編成ですが、
私は小説18編のような印象で読みました。

機内誌という性格上、
すっきり爽やかな小説なのかと思いきや、
意外と人間の暗い感情に触れた部分もあり、
「ANAって度量広いなぁ」と思ってみたり。

1つ1つは短い作品ですので、
それほど踏み込んだ作品はないですが、
でも、余韻は結構感じられるものが多かったです。

「旅」そのものを、ウキウキ、ワクワクだけで描くのではなく、
「面倒」「仕方なしに」「やむを得ず」というシチュエーションでも描いていて、
飛行機という空間を、旅の一部であるとともに、
単なる移動手段として割り切ってみている部分もあることで、
PR臭さが消えているのが良かったです。

しばらく海外に行っていないのですが、
たまには面倒でも海外という異空間に触れるのも良いなぁ・・・・と
思える作品集でした。


あの空の下で (集英社文庫)あの空の下で (集英社文庫)
吉田 修一

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『龍宮』
- 2017/11/10(Fri) -
川上弘美 『龍宮』(文春文庫)、読了。

「8つの幻想譚」という紹介文のとおり、
ふしぎなお話が詰まっています。

冒頭の一編は、人間になった蛸のお話。
この蛸親父の行動が不思議なのはもちろんのこと、
しゃべる日本語がいくつもの人格が継ぎ接ぎされているようで不気味。
そして、それに対する人間の男の主体性もあるのかないのか分からず
この2人の対話が、なんとも居心地悪い感じです。
この狙った居心地の悪さが、上手いなぁと思わせます。

そして、表題作の「龍宮」。
「龍宮」という語感からイメージする華やかさは全く感じられない
本当に不気味な婆さんと曾孫の物語。
言霊を扱うような祖母イト、背丈は曾孫の膝までしかない?
もう、どんな存在なのか想像が追い付かないのですが、
でも、どしりとした存在感を感じさせる描写。
書かれたままの姿で存在しているわけではないとしても、
何かしらの比喩やもしくは曾孫側の錯覚があるだけで、
こんな婆さんが居てしまうのではないかと思わせる存在感。
そこが気持ち悪いのです。
こういう存在を許してしまう余地が世の中にはあるのではないかという恐怖。

この短編集で感じた怖さは、
「作り話に見せかけて、こういう気持ちの悪い存在は、現実に居るのではないか」と
思わずにはいられないところ。

気持ち悪いけど心に踏み込んでくる、
そんな迫力のある作品でした。


龍宮 (文春文庫)龍宮 (文春文庫)
川上 弘美

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『マグネット』
- 2017/11/09(Thu) -
山田詠美 『マグネット』(幻冬舎文庫)、読了。

久々のAmy作品。
100円で見つけたので買ってみました。
が、私の好みには合いませんでした。

性的な描写が演出として使われる分には大丈夫なのですが、
それが作品の本題になってしまうと、どうも私は距離を置いてしまいます。
そこに哲学的な大義を見出している人間って、
実際にはどのぐらいいるのだろうか?と思ってしまいます。

そういうことに溺れるとか、我を忘れるとか、逃げ込むとか
いろんなシチュエーションはあるのでしょうけれど、
そういう心理になってしまう人に、
私自身があまり興味がないということなのかもしれません。

Amy作品は、目線が少年少女のものの方が
私にはしっくりくるようです。

最後の一遍だけ風合いが異なりましたが、

骨は、人を諦めさせる


なかなかに重たい意味のある言葉でした。


マグネット (幻冬舎文庫)マグネット (幻冬舎文庫)
山田 詠美

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